ROG:2-5/暇人達へ捧ぐ面倒な朗報
「また話アルか?良かったんだけど眠くなるからちょっと嫌いネー……」
「そんな事言っちゃダメだよトラン……昨日は私だって寝ちゃったけど……きょ、今日は違う話だよ……」
「はいはい、淋の言う通りだから安心するっスよー……で、何スかドン」
昼飯の後、昨日の夜と同じ所に集められたあたし達は、やっぱり昨日と同じ席に座る。
ドンはと言うと、奥の方で手を組んで肘をついていた。リーダーらしさを演出したいのだろう。
残念だけど、その身長じゃリーダーらしさじゃなくて可愛らしさが出ているから無駄だ。
……と言えば間違いなく殺られてしまうので、黙っておいた。
「今日は皆に大変な報告があります」
きりっとしているつもりだろうけど、やたらと偉そうな子供にしか見えない。
……これも黙っておこう。
「……タイヘンなホーコク……嫌だ、オレ寝る……」
腕を組んであごを乗せると、時紅クンはそのまま眠り出した。彼の面倒臭い事レーダーは、どれぐらいの精度なのだろうか。
「お、起きろ時紅……!!姉貴が怒っているし……お、俺も怒るぞ!!」
ドンがアホ毛を揺らすのを見て、千絋ちゃんがひっぱたこうとする。
が、彼女の手が届く前に目を開き、背筋を伸ばした。
「……それはもっと嫌だなー……」
「……あ、うぅ……」
……おいっ。自分で言って照れるのか。
「いつまでも胸焼けしてるのも嫌だしもう言っちゃって良いかな?良いよね?」
「ならさっさと言えばいいじゃーん。クロトって変なとこで優柔不断だよねぇ」
「『shot』!!」
「あうっ!?」
怒りが頂点に達したらしい。コートから例の変なメガホンを取り出し、寝無の頭に鉛弾を喰らわせた。流石ドン。
「で、話って何アルか」
「……突然ですが、ボク達『皇龍の牙』は、温泉旅館を経営する事になりました」
そう言った後、彼女は苦虫を噛み潰した様な顔を見せると顔を覆った。
……温泉旅館!?それは……
それは……温泉卵が無限に食べられると言う事か!
たまらない。最高じゃないか。問題なんて何もない。
「……はぁ!?どういう事っ?経営とか出来るの!?と言うかどこにあるのそれ!!」
「長浜。場所は咲に教えてもらったから、明日にはリニアで行こうと思ってる。面倒な事は『創作者達(クリエイターズ)』にやらせるつもり」
寝無のどうでもいい疑問はいちいち鬱陶しい。が、今回は突っ込まないでおこう。明日になれば温泉卵とあそこの組織にいる師匠があたしを待っているのだ。多分。いや必ず。
「……ねぇお兄、なんか澪姉がむちゃくちゃヨダレ垂らしてるんだけど……」
「じゃあ温泉卵の作り方でも検索しとこうか」
「だって澪姉、これで一緒に温泉卵食べられるね……って……ふぇっ!?何してるの澪姉!!返事してよ……!!」
……無意識に淋の頬をつつきまくるぐらいに明日が待ち遠し過ぎて、最早誰の言葉も耳に入らなかった。




