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BORDER:ARRIVE ~絶対少女と不可視の境界~  作者: GAND-RED
ROG:1/最強少女と過去と雨
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半信半疑の出発

お花見の日は雨と予想されていたけど、いざこの日が来ると予報外れの曇りだった。

「適当に準備してから外に来いって言われたけどにゃー」

「あっしら別に用意する必要なんかなかったよなー」

「俺と緋煉に全部持たせてるからだろ!!この扱い酷くないか!?」

「カナシイデス」

パンパンのリュックを背負いながら、ルートが涙目で叫ぶ。精神的なダメージが酷いのか、緋煉はさっきから『カナシイデス』としか言わなくなっていた。荷物を持っただけでここまで傷心する人は、きっとこの先見ない事だろう。

「……酷いなぁ」

……とは言うけど、実はボクも植物図鑑を入れていたりする。

「なぁクロト、さっきから思ってたんやけど……その本何なん?」

本……ああ、今持ってる奴の事か。

「これ?護身用。ここに書いてある事を順番通りにやれば小さい雷を起こせる。まだ現代魔術を使えない子供向けの魔術書(グリモワール)って奴だよ」

他の三人も興味津々らしい。とりあえず確認の意味も含めて、仕組みを簡単に説明した。

「すごいにゃー、そんなのどこから引っ張ってきたんだに?」

「ポルカに貸してもらった」

「ふーん……クロトは現代魔術師になりたいのか?」

「……まぁね」

力仕事は出来るけど、現代魔術も覚えておいた方が良い。殺し屋になるなら、色々攻撃方法を覚えておかないといけないだろうし。

……と言うのをポルカに伝えると、案外すんなりとこれを渡された。ボクの事はもう諦めたのだろう。それはそれで良いんだけど。

「……じゃ、そろそろ行こうぜ。ロギさん待たせてるかもしれないから」

「うん」

忘れ物がないか確認してから、先を歩くルートに四人でついていった。


人混みが苦手だから、朝の通勤ラッシュは困る。こうしてじっとしているだけでも、やってくる人の群れにもまれて人酔いしそうになる。

しばらくして、両手にビニール袋を持ったロギがやって来た。

「やぁ。皆……これはまた大荷物だね」

「こいつら自分で持たないんですよ……菓子ばっか詰めても食い切れないのに」

「うっせーよ兄貴!!夢はいっぱい詰めといて損はねーのっ!!」

「……?咲はお菓子になりたいにゃ?」

「違うぞ、檜。こいつの夢はただのヘンタイになる事だ」

「ふにゃっ!?」

「ちげーし!!あっしは……うー……な、内緒だ!!」

そんな三人のじゃれ合いを見て、二人で苦笑いする。

「カナシイデス」

勿論緋煉は全く立ち直れていなかった。

「……クロトちゃん、緋煉君はどうしたの?」

「……精神的なショック」

「え、それだけであんなになるの?……も、持ってあげたいのはやまやまなんだけど、僕はクロトちゃんの対策で忙しくなりそうでね」

……そう言えば、人混み対策してくれるって言ってたっけ。

「対策ってどうするの?」

ロギはふふんと笑って屈む。


「……何?」

「何って、肩車だよ。……ああ、安心して。僕結構背が高いから。これで足も疲れないし人に紛れずに動けるしで一石二鳥でしょ?」

『えー……もっと結界とかそういうのを期待してたんだけどなぁ……』

なんて言えない。ずいぶんアナログでしかも効果が無さそうな方法だけど、ロギが善意でやってくれてるんだし断る事は出来ない。

「……お……お願いします」

「うん、任せて!」


そしてボクは半信半疑になりながら、ロギに近づくのだった。

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