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BORDER:ARRIVE ~絶対少女と不可視の境界~  作者: GAND-RED
ROG:2/正義の味方はバカのために走るのか
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目覚めた氷兎

「……まだ寝てるみたいだ。寝無、今のうちに」

絶望野郎はさっきと同じ様に、相変わらず布団に埋もれたままの淋に近づいた。そしてまた眼帯を外す。端から見ればただ突っ立っているだけで、何かしていると言う様子は一切見られない。本当は何もしてないんじゃねぇの、あいつ。


「……はい、終わり。起きたら澪とか零さんには異常に親しくなってるけど、気にしないでねぇ」

前のは20分ほど掛かっていたけど、今回は5分ちょっとで記憶処理を終わらせて戻ってきた。解析と送信じゃあ、後者の方が速くて当然か。

「うがー……あれ?ボス、何やってるアル?」

後ろを向くと、寝相の悪かった方が起きていた。白い髪がぼさぼさになっているし、タンクトップもしわだらけになっていた。

「……ずいぶん寝てたみたいだね。おはよう、トラン」

「オハヨーネ、でも疲れてたから仕方ないアル。昨日のは怖かったネー……ところで後ろのジャパニーズは誰アルか?」

「こっちが澪でこの気持ち悪いのが寝無。悪い事はしないから、安心していいよ」

「澪姉に寝無ネ、覚えたアル。オレはリ・トラン!宜しくネ!」

威勢良く自己紹介をしてから、彼は右手を上げてみせた。

「おう、宜しくっス」

その手を軽く叩く。小気味良い音が部屋に響いた。

「……え、仲良くなるスピードが異常だと思うんだけど」

「うっせぇ黙ってろ絶望野郎」

「ホントそうアル、訳が分からんネ!」

「おおお、トランもなかなかやるっスね、感心感心っス」

舎弟を持ったらこんな感じだろうか。まだ子供だけど、なんだか面白い。

「感心する所は無かったと思うんですがあの」

「キミに発言する権利はほぼ無いに等しいんだよ。おめでとう」

「祝われる意味が分からないんですが」

「まぁ自分で考えて。……ほら、淋も起きたよ」

絶対王に手招きされた。さっきまで布団の一部になっていた淋が、いつの間にか身体を起こしている。

絶対王と似た様な感じで、毛先に行くにつれて髪が青くなっていた。

「……?」

彼女は今の状況が分からないらしく、首をかしげた。海の様な蒼い目は、寝起きで半分閉じられている。

何が何だか分かっていない淋に、あたしは笑って第一声を掛けた。

「……おはようっス、淋」

「……」

氷の様に固まっていた彼女は、しばらくして何も言わずに抱きついてきた。

「え、ちょっ、どうしたんスか!?」

「昨日の出来事が怖かったって記憶は残ってるから仕方ないよ。まぁ、僕は知りませんよーって事で」

「案外、ただ安心してるだけかもね。寝無が思うほどヒトは単純じゃあない。……この件は一見落着ってとこかな、これも2人のおかげだ。ありがとう」

どことなく幸せな顔をしている淋を見て、絶対王は馬鹿丁寧にお辞儀をした。それを見た絶望野郎は、また暗い顔に戻る。

「ねぇクロト。この件はって事は他にも何かあるの?」

「……あるはあるけど、ね。今は後回しだ」

この2人はよっぽどあたしに話を理解されたくないのだろうか。インテリな奴が揃うとどうも省かれてしまうのが腹立たしい。

「……そういやもう夕方か……適当に作りますかねっと」

「絶望野郎に料理なんか出来るのかよ?」

「アンタの言うセリフじゃないでしょうが!!」

「うるっせぇなぁ!!ぶっ飛ばされてぇのか、あぁ!?」

いがみ合うあたし達を見て、淋は笑っていた。

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