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BORDER:ARRIVE ~絶対少女と不可視の境界~  作者: GAND-RED
ROG:4/この狂った世に終止符を
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ACT:4-7/血土決壊

「……龍哭寺、どけ。でなきゃ死ぬ事になる」

澪さんが刀を抜く。いつもの木刀と日本刀の組み合わせかと思いきや、彼女が取り出したのは二振りの日本刀だった。

「それはこっちの台詞ですよ。……ワイは姐さんが事実に触れようとした場合、その始末を命令されてるんですわ」

散弾銃に無理矢理刀を付けた様な銃剣を構えられても、澪さんは構えを崩す事なく龍哭寺を見据えている。

最早2人の関係は、壊れたも同然だった。

「悪く思わないで下せぇよ」

「それはこっちの台詞だ」

龍哭寺がトリガーを引こうとした瞬間、地面から滲み出す様に禍々しい色をした何かが現れ、そのまま彼女の身体に覆い被さった。

「僕の澪を殺そうとするなら、僕はあんたを殺す。

……いや、あんたはクソお父様の手下だから絶対に殺す」

奇妙な形状の鎌を担いで、ネムさんは言い聞かせる様に言った。

「ここは僕と澪でどうにかする。皆は先に行ってて」


ネムさんの言葉に頷かない理由はなかった。武術に精通した澪さんと魔術に精通した彼女が相手であれば、いくら戦いやすい銃剣を持っていたとしても勝つ事は難しいだろう。

それに、姉貴が……いや、ジギーがいるのに生き残っている人間がいるんだ。施設の中にも何人か倒すべき相手がいると考えれば、こんな所で無駄な労力は掛けられない。


「……皆、何処でもいい。俺に触れていてくれ」

3人が俺の左手を握る。空いた片手で懐中時計を開くと、世界が息を止めた。俺と時紅、そして淋とトランが問題なく動ける事を確かめると、一気に施設の中へと走り出す。鉄の扉は、バラバラに砕かれていた。

「……健闘を祈ります」

懐中時計を閉じると、止まっていた世界は瞬く間に溶けていった。


時を戻しても止めても、黒しかない。そんな場所だからこそ、紅い色が際立っているのだろう。

GPSは詳細な居場所を割り出してくれなかったので、瓦礫と書類、そしてヒトであったモノが散乱する中を注意して探し回る。非常灯の明かりを頼りに何か怪しいモノがないか探り、通路を塞いでいる瓦礫は、時紅の爆弾で砕いて進んだ。

それが何回か続いたが、姉貴が見つかる気配は一向にない。

どうしたものかと考えていると、小さく声が響いた。

「……助けて……」

「誰だ!?」

声のする方に向かうと、傷だらけになった少女がいた。

髪の色は違うが、血の様に紅い左目を持っているし、顔立ちや背の高さもかなり姉貴に似ている。血縁者か何かだろうか。

「だ、大丈夫!?……大いなる『天上の光』よ、傷つきし戦士に祝福を……『エンジェルス・コール』!」

淋が詠唱を終えると、柔らかな光がとうとう倒れ込んでしまった少女を包み込み、光が消えると全身の傷はほとんど癒えていた。

「……お前、どうした?」

時紅が尋ねると、少女は泣きそうになりながら話し始めた。

「クウ、クロトがいるって聞いたから、クロトに会いに行ったんだ……そしたらクロトがおかしくなって、「ボクじゃない」とかって言いながら色んなモノ壊して……」

「君はクウと言うのか……その人は今どこにいるか、分かるか?」

「クウは分かる……分かるけど、行けないよ。……クロトのいる所にはクチカがいるし、前の部屋の『セイギョソーチ』が壊れちゃって、怖いのがいっぱいいるよ……」

へたり込んでとうとう泣きじゃくり始めたクウの頭を、あやす様にポンポンと叩いてやった。見た目は姉貴とそう変わらないが、中身はずいぶんと幼いらしい。淋が飴を渡すとすぐに泣き止んだ。

「教えてくれてありがとう……でも、俺達はその先に行ける。怖いだろうけど、道案内をしてくれないだろうか」

「うん……でもおねーさん達、名前は?なんでここにいるの?知らない人について行ったらダメってシニメが言ってたよ」

この子は死目を知っている、そして親の様に名前を呼んだ。姉貴の血縁者ではない。何者だろうか。湧いてきた疑問を押さえながら、俺は言葉を吐き出す。

「俺は千絋、この大きい人が時紅で、こっちはトランと淋。……俺達はクロトを助けにきたんだ」

クウはぽかんとした顔で俺達を見上げていたが、やがて目を輝かせる。

「チヒロにジグにリンとトラン!クウ覚えたよ、頑張るよ!クウもみんなのお手伝いする!!」

彼女はバネの様に勢い良く立ち上がり、意気揚々と言ってのけた。

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