37A列車 青函隧道
ふと目を開けた。今どこを走っているのか真っ暗でまったくわからない。しかし、自分が見ている方向とは違う方向に進んでいるのが分かる。だから、どの線路を走っているのかぐらいは分かる。津軽海峡線内だ。もしかしたら、もう青函トンネルに入ったかもしれない。そうなっていたらちょっとショックだ。
立って、その場を離れた。ラウンジには自分以外誰ひとりいない。カップルや「カシオペア」に乗ることが楽しみでしょうがなかった子供の声はいつの間にか消えていった。しかし、軽快に線路をたたく車輪の音だけはいつまでも鎮まることを知らない。
(あっ・・・。)
車掌を見つけた。検札のときに見た車掌だと思う。
「あの。すみません。」
そう声を掛けると当然だが、こちらを向いた。
「どうなさいましたか。」
「ああ。青函トンネルってまだ入ってませんか。」
「青函トンネルですか。まだ入っておりませんが。」
「そうですか。ありがとうございます。」
礼を言ってから、僕はまたラウンジに戻った。青函トンネルに入るところを見ないではいられない。入っていないならなおさらだ。しかし、進行方向と違うから、そんなに楽しいものでもないかぁ・・・。
しばらくすると列車は停車した。青函トンネルはまだ先だろう。この先はJR北海道に管轄が変わる。つまり、今は乗務員交代のための運転停車で、客扱いはもちろんない。乗務員の交代がすむとすぐに発車した。ここから青函トンネルは近い。
しばらく進むと何本もトンネルをくぐり始めた。青函トンネルはこの中の一つだ。そして、世界の海底トンネルで一番長い。世界一のトンネルである。ここ最近まではトンネルとして世界一だったが、陸上トンネルはスイスに完成したトンネルにより、その長さを凌駕された。しかし、前述したとおり、海底トンネルとしての地位はいまだ破られていない。何本化トンネルを抜けているとこれが青函トンネルなのかという感じになってしまうが、世界一のトンネルだ。他のトンネルとちゃんと見分けがつくようになっている。そして、ついにその目印が来た。線路わきが青く光っている。小さいかもしれないが、あれが青函トンネルであるという証だ。「カシオペア」は軽快に青函トンネルの最深部に向かって走って行く。途中何本かEH500牽引の貨物列車とすれ違った。すれ違った後で、緑のライトが光っている最深部を通過。湿度ほぼ100パーセントのトンネル内で「カシオペア」の中からそっちを見ると水滴で屈折して、にじんでいるライトに見えた。
この青函トンネルを私は1.5往復しました。