32A列車 推進
15時35分。「寝台特急カシオペア」が上野駅13番線ホームに入線して来た。もしかしたら、この光景を初めて見る人には不恰好に見えるかもしれない。だって、見慣れない人からしてみれば、普段後ろにあるはずのものが前から進入してくるからだ。これは別に間違っているわけではない。むしろ上野駅にいたればこれが正解だ。これは上野駅の地上ホームの形にある。上野駅の地上ホームはホームに対して線路が串のようになっている。これは串型というホームの配置。ここで、もし機関車を先頭にして入線した場合。上野駅ではその機関車を本務機(列車牽引を担当する機関車)にすることができない。さらにその機関車は列車がどくまでその場から動けなくなる。これでは非常に効率が悪い。そのために、最初は客車を前にした状態で駅に入線する。後ろから押す機関車はそのまま本務機として、発車し、列車の牽引を担当するのだ。
「「カシオペア」ってこんな列車だったっけ。」
レイがそうつぶやいているのが聞こえた。前見たときは機関車を見たからこのように思うのだろう。レイは先頭はしっかり見ているほうだとは思っている。つまり、レイが分かっているのはこの「カシオペア」を牽引している機関車で、客車ではないのだ。
「そのうちやって来るよ。」
僕はそう言った。
だんだんその機関車が近づいてくる。問題は機関車の色だが、今日は青。前見たときも青だったかぁ・・・。僕はどれほど強運なのだろう。「カシオペア」を牽引する機関車には二つの色が存在する。一つは客車と同じ色。もう一つは青色の機関車だ。今回の「カシオペア」本務機はEF510-511号機だ。
「さぁ、お目当てのものは満たし、荷物だけでも置きに行こうぜ。」
僕はそう促して、「カシオペア」に乗り込んだ。初めてみるE26系客車の中である。非常にきれいなものだ。僕たちの部屋は2号車。寝台はすべて個室でプライベートな空間が保たれている。
荷物を置くとすぐに外に出て、機関車を撮った。車番はさっきも確認したとおりEF510-511号機。16時20分に上野を発車し、青森まで牽引を担当する。途中の停車駅は大宮、宇都宮、郡山、福島、仙台、一ノ関、盛岡。盛岡を発車後営業停車客扱いを行わずに青森。翌朝、函館、森、八雲、長万部、洞爺、伊達紋別、東室蘭、登別、苫小牧、南千歳。終点札幌には明日9時32分に到着する。17時間12分の旅である。
作っているとこいつらがうらやましいなぁ・・・。