ACT:2-2/不幸な到着
1時間後、目的地……と思われる場所の、最寄りの駅に着いた。
息切れはしていないけど、ため息はつく。
「何でボク……達が着いた途端に止むのかな」
飛ばされそうなぐらいに強かった風は、すっかり弱まってフードを揺らしていた。
真っ白な無人の街に、雪を踏む音だけが響く。
雪が静かに頬に触れる度、やりきれない気持ちが募っていった。
「……さて。もう着いたから、皆出ていいよ」
かなり大きくなったリュックを駅のホームに下ろして、チャックを開ける。リュックがもぞもぞ動くと真っ先に澪が顔を出した。
「よっ……と。なかなか快適だったっスねー……あたしもう出れなくて良いっス」
「詰まってるから早く出る!四次元リュックはこたつじゃないからね!」
おやつをもらった後の犬みたいな顔だなー、と思いながら、無理矢理引っ張った。
「うへっ、冷たぁっ!?」
雪に触れた途端、小さく悲鳴を漏らした。
……うん、わんこだ。dogと書いて犬だ。
しばらくして、次に寝無が顔を出した。
「何あの空間。もう僕出たくな……」
「出ろ」
案の定彼女は乱暴に寝無を引っ張り出した。
アスファルトでがりがりと仮面が削れていく音が耳に心地良い。……外の寒さに震えていた澪はどこへ行ったやら。今じゃボクが震えそうだ。
結果。
出たくないと言う旨の発言をしたのは7人中4人。
千絋が呼ぶまで断固として出ようとしなかったのが1人。
発言はせずとも幸せそうなオーラを出していたのは2人。
……魔性のアイテム「四次元リュック」を前にしても、淋と千絋はダメにならなかったのだ。おめでとう。キミ達が5人の仲間にならない事をココロの中で祈る……
「あー、ちょい待ち。クロトにこれやる」
咲は上着のポケットからリストフォーンを取り出し、何か打ち始めた。
「ほい。地図データ送ったから」
すぐにボクのリストフォーンが小刻みに揺れる。
「……なんだ、結構近いね。徒歩15分だし大丈夫そうだ」
すぐ目の前にある交差点を右に曲がってまっすぐ進み、二番目の信号を左。
「だりー、疲れたー……」
「全然動いてないでしょ、ほら起きる」
立ったまま船を漕いでいる時紅の肩を揺さぶる。
「……くかー」
「時紅兄ィ、完全に寝てるアル」
「もうリュックに入れとこっか、凍死はしないけど心配だ」
まだ大きくなったままのリュックに時紅を突っ込む。
両替機に紙幣を入れた時みたいに、がーっと飲み込まれていった。
本当はリュックじゃなくて生き物なんじゃないか……?と思ったけど、生き物だったらとっくの昔に苦情の声をあげて逃げているに違いない。
結局の所四次元リュックは四次元リュックでしかないんだ、と自分で強引に納得させた。
「じゃあ行こっか」
『おー』
魔性のリュックにすっかりやる気を奪われたらしく、少し気怠げな掛け声が返された。
……温泉にぶち込めば治るだろうか。




