輪廻の終わり
「……あっしに勝ったんだから、ちゃんと千絋ちゃんの事……起こしてやれよ……」
やがて口許の血を拭いながら、咲は弱々しい声でそう言った。
「分かってるよ、でも……」
「はは……この世界のあんたはえらくなよっちいなぁ。……あっしは、何かに取り憑かれてたんだ……本当だったら、檜を庇って代わりに死んで。それで終わるハズだったし……いいんだよ」
彼女はボクを見て目を細めた。
「それじゃあ、檜は?」
「ああ見えて根は強いぜ、檜は……今まで迷惑掛けちまったし、あの世でどうにか恩返ししなきゃなぁ……あっ、テトにも」
そこまで言って大量の血を吐いた。近くに転がっていた結晶の欠片に、僅かな赤が付着する。
しばらくの間を置いて、咲はまた口を開いた。
「……なぁクロト……早いとこ、殺してくれねぇか」
「……嫌だよ」
ここまで戦ったとは言え、ボクは幼なじみを何の躊躇いもなく殺せる様なバケモノではなかった。
「ああもう……いいだろうが、あっしぐらいいなくなってもよ……こっちはそろそろゆっくりしてぇんだ」
咲は、穏やかに笑っていた。
それを見たボクは、左腕をゆっくりと振り上げる。
「……檜に、こう言っといてくれねぇか。「あっしが死んでも、誰かを傷つける様なヒトにならないでくれ」って……」
彼女は微笑んだまま、目を閉じた。
「分かった」
「頼んだぞ、あっしの嫁……へへ」
咲の胸元に、紅い花が咲き乱れる。
「__さよなら」
血混じりの涙が一滴、彼女の頬に溢れた。
このどうしようもない記録を最後まで読んでくれた素敵な貴方にBIGニュースです。
2期、ありますよ。




