33A列車 発つ
16時20分。列車は揺れることなく上野駅を発車した。これは「カシオペア」の鉄則だ。いかに客車に振動を与えず引き出すことができるか。機関士の腕の見せ所である。「カシオペア」は今回乗れなかった鉄道ファンの人々に長声一発。うるさいと言われるほどの汽笛を残して上野駅を後にしていった。普段は見送る側だけど、見送られる柄になって誇らしい気分で出発だ。
上野を発車してほどなく見えてくるのが尾久車両センターだ。ここにはこの「カシオペア」や「北斗星」、「あけぼの」の客車も所属している。次に13番線ホームから発車するのは19時03分発の「寝台特急北斗星」。昔はこの間にも「北斗星」が設定されていたが、青函トンネルの高規格化工事のため運転取りやめとなった。尾久の車両センターを通り過ぎて、新幹線の線路とも別れる。しばらくの間は並走するほかの線路が楽しませてくれる。だが、それともすぐに分かれることになる。
「ねぇ、あたしラウンジ行ってみたい。」
(ラウンジかぁ・・・。)
僕はそれに賛成した。今回はその「カハフE26形」が「カヤE27形」に組成変更されているということはなかった。
ラウンジに行ってみた。ラウンジは僕たちが乗っている車両のひとつ前だ。ラウンジカーはとても見晴らしがいい。これが青函トンネル内なら、この車両が最後尾になり、青函トンネルの光景はひたすら後ろへ流れていくことになる。これは青森駅に入線して、機関車の位置が、変わるからだ。現在は前から景色が流れてきているけど、その大部分は511号機に覆われてみることはできない。しかし、横についている広い窓から車窓を楽しむことができる。
しばらく走ると再び大量の線路が並走し始めた。赤羽が近づいたのだ。赤羽からは分かれていた京浜東北線が並走するようになる。東北本線のホームを悠々と通過し、大宮まで急ぐ。
「・・・。」
赤羽には大量の人がいる。全員この現実社会に疲れたような顔をしているのがちょこちょこ顔を追っていると分かる。そう言う人でもこういう異空間を楽しめばいいのに・・・。そう言う人はさておき、「カシオペア」は帰宅し始めた学生とかち合う時間帯に大宮に到着した。しかし、今は夏休み期間中。会うはずがない。まぁ、それが目的ではないし、関係ないかぁ・・・。
さて、まだまだ「カシオペア」は走り始めたばかりである。シルバーの車体を輝かせ、汽笛一発。大宮を発車する。
乗りたいなぁ・・・。見るだけで終わっているのが悔しいです。