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ドラマの収録①~脚本家の胸算用

「へぇ~お父さんっ!さすがですね」


閑静な別荘地の夜だった。

父娘(おやこ)は仲良くリビングでテレビを見ていた。

「ああっ」


ドラマの出来など別にたいしたことじゃあない


脚本が手元を離れ


仕上げたら


ドラマなんて


いつもこんなもんさ


「子役(男の子)が熱演している。賢くてかわいいなあ」


脚本家の娘は女学院の女子高生である。憧れと現実を直視する。


「あの(院長の)おじいさまって威厳があるね。まるでお殿様がいらっしゃるみたい」


娘はさらにどっぷりとドラマにのめり込んでいく。


「おまえがドラマに夢中になるなんて珍しいなっ」


子役がかわいい活躍を見せている。


院長の役者(大御所)は威厳を保ちお殿様風情で医院の首領(ドン)を演じる。


なんとなく


「そりゃあなあ~」


俺の脚本の力より


「役者の演技力で話しが進む感じだなあ」


あらっお父さんってば!


嫉妬()いているのかな


「私も"シンデレラを探せ!"で優勝グランプリになって」


そのまま芸能界に女優さんやタレントさんになれるのかなあ~って


「おっ!女優になりたかったのか」


父親はジロッと我が愛娘を見る。


"幾多かの女優やタレントとベッドをともにした遊び人の顔がチラッ"


女優という人種に


我が娘は憧れ?

それは気がつかない


ニヤリっ


「我が娘っ子が…女優さんに…なりたい?」


えっ!


綺麗な女性がなる女優


アッハハ~


テレビドラマの風雲児たる脚本家の実の娘っ


「女優さんねぇ。これは愉快じゃあないか」


どうしたことか父親はふつふつと"笑い"がこみあげてしまう。


「イヤ~ンお父さんって意地悪さんだね」


私だって"女優は夢物語"じゃあないもん


「何千というオーディションでグランプリを獲得したのよ」


知ってるでしょ


「お父さんだって審査員として私に投票をしたんでしょ」


美貌がありますのよっ


若さは武器でございます


キュートな笑顔


何て言うの


「私という女の子。同世代を代表してカワイコチャンナンバーワンだもん」


カワイコチャン?


美貌がある?


「アハハッ!わかったわかった」


父親は腹を抱えて笑いである。


プイッ~


まあっ~


失礼ねぇ~


お父さんでも許せないわ


愛娘は虎魚(おこぜ)のごとくプイッ~


福士加代子のような膨れっ面をしてみせる。


ひどいなあっ~


娘と虚しい話しをしても埒あかない。


「さあっ~もう少し(脚本作成を)頑張ってみるか」

書斎に閉じ籠って執筆活動に励むかっ


自由人の物書き脚本家である。


「作品」の納期を守りさえすればテレビドラマに穴を開けることはない。


「うんっ頑張ってね」


お父さんは徹夜組なのかな

夜鷹(よたか)とはよく言ったものである。


世の執筆活動家の大半は夜にごそごそである。


草木も眠る"丑三つ時"(深夜)にはなにかと捗るようである。


「ああっお父さんは頑張ってるよ」


こんなにも可愛い実の娘がいるんだから


書斎にてパソコンを開示して執筆を始めようかとする。


"メール受信"が赤色に点滅をする。


「メールかっ」


都心の芸能事務所にいたらメールぐらい秘書がひとつひとつチェックしてくれるのである。


その夜である。健筆(けんぴつ)なはずの脚本家はなかなか取り掛かれないでいる。


「どうにも…落ち着かない」


久しぶりに娘と二人だけの日々。楽しみのみが生活にありドラマメイクに至らない。


「少し遊ぶか」


ネットサーフィンしたり


書物を開き気分転換をはかる


"たまにはメールでも見るか"


面倒なメールチェックなど芸能事務所の秘書がこまめにする雑務である。


クリック


カチッ


「うん?」


ザァ~っと受信メールの羅列が開示されてしまう。


カチャカチャ


スパムは除外機能でゴミ箱へポイッ!


クリックを繰り返していくと見慣れた名前が目に止まる。


"立派な本だった。極めて演じやすく感情も移入できました"


局の体面を保つドラマ。最高の出来栄えであると絶賛したい。


うん?誰かと思えば


大御所じゃあないか


じきじきの


御礼状である。


"主役不在のドラマ。一時はどうなるかと心配をしたが"


トレンディ俳優のためのドラマ設定を返して窮地を救う。


脚本の機転により脇役を主役に抜擢して(しの)ぐ。


「なんだっそんなことかっ」


芸能界のドンからの依頼ではないか。


大御所たる権力に台本を書き直して欲しいと懇願され断れない。


"ときにだが"


祖父院長を大抜擢の書き直しが功を奏してくれた。


"第3話まで収録した今である"


子役の人気にあやかりたい。


大御所の演じる祖父も役者当人が熱を帯びてますます盛りあがる。


スポンサーつき民間ドラマがNHK大河ドラマを模倣したかのごとく。


「局のディレクターと相談しなければならないが」


評判のよい回想シーンは視聴率に跳ね返る。


「祖父と子役の孫の出番を増やしてもらいたい」


ふむふむ~


「芸能界のドンともあろうお方が」


じかに申し付けていただければ


国際派俳優としの名声が一介の端役ぐらいで騒ぐのはプライドが許さないのか。


「祖父をメインにする?」


子役を引き延ばす。もしくは回想シーンで再登場させてみる。


「このドラマのテーマは医院に生まれた"双子の成長"だ」


脇役が2話も3話も張り切っては趣旨本流が狂ってしまう。


「脇役は脇役としての窓際での立ち位置が順当ですよっハリウッドさん」


カチャカチャ


適当な文面のお礼をメールしておく。


「さてっ…納期近い脚本から仕上げていくか」


売れっ子は常に忙しく端末の前に四苦八苦をしなければならない。


翌日のお昼過ぎ。事務所から業務連絡をもらう。


「先生っ執筆ご苦労様でございます」


局の収録ドラマ。


具体的に週間視聴率があがってきました。


「喜んでください。週間ドラマでNo.1を記録いたしました。おめでとうございます」


一番であるとしても…


「君ィ~そりゃあ~」


数字のあやと言うものさっ


「あれだけ前宣伝を流し評判を高め視聴率男のトレンディ俳優と売れっ子脚本の俺の名前があればだよ」


ドラマが良かろがあしかろうが関係なくお茶の間は見る。


「はあっさようでございましたか」


他に大きなニュースや事件もなかった。暇な日本人は夕方にドラマしか娯楽はないとなる。


「さようでございましたか」


長年にわたりテレビを手掛けている身分だ。自作品の出来不出来ぐらい肌身でしっかり感じるさ。


「事務所にどんな要望が来ている?」


小学生の子役がいとおしくかわいい。


そのまま成長させないでドラマを進行させて欲しい


(主役が登場できない!)


医者の家系はわかった。


もっと医療シーンをフンダンに取り入れて欲しい


医療のドラマはドラマだがエンターテイメント性の高い娯楽ドラマを作成しているのだ。


やたらな医療用語をばらまいてしまってはお茶の間がついてはいけない可能性がある。


「台本書きの俺が医者にはまったく疎いんだ」


恋愛シーンをフンダンに盛り込んで欲しい。


「色恋沙汰の恋愛か」


このスチュエーションは…


「何を隠そう」


売れっ子脚本家の真骨頂っであった。


「恋愛ドラマに仕上げてもよいのかい」


主役の俳優はまだまだ収録スタジオに現れそうにもない。


「奴が復帰したらしたで台本をいくらでも書き換えてやろう」


パソコンの端末をカタカタと打鍵してみせた。


"我が愛娘(まなむすめ)を強引に出演させてみるか"


カチャカチャ







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