Part17
___まっさらな空間に薄暗い……いや、世界が何とか自分を保とうとしているような空が広がっている。
悲鳴すら聞こえない、轟くのは世界を巻き込んだ爆発音のみ。
世界最後…人類滅亡……そんな言葉がピッタリ当てはまってしまうだろう。
「えっ? なにこれ……どこ、ここ?」
深月は比較的形を保っていたビルの屋上に立っている。
辺りを見渡すがやはり人の声は聞こえず、届いてくるのは爆発音であり知らない生物の大叫び声……中学三年生の深月には刺激が強く、その場にしゃがみ込み動けなくなってしまった。
「うぅ………みんなどこ…誰か来てよぉ………パパぁ…」
天由姉弟屈指の甘えん坊であり、屈指の怖がりである深月は涙を流しうずくまるしか出来なかった。
しかも、何故かその恐怖の対象である音が深月に着々と近づいていた。
だが、深月はそれに気づいてない。
視野が狭くなっている所では無く瞼を完全に閉じ身体を震わせることしか出来ない。
「ハー……ハー……」
なにか生物の吐息音が深月を包み込むように吹く。
それには流石の深月も何かに気づき顔を上げる、息を飲む、声が出ない、目の前にいるのは何か分からない大きな生物の顔。
何か分からない、何か分からないが恐怖掻き立てる顔をしている。
顔は白く、鼻は無い…何かに削がれたように、瞳は何かを捉えているようで何も捉えてない、そんな印象を受ける。
口は右側だけが裂け右眼目尻まで続いている、笑ってないのに笑っているように感じ、
捉えられてないがこちらに向けて笑顔を振りまいている。
この顔は、特に深月には効果的だった。
深月は歳から考えると、とても幼い。
行動言動全てが同世代と比べてしまうと幼い……言い方を悪くすると幼稚と捉えられてしまう。
声を出せずに怯えていると、どこからが声が聞こえた。
深月はその声の正体が何かすぐにわかった、聞き慣れた安心出来る声……一番身近にいて、一番安心できて、一番来てもらいたい人の声だった。
「大丈夫か! ……華蓮! 時間稼げ!」
「言われなくても、そうするよッ!」
華蓮と名前を呼ばれた女性は、その巨大生物に攻撃を与え座り込んでいる深月から意識を逸らす。
そこに駆け寄るのは指示を出した男性。
「あんた、大丈夫か?」
「う、う………うぅ、パパぁー!」
「___うぉっ! パ、パパ?」
深月は声をかけてきた男性をパパと呼び、泣きじゃくりながら抱きついた。心細かった時間を取り返すように、打ち消すように深月は力いっぱい抱きついた。
パパと呼ばれた男性は深月を剥がそうとするが、どんなに力を入れても剥がすことが出来ずに困惑していた。
「ちょっ、ちょっと……えぇぇ、どういう事?」
「うぅぅぅ……怖かっだ…寂しかった………気づいたら…誰も居なかった………うわぁぁぁぁん」
「あぁ、ちょっとちょっと泣かない泣かない……その…大丈夫だから。ね? 安心してね?
…流石に剥がすのは可哀想か? 仕方ない…かおりに連絡して預かってもらうしかないか……」
男性は深月が気が済むまで泣くのをただ待つことにしたようだ。
___数分後。
泣き疲れ落ち着いたのか深月の腕から力が抜けたが男性から離れることはしなかった。
背中に腕を回して、胸に顔を埋めて、まるで赤ちゃんと錯覚してしまうほどその顔や体勢は幼かった。
男性は不安にさせないようにゆっくりと、深月を離すとそこでようやく深月は顔を上げて初めて男性の顔を見た。
「んへへぇ、パパぁ」
「……………えっと、パパ? 俺ってそんなに君のパパに似てるのか?」
「ん? 何言ってるパパはパパでしょ? 全く……寝ぼけてるの?」
深月はそう言うと再度男性の胸に顔を埋めて抱きしめ出した。
その行為に男性はと言うと、困惑が隠せないでいるが助っ人として呼んでいるかおりと言う人物が来るのを待った。
その間、深月が男性の手を取り自分の背に回してまるでハグしろと命令する様に……
男性は深月から感じた幼さと愛くるしさに根負けし仕方がなくその行動を受け入れ深月を軽く抱きしめた。
___そこから更に数分後。
「遥冴くん! どうしたんですか? 急遽呼び出しするなんて………………って、何してるんですか? この緊急時に可愛い女の子とハグして、なんですか? 見せつけですか? ふざけてるんですか? だいたいですね___」
「待て待て、好き勝手言い過ぎだ。一旦俺の話とこの子の話を聞いてくれ」
「聞きますけど、アレですか? 言い訳ですか? 弁明ですか? それとも…………って、あれ? さっきの子は?」
「は? 何言っ___て……居ない……」
男性達は何を見たのだろうか。
深月はどこにいて何をしていたのか、どういう事なのだろうか。
その日の朝、深月は遥冴の布団の中で遥冴に抱きつく様にして眠っていたと……発覚した。




