不確定な声
それからと言うものの、発作が起こったりする事もなく2日が過ぎた。
ちょくちょくポルカやロギがお見舞いに来て話をして(その後咲達が授業を抜け出してやって来ては連れ戻されていた)、軽い検査をしての繰り返しだったけど、ボクにとってはかなり短く感じた2日間だった。
「……そういやクロト、明日が退院の日だったにゃ!」
「……うん」
「おー、ならお祝いせぇへんとな!」
「ありがと……でも爆風クラッカーとかそういうのは要らないから」
こういう時の咲はとんでもない事をするから、ケガをする前に止めた方が良いと言う事は、ポルカと今咲にひっついている女の子……檜(ひのき)から耳にタコが出来る程聞いた。
……後、咲とその友達との出来事も。
おかげで彼女だけじゃなくて、その周りの人の事も大体分かる様になっていた。
「それにしても、クロトはよく話す様になったにゃー。前まで全然話さなかったのに大したもんだに!」
「……なんか……微妙な気持ちだな」
どう反応すれば良いのか分からずに苦笑いしていると、病室のドアが開けられる。
「あー、いたいた。抜け出しちゃ駄目ってポルカさんにあんなに言われてたのに、何で抜け出したのかな?」
「そりゃメンドーだし……ってのわぁ!?何すんだよ不審者!!離せぇぇ!!」
「酷いにゃー!!」
「はいはい、それはポルカさんの前で言って。……それじゃあね、クロトちゃん」
ひよこみたいにぴーぴー喚く二人を抱えると、ロギはボクに向かって微笑んだ。
「うん……またね」
軽く手を振ると、ロギは病室を出ていった。
「さて……」
借りた本の続きでも読もうかなと思い、手に取る。
「………っ!!」
キィン、と言う耳鳴りの後、思いっきり殴られた様な頭痛が襲った。
発作かな?……いや、違う。マボロシ病にこんな発作はなかったハズだ。
じゃあ、一体これは何なのだろう。
現代魔術とかそういうモノじゃなさそうだけど。
分からない。
……少し、怖い。
突然、カーテンを引かれた様に視界が真っ暗になる。
『信じられないだろうけど…………実は僕、…………なんだ。……気持ち悪い?』
ノイズ混じりの声が頭に響いた後、すぐに視界は開けた。
頭痛も収まっている。
「ロ……ギ……?」
嫌な感覚が頭に残る。何度も声が鮮明に浮かぶ。
……ロギの声だったからだ。
「……クロトさん?」
掛けられた声に顔を上げると、そこにはポルカがいた。
「……ポルカ!?」
「いや、少し前に来たばっかりなんですけど……どうかしたんですか?」
「……実は……」
『彼女の心配そうな顔には敵わない』、と塾を出ていった人達は口を揃えて言っていた。その感覚があまり理解出来なかったけど、今なら少し分かる気がした。
「……発作じゃない頭痛に声、ですか……うーん」
ポルカは机に肘をつきながら、両手を組んで唸る。
……のも、最初の1分間だけだった。
「ごめん……分からないよね」
とボクが言った途端、
「わ……分かりました!」
ガタン、と派手な音を立てて立ち上がり、案の定警告音声にお叱りの言葉をもらう羽目になった。
「えーと……クロトさんのそれは能力です!多分!!」
ひとしきり慌てた後、ポルカは咳払いをしてそう告げた。
「……多分?」
「ロギさんはそんな現代魔術使えませんって感じですし、その声を前にも後にも聞いた事がないなら……答えは2つです。
…………過去を見るか、未来予知。そういう能力ですよ」
どやぁ、と満足げに言い終えた。
「……はぁ」
……うわー。かなりざっくりしてるのに何だろうこの説得力。
「とりあえず、退院したらまず調べないと……あ、もうこんな時間ですか。明日の朝、また来ますね」
ポルカはボクの頭を撫でると、病室を出た。
ベッドから降りて外を見ると、もうすっかり暗くなっていた。街では街灯がひとつ、ふたつと灯り、空には星が瞬き始めている。
……耳鳴りと頭痛の後に、過去を見るか未来予知。しかも声だけ。
それが本当にボクの能力なら、凄く嫌だなと思った。
少しの間空を眺めてから、カーテンを閉める。
……明日はきっと、忙しくなるだろうなぁ。




