表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
BORDER:ARRIVE ~絶対少女と不可視の境界~  作者: GAND-RED
ROG:2/正義の味方はバカのために走るのか
48/113

不穏の風

「……淋もずいぶん明るくなったっスねー」

英語のワークを閉じて呟く。

昨日の引っ込み思案はどこへやら、今じゃすっかり元気になってトランと鬼ごっこをしていた。アトリエの空いた部屋はとうとう2人の遊び場になってしまったけど、姉ちゃんが楽しそうだったから良しとしよう。

「でもこの後はどうするのさ。僕らが日本に戻って、誰があの子らの面倒見るの?」

「てめぇっ……」

……いつかは言わなければいけない事だったんだろう。けどそれでも腹立たしかった。発言したのが、絶望野郎だから。

睨み合いを終わらせたいのか、絶対王が咳払いする。

「その点については大丈夫だ。ボクは彼女達をただ慈悲だけで保護した訳じゃない」

「……絶対王、まさか」

「利用じゃなくて、勧誘だ。ボクの組織に入団させる。一切の面倒を見る代わりに、殺し屋として働いてもらう」

がたん、と椅子が音を立てる。

気がつくと、あたしは絶対王に掴み掛かっていた。

「あんな小さい子に何させようとしてやがる!!」

「……淋も逃亡生活で殺しの技術は磨かれているだろうし、トランもあの年で殺し屋として立派に働いている。ボクはその才能を開花させるべきと考えてただけだよ」

あたしに向ける視線はただただ冷たいだけ。ヒトである事を疑うぐらいに、無機質な無表情だった。

「それが利用だっつってんだよ。他に可能性もあるハズだろ!!」

「勿論、ある程度自立してきたらちゃんと行きたい道を行かせるつもりだ。まぁ、それでもボクについていくだろうね」

淡々と言葉を紡ぐ口元を、残酷に歪ませる。

「団から除名されれば即死ぬ様に仕向けるから」

「アンタそれでもっ」

「ヒトじゃないよ、クロトは」

絶望野郎が冷たい目で睨む。

「不老不死や時間停止、それに未来予知。そんなチカラを持つヒトが陰ではどう呼ばれるか、アンタ知ってる?

……『バケモノ』だよ」

「ご名答。だから非道は当たり前だ」

「まだ話は終わってないよ、クロト。君は、誰かに復讐したいんだろう?」

したり顔の絶望野郎に、絶対王は舌打ちした。

「キミの言っている事は図星だ。けれど、ボクはあいつを殺さなくちゃいけない。これ以上ボクの様なヒトを生み出さないためにも、人間と異能者を守るためにも、だ。どんなモノでも正しいと思えば正義と言えるだろ……っ!?」

絶対王は突然固く目を瞑り、その場にしゃがみ込む。

「……なんで、こんなタイミングで……ぐぁ、う……!!」

うわ言を漏らしながら、頭を抱えていた。

「な、何っスかいきなり……」

「未来予知の『発作』、頭痛だ。これが酷い時は、3日以内に誰かがとてつもない事象を体験するらしいねぇ。……大丈夫?」

「……ああ、もう大丈夫だ、けど……」

絶対王は起き上がり、またあたしの方を見る。

「……キミ、気をつけて」

掠れた声で告げてから、また崩れ落ちた。どうやらただの頭痛じゃないらしい、よく見れば身体も震えている。

「大丈夫じゃないでしょ。……僕、とりあえず運んでくる」

「やめ……っ」

「はいはい、VIP待遇と思っといてー」

「死ねっ……!!」

絶望野郎に抱き上げられると、絶対王は憎々しげに吐き捨てた。そりゃ当然か。こんな野郎に触られるのは誰だって嫌に決まっている。


一連の動作を見送ってから、深呼吸して考えた。

絶対王は「人間と異能者を守るためにも」、と言っていた。あたしに話そうとした過去に何か深い出来事があったのか。

……そして、絶望野郎の言葉が正しいなら、あたしは一体どうなるんだろう、とも。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ