閑話弍:絶対少女の抜け殻
イギリスいいっすよねー……スカイ島はきっと良い所です。涼しいらしいし。
「……はぁ」
自家用ジェット機なるモノには初めて乗ったけど、乗り心地はなかなか良かった。
こんなのを4台も持っているんだから、零は名家のお嬢様なのかもしれないな、と考えた。
「……ポートリーまでもうちょっとか」
ロングコートのフードを被る。ファーが頬を撫でて、少しくすぐったい。
この10日間、シェイクスピアの住んでいた家だとか、ストーンヘンジだとか……とにかくありとあらゆる観光名所を回っていた。当然だけど、どれも観光名所と言われるだけあって凄かった。
後、食べ物。流石外国といったところか、本当に美味しい。……フィッシュアンドチップスが何故あんなに批評されるのか全く分からないけど。
店長さんにレシピでも聞いておけば良かった、と今更後悔した。まぁ、調べれば何とかなるだろう。
早速リストフォーンをいじろうとすると、にゃー、と着信音が鳴った。
……さては零の仕業だな。ボクはこんな着信音を設定した覚えはない。いつもはバイブレーションだ。
仕返しにどんな嫌がらせをしてやろうかと悩みながら、新着のメールを開く。
『もうすぐアトリエの方に着くよー、今頃そっちのジェット機は狙われたりしてるかなー?なんてったって絶対王が乗ってるからねー』
最後に、空港で撮ったであろう写真が添付されていた。
ああ、本当に聞いた通りの姿だ。喧嘩しているのを警備員が止めに入っていた。
それにしても、この全身真っ白の方……
何故だろう、どこかで見た様な気がする。
気のせいだろうか。
『残念、2人ほど仕留めた。スナイパーライフルもなかなか魅力的だね。
そちらの方の心配は……ボディーガードがいるから大丈夫か。
追記
着信音勝手に変更するのやめてくれないかな?静かなとこでいきなり聞こえるとびっくりするんだけど。』
煙をあげながら落ちていく刺客……の乗っていたジェット機の写真を添付して、送信ボタンをタップした。
銃をホルスターにしまってから、零からもらったベレー帽をバッグから取り出す。……こういう可愛いモノは、ボクみたいな奴には似合わない。何故渡してきたのかは、全くもって謎だ。
まさか、ボクが外では仮面を付けている事を知らないんだろうか。
……丁度いい。例の2人と会う時にでも知らせてやろう。それが今回の仕返しだ。
やや色褪せたベレー帽を四次元リュックにしまって、ボクは仮面をつけた。
スコットランドはインナー・ヘブリティーズ諸島、その最北端。
世界から見れば、スカイ島は今日も少し寒いけどとても平和な1日になるだろう。
__彼女らとの出会いが、彼女らの運命を狂わせなければ。




