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BORDER:ARRIVE ~絶対少女と不可視の境界~  作者: GAND-RED
ROG:1/最強少女と過去と雨
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儚い憧れ

今まで教えてなかったけど、その頃のボクは総合拠点の10階……『塾』と呼ばれる施設で生活していた。

クリーチャーや恐異に襲われて親を亡くしたり、虐待でココロに深い傷を負ったり。

塾はそんな子供達が集められ、正しい教養や最低限の武術、現代魔術を身に付ける。そして一人前になって、各々の道を進む。

ボクが塾を抜けてまた戻ってきた時は、皆にはかなり驚かれてたっけ。

まぁとにかく今まで色々な事があって、一気に話すとキリがない。まずは、ボクにまともな考え方を教えてくれた人との話をしようか。





授業がない時は、空いた部屋で一人で本を読む。別に、皆の輪に入れない訳じゃない。いじめられてもいない。

……自分以外の全てが、信用ならないだけだ。

その事を分かってくれる人がいないから、こうして皆から離れる。

「クロトさん、もうすぐ授業ですよ。今日は新しい先生が来てるから、ね」

顔を上げると、ワンピースを着た長い銀髪の女の人がいた。……ポルカだ。

「……分かった」

机に本を置いて、後についていく。もうすぐで着くと言う所で、ある疑問が口に出た。

「……ねぇ、ポルカ」

「何ですか?」

「その人……知ってるかな、病気の事」

「さぁ、どうでしょう……でも教え方は上手でしたし、私も話を聞いてて色々勉強になりましたよ。もしかしたら知ってるかもしれませんね……はい、どうぞ」

開けられたドアから、部屋に入る。

カーテンが閉められて薄暗いこの部屋……『自習室』には、椅子と机が2つずつあるだけだ。ポルカは他にも何か置こうとするけど、ボクのために部屋を作ってくれただけでも十分なので断り続けた。

……どうやらボクが来る前から、席はひとつ埋まっていたらしい。特等席なんて考えは持っていないから、空いている片方の席に着く。

「……こんにちは、クロトちゃん。僕の名前は氷囲楽蟋蟀(ひいら こおろぎ)。今日からここで色々とお話する事になったんだ。宜しくね」

全身は黒ずくめ。あまり整えられていない赤い髪。怪我しているのかおしゃれのつもりなのかはよく分からないけど、右目には包帯がぐるぐる巻かれていた。

「……コオロギって、なんか呼びにくい名前だね」

「でしょ?だからロギって呼ぶと良いよ。……そうだ、質問とかある?」

ロギが言い終えてすぐ、ボクは疑問をぶつけた。

「マボロシ病……って知ってる?」

……ボクは『マボロシ病』と呼ばれる重い病気にかかっている。最近見つかった病気だから謎が多くて、とても強い力を持つ異能者だけがかかり、感染はしない……と言う事しか分かっていない。けど、ボクは新しい事をひとつ見つけた気がした。どんなに効くと言う注射を打たれても、どんなに良いと言う薬を出されても、治らなかったのだから……

きっと、不治の病だ。

多分ロギも知ってるのは名前だけで、症状は知らないだろう。他人に期待なんてしない。

やがて返ってきたのは、初対面の恐怖も吹き飛ばす答えだった。

「知ってるも何も、実は僕、それの患者なんだよね。……クロトちゃんも同じ?」

「……うん」

「そっか。……おまけに言うなら、僕の子供もこの病気らしいんだ」

……らしい?親子なら、普通に分かるハズだ。一体どういう事だろう……?

「こんな事言うのもあれだけどさ、僕22歳で子供が二人いたんだ。お金持ちの家同士で無理矢理結婚させられたからね。いきなり子供がいるって言われた時、その子達の親になるのが怖くて、夜中に逃げた。でも……たまに隠れて様子を見に行くんだよ」

……考えを読まれていたらしく、一気に重い事を話してくれた。能力でも使ったのかな、と首をかしげるボクにはお構いなく、彼はカーテンを開け放った。太陽の光が目に痛い。

「……その子達の名前、何て言うの?」

「僕は名前を付けてないんだ。でも6歳ぐらいになって、自分達をルートと咲って名乗ってた。双子の兄妹でさ、今は二人とも10歳。……多分、母親は死んだ」

寂しそうに笑っていた。そんな彼を、最低と言うのかどうか、ボクにはさっぱり分からなかった。

「そんなに深く考えなくてもいいよ。あと少し大きくなったらすぐに分かってくるハズだから」

「……そう」

注意されて我に返ると、まずロギへの興味が湧いた。同じ病気なら、もしかしたら色々と新しい事が分かるかもしれない、と。そして次におかしいと思った。どうしてこの人はこんなに話してくれるんだろう……と。それを口に出すと、

「親近感から、かな。クロトちゃん、なんだか昔の僕そっくりだったから。じゃあ、そろそろ授業始めようか。……と言っても、話すだけだし何も要らないんだけどね」

「……何の話?」

「うーん……まずは北欧神話から行こう。君は物知りだってポルカさんも言ってたしね。……」


「……へぇ、怖いなぁ。どれぐらい痛いんだろ」

「想像も出来ないぐらいだよ、きっと。……今日はこれで終わり。今から皆の所に行くけど……来る?」

「……いや、いい」


今まで堅そうなイメージがあって手に取らなかったけど、北欧神話も案外奥が深くて面白かった。

自習室を出て自分の部屋に戻ろうとすると、部屋の近くに三人子供がいるのが見えた。

「咲、真っ黒の兄ちゃん見つけたにー、そこの角曲がったにゃー!」

「えぇ!?ほんまに!?兄貴ー!!不審者見つけたー!!」

「おい、何言ってんだ!!不審者じゃないだろ!?」

馬鹿っぽい事を言いながら、その三人はばたばたとボクの目の前を通り過ぎていった。

……髪の長い子は咲って呼ばれてた。もしかしたら、ロギの言っていた子供かもしれない。だとしたら、その子が兄貴と呼んでいた紫髪の男の子がルートか。


……今度会った時に話でも聞いてみようかな。

そう思いながら、ドアノブに手をかける。

「……っ……!!」

血を吐いた。体から力が抜けて、その場に崩れ落ちる。ドアに頭をぶつけた。

「……くっ……そ……」

身体が全く動かない。頭が痛い。とても痛い。息をするだけでも苦しい。

……助けて。

意識を失うまで、その言葉だけがボクの頭に溢れていた。

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