ACT:FINAL/『復讐者X』
血を流しながら、時紅は後ろに倒れる。
ボクはただ、茫然と立ち尽くす事しか出来なかった。
「時紅!!」
千絋が駆け寄ろうとする。
そこに死目が回り込み、首元に何かを打ち込む。
「なっ……」
千絋は彼の後を追う様にゆっくりと倒れた。
死目はこちらを向いて喉の奥で笑う。
「ざーんねん☆劇薬を打ち込んだから、これで彼女は二度と笑わないし目を覚ます事もないよ★」
瞬間、全身の毛が逆立ち、血が沸騰する感覚を覚える。
殺す。頭の中はそれで埋め尽くされていた。
「__アンタって奴はああああッッ!!」
全力で左ストレートを放とうとした時、有り得ない事が起きた。
死目の頭が、ハンマーで思いきり潰される。
「ようクロト。殺したい奴を殺せない気持ちはどうよ?」
惨い姿で前のめりに倒れた死目の後ろには、異様な姿をした咲がいた。
「何で……咲がここに……?」
左半身には何も異常が無かった。
ただ、右半身の骨が透けて見え、炎の様に揺らめいていた。左目は結晶で覆われ、禍々しいオーラを放っている。
「何でって、決まってんだろうが。
__お前を殺しにきたんだよッ!!」
何の光もなかった咲の目におぞましいほどの憎悪が灯る。
カーシェストを一回転させ、槍になった部分を突き出してボクを貫こうとした。
「咲……!?」
「ああ、あんたはこの世界のクロトだったか。なら、殺される理由を聞かせてやる。
……お前はな、あっしの檜を665回も殺してんだよ」
ボクを睨みつけ、咲は吐き捨てる様にそう告げた。




