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BORDER:ARRIVE ~絶対少女と不可視の境界~  作者: GAND-RED
ROG:2/正義の味方はバカのために走るのか
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きっかけは雨と思想に

雨の日に親父のお使いで武器屋に行く途中、道の隅っこでそいつを見掛けた。

こんな日に歩く人なんかそうそういない。……あたしがお使いを頼まれる時は、何故か雨の日ばかりだけど。

「……おいお前、そこで突っ立って何してんだ」

白髪に白い目、白衣のガキ。きっと好物は牛乳と豆腐に違いない。

背丈はあたしと同い年ぐらいに見えるが、あんなに無機質な顔の奴は見た事がないので不審人物だ、と思って睨みつけた。

「何って、決まってんじゃん。死ぬまで見守ってやるのさ」

無表情のまま答えたそいつの視線の先には、子供らしき狼型のクリーチャーが2匹段ボールの中にいた。

黒い翼の生えた狼達は、弱々しく鳴いている。それでも奴は助けず、ただ冷たい目で見るだけだ。

「……てめぇ、それでもヒトかよ……っ!?」

傘を投げ、胸ぐらを掴む。が、すぐに放す事になった。

……こいつ、左目がおかしい。赤くなったり、黒くなったりを繰り返している。びっくりするあまり、ズレた眼帯から覗く瞳を見つめていた。

「……そうだね、ぼくの目を見た人はみーんなそんな顔をする。君の言う通り、平気でいられるぼくはヒトじゃなくてバケモノだ」

本当につまらないよねぇ、と自嘲気味に笑う。カチンときた。

「ふざけんなっ!!そんなの他人が言ってるだけだろーが!!」

「ぼく達子供の価値なんか、他人の偏見で全て決まるでしょ」

冷たい目のまま言い放つ。こいつは威圧しているつもりなんだろう。が、大して怖くない。

ヘンケン、と言う言葉の意味はよく分からなかったけど、憶測で言葉を続ける。

「だったらあたしは『捨て子』のまま独りだろ!!けどあたしは違うっ!!……そのヘンケンを変えてくれた、大事な人がいるんだよっ!!」

「……君の話はどうでもいいし、そんな人もいない。ぼくはずっとバケモノのままだよ」

……こいつ……面倒な奴だなぁ!

怒りに身を任せ、殴りつけた。

「痛っ……何すんのさ」

「てめぇ、名前は」

「……八王子寝無(はちおうじ ねむ)」

「知るか!てめぇはゼツボーした顔ばっかしてるから『ゼツボーヤロー』だ!!」

「何が言いたいのか全然分からないよ」

「だから、てめぇのヘンケンを変えてやるっつってんだよ!!今日からてめぇは『あたしの敵』だ!!」

傘も差さず、ただ濡れているだけのゼツボーヤローに指を突きつける。

しばらくしてぶちっと音がした。

「へぇ、面白いじゃん。ぼくにケンカ売るなんて……アンタ、名前は?」

「桐原澪(どうばら みお)、せーぎのみかただっ!!だから、てめぇが助けないこいつらもうちで飼う!!傘はてめぇにやる!!」

ゼツボーヤローに傘を拾って投げ、狼達を抱きかかえた。かなり冷たいけど、まだほんの少し温かい。

「……ぷっ……変な奴」

気持ち悪く笑って、ゼツボーヤローはどこかへ歩いていく。

ここで重大な事に気づいた。

……こいつらを持ってたらお使いが出来ない。

「おいゼツボーヤローッ!!」

「はぁ……まだ用事あるの?」

あたしのやった傘も差さずに走ってきたそいつは、すっかりずぶ濡れになっている。大きく肩を上下させている姿を見て、笑いをこらえながら財布とメモを渡す。

「テキトーに強そうなハンドガン……テキトーな弾……?ブッソウだし大雑把だなぁ……どうしろって言うのさ」

「それ買え!」

「はぁ!?」

「あたしの親父のお使いって言えばだいじょーぶだ!!店なら連れてってやる、ついて来い!!」

ずんずんといつもの道を進む。狼達は大人しくあたしに抱かれたままだった。

大きなため息の後、水溜まりを歩く音がする。どうにかちゃんとついて来てるらしい。

こいつ、死人みたいな顔してなかなかやるじゃねぇか。


「アンタの父親って、何者なの?」

しばらくしておずおずと聞いてきたゼツボーヤローに振り向く。

「ゴクドーだっ!悪ーい奴と銃とカタナでチャンバラするんだぜ!かっこいーだろ!」

「……それ、むしろ格好悪いと思うよ」

「はぁ!?かっこいーに決まってんだろ!!」

あたしが怒鳴った途端、見下す様な目で見てきた。

……やろうってのか、おもしれぇ。


__だったら、ケンカの始まりだ。

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