表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/5

ドラマの収録③~お嬢様は腫れ物扱い

ディレクターの控え室。


苦虫を噛み潰したまま威厳を保つ"中年"。


ジロッとディレクターを睨み身動きしない。


「先生っそれは…」


萎縮するディレクターとしては…


是々非々の言葉を継ぎ足し難いと思う。


「なあっ~君っ!ひとつ頼むよ」


ちょっとしたことじゃあないか。


睨みは威圧を効かせ強制力が強まり微動だにしない。

「本(脚本)は僕がだね。責任を持って逐一書き直したい」


"僕の愛娘をキャスティングするだけなんだよ"


「ちょっと待ってくださいっ先生」


ドラマ出演者キャスティングは変更出来ません。


脚本家の勝手に連れて来た愛娘を出演させる。

最初登場はかわいい女子高生の役柄(地のままいけるから)


"愛娘の演技の質をみて順々セリフを与え準主役にまで抜擢させたい"


気まぐれに愛娘を出演させる。


ドラマ予定の端役さんは出番が少なくなるか不必要である。


「端役をまったく出演させない可能性もありますか」

となりますと…


「局としては問題が紛糾します」


端役とても役者である。


芸能プロダクションの面子があるのではないか。


端役?


通行人や教室で座るだけの生徒か


「そうかいっ。その他大勢の"十把一絡げ"が大切なのかい」


愛娘を


ポンッと


ディレクター特権でキャスティングさせてくれたら


「イキイキとした演技を娘はドラマ展開に合わせて見せてやれる」


約束したいね


「君っ(局から)給料はいくらもらっているんだね」


はっ?


藪から棒に


唐突な話が飛び出した。


「テレビ局社員は社員だが。いつまで雇われディレクター(テレビ監督)をする気なんだ」


暗に言うは


フリーの監督にならないか

「僕の見た目には…充分伸びる要素がある。ダクションを紹介しないわけでもないがな」


芸能界に縁の下の力持ちとして長く君臨する売れっ子の実績である。


まんざらハッタリを言うわけでもない。


「フリーですか」


大学卒の第一希望は映画監督の男だった。


耳には心地よき"フリー"という魅惑的な言葉。


そして


肩書き


反芻(はんすう)したくなる。


フリーでドラマ制作


夢見心地な監督への道が拓ける。


「局としては社員を使ってディレクターさせたら安上がりだぜ」


ちんけな局に(わだかまり)なんざないだろうっ


若いアンチャンよ


「いやなぁ~ディレクターの眼鏡に叶えば出演者だと思っていてね」


愛娘をスタジオに連れてきたのだ。


「その娘っ子なんだがな」

単なる娘っ子。


そこいらにいるカワイコチャンだの


女子高生ではないんだ


「単なる…ではない?」


何ですかそれっ


わからない謎解きが始まった。


娘なんだよっ


脚本家の娘だっ


我が愛娘だっというが


"いわくつき"


ディレクターは身構えてしまう。


この御仁(ごじん)においては何を考えているのかわからない。


「さあって。君も忙しい身であろう」


僕はおいとまさせてもらうよ。


「互いに忙しい身だからなぁ~アッハハ」


脚本家は高笑いを残し局を去る。


ときに…


「あの愛娘は置いてきぼりにするよ。出演者にはよろしく頼むからなっ」


ディレクター君


君の好きにするがよいさ


「するがよいって!」


じょ!冗談じゃあない


「先生っ待ってください」

謎解きは解明されてはいませんよっ


「意味が…先生のおっしゃる真意が理解できません」

いつもの気紛れな行動。


かと思えば


意味深長な


重得な発言


好き勝手を押しつけるのは売れっ子の証拠である。


「君の悪いようにしないつもりだよ」


ポンッと軽く肩を叩く


ワッハハッ


高笑い。


"ディレクターの(ろう)(ねぎら)いたい"


ハアッ~


お待ちください。あのお嬢さんはずぶの素人さん。


まったく役者経験のない者をいくらドラマの端役だとはいえ出演させたら悪いようになりそうだ。


「先が思いやられそう。今から胃薬を買い占めておこう」


控えに時間を知らせにAD(アシスタント)がやってくる。


「(スタジオは)準備できました」


出演者の台本下読みも完璧を見る。


照明とカメラリハも済みで収録に支障はない。


「テイク(収録)はいつでもOKでございます」


あとはドラマ総監督であるディレクターのゴーサインのみ。


よっこらしょ


気の重いディレクターは腰までズボッンと重加算されてしまう。


「テイク(収録)は始まるんだな(ハァ~)」


出演者たちは


スタンバイ


ついでに


「部外者禁止のスタジオにいらっしゃいますからね」

かわいらしい女子高生はチョコンと陣取るのである。

AD(アシスタント)(いぶか)しげに訊ねる。


「あの女の子ですけど。先ほどからスタジオ袖口で…」


いかがなさいますか。


収録に部外者がいると役者さんに支障が出ますよ。


「退室してもらいましょうか」


バックにどなたがついていようとも


ドラマ進行は無関係なんですから。


AD(アシスタント)は気を使ったつもりである。


「いやっ待ってくれ」


気まぐれな脚本家の後ろ盾は絶大ではないか!


顔を立ててやらなければ


ディレクターのこちらが立ち往くもなにも。


「アシスタントくん。申し訳ないが」


それっおいでなすった!


つまみ出すんですねっ


「女の子を衣装室に連れて行ってくれたまえ」


はあっ~


「今日の台本のテイクの後半。教室の撮影があっただろ。女子高生がいるんだった」


ひとりぐらいエキストラが増員されても


「女子高生のエキストラですか」


そりゃあ2~3人いても構いませんが 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ