表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
BORDER:ARRIVE ~絶対少女と不可視の境界~  作者: GAND-RED
ROG:2/正義の味方はバカのために走るのか
44/113

ブレイブ・コンタクト

「__桐原澪に八王子寝無……お目に掛かれて光栄だよ。ボクが絶対王、死々王クロトだ」


大人びた女の子の様な、または声の高い男の子の様な凛とした声。確かに、性別は言われないとよく分からない。


「名前は知ってたんスね……よ、宜しくっス」

おそるおそる左手を差し出すと、握り潰したりもせずに普通に握ってきた。

「はは……よく分かってるなぁ、もしキミが右手を出していたら微妙な雰囲気になる所だった」

意味が分からずに首をかしげると、また笑った。

「右手だけは最初に触ったらダメなんだ。『出すなら左手で頼む』なんて言ったらおかしいだろ?」

「なるほど、命拾いしたっス。んじゃ絶望野郎、お前右手出せよ」

「……いいけど、アンタらが思ってる様な事にはならないと思うよ」

もっとビビるかと期待していたのに、絶望野郎は恐れる様子もなく右手を差し出した。

絶対王は右手でゆっくりと握ったけど、特に何も起こらない。

「八王子君……キミは、ボクと何処かで会ったか?」

何の事かは分からないけど、驚きを隠せなかったらしい。仮面の奥で目を見開いているのがうっすら見えた。

「さぁね。僕は君みたいに仮面をつけた女の子と会った事ないけど」

「……なら、これでどうだ」

仮面を外し、フードを下ろす。紅い目と白いアホ毛が出てきた。全貌を露にした顔立ちは酷く整っていて、中性的な美しさがあった。

その顔を少し見てから、

「__さぁ、どうだろうねぇ。生憎と僕は物覚えが悪いんだ」

、と絶望野郎は嘘をついた。こいつの記憶力は無駄に良かったハズだ。

おどけた調子で手を振る姿は、鬱陶しいピエロそのものだった。

「そうか、では『物覚えが良くて人の記憶を勝手にいじくれる』キミに……」

「待ってよクロトちゃん、お姉さん全然話についてけないよー……」

「あたしも同感っス……」

2人で訴えてみると、絶対王は呆れて首を振った。

「聞いた所でどうにもならないと思うけど、仕方ないな。

彼の能力を使えば淋(りん)の記憶を取り戻せるかもしれない、ただそれだけ」

聞きたい事はそっちじゃなかったけど、よっぽど知られたくない事なんだろう。あえて言及はしないでおいた。

「でもクロトちゃん、トラン君はあの子の事知らないのかなー……?一緒にいたんだよねー?」

「たまたま居合わせただけらしい。それでも良かったよ、彼がいなければ淋はきっと今以上の精神的ダメージを負っていただろう。そうなれば治療も出来なくなるから」

淡々と言って絶対王は目を伏せた。

「……それにしてもよく分かったねぇ、僕の能力」

「その見てるだけで苛々する顔で分かる。読心か記憶操作、いや、キミの場合は脳の操作か。ここまで気持ち悪い異能者は初めてだ」

「初対面によくそんな事言えるねぇ」

「……あまり嘘はつかないで欲しいな」

不快とか嫌悪とか、そういう生ぬるいもんじゃない負の感情が顔に出ている。それを見たあたしはああ、絶対王もちゃんとヒトなんだなぁ、としみじみ思った。

「零、淋は?」

「まだ使ってない部屋で寝てるよー」

「そうか。……治療はなるべく寝ている時にやっておいた方が良い。八王子君、桐原君。同行は……」

「構わんっスよ。後タメで良いっス」

「僕も同意だねぇ」

「……ありがとう。じゃあ行こうか」

絶対王はふっと笑い、リビングを出た。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ