青髪の勇者たち4馬鹿
日が沈む頃、家の中には四つの人の影が揺らいでいた。
「あのイカれ聖女の命令もう懲り懲りだ‼」
1本の蝋燭と食器8セットが乗った机を叩いて声を荒げたのは大陸一の戦闘力を持つといわれたイルム。
そしてその後ろで「そーだそーだ」と、同調するように野次を飛ばすのは彼が契約した精霊のアリス。
「今度もお得意の『世界の危機です!』看板掲げられたからね~。立場的には応じないといけないのは仕方のないこと」
錯乱した馬をなだめるように大陸最強に説明するのはフィリシア。しかし確実に、意見を通そうと必死に説明していた。彼女なりに。
「まあ今回もパッと行ってパッと解決すれば良いじゃないか、お待ちどう!」
俺は手に余る位の量がある料理を机に起き夕飯の支度を整えていた。
「リオ~お前はフィリシアの肩を持つのかよ~。旨い...」
「私も食べようかな」
「私も~」
料理の匂いに鼻を立て、次々と席に着き食事を始めた。
カチャカチャと皿と食器が当たる音と笑い声が響く室内に、『ガチャ』と玄関の扉の鍵が開く音が聞こえてきた。
いつの間にか外は大雨。開かれた扉の先には月も見えない暗雲が立ち込めて、黒いローブを頭から被る彼を隠している。
「ただいま」
濡れたフードを外し、黒く長い髪を書き上げる彼、シリウスの右腕には魔力が帯びた布袋が握られていた。
「お帰り、予定よりも1日早かったーー」
「すまないリオ。やはり、無理だと言われた」
シリウスは俺の話を遮り謝罪を始めた。
「仕方がないさ、もとより覚悟はしていたからな。気を病む必要はない」
自分の左腕に目を向けると、そこに普通の人にはある筈の物が俺には無かった。具体的には肘から少し先、一様曲げ伸ばしは出来るくらいには残っている。
(無理だったか。少し日常生活に問題ある位、でも満足に剣が振るえないとなると...少し寂しいな)
「支度して席着いとけシリウス、今から超速特急でクックるからよ」
「そーだ、そんな暗い顔せず先ず風呂に入って飯食え。詳しい話はそれから」
「わかった」
風呂場に入って行くのを見届けた後、俺は腕を回して、フライパンを手に取った。
◇ ◇ ◇
貯めた冷水を頭にかける。髪がベールを形成し、天井に埋められた魔石の照明の光が遮断される。
暗く、暗く、暗く。
何度も俯いては目を閉じる。
何度も、何度も、冷水を被る。
頭だけは冷えなかった。
冷水も、降り注ぐ嵐も、時間でさえ後悔は流せない。
風呂場には湯気などなく、淀んだ雰囲気が充満して顔を真顔にさせている。
(湯に浸かる気にはなれんな)
蓋ではなく出口の取っ手に手をかける。
「しっかり肩まで浸かって百数えなさいよ~‼」
「どこの超能力者だあいつは」
落ち着いた女性の声、何か口に含んだ歯が抜けた様な喋り方は亡き母を思い出させるよう。
はあっ、と軽い吐息をついて手を下ろす。
◇ ◇ ◇
「出たぞ」
湯気が充満し息がしずらい部屋から出ると、机を囲む四人の仲間が見えた。
「リオ、ソルヴィアはいないのか?」
「やることがある、って言って部屋に籠りっきりよ」
「そうか」
リオは両手を大きく広げ口角を上げているが、首と薄く開いた目はリオの後ろにある扉を気にしているようだった。
「まあさっさとご飯食べて、大事なお話はそれからよ」
皿の上に鎮座する肉や野菜の数々をすぐに平らげ食器を下げる。戻り垂れたソースを拭くと煙たい雰囲気が立ち込めているのがわかった。
「それじゃ早速本題ね、聖女からの命令は『竜モドキが宇宙から襲来するから助けて‼』だそう」
「モドキつったらスライムなんかが当たんのか?」
ぶりっ子上目遣い姿の聖女を装うフィリシアを他所にイルムは退屈なのか、頬杖とため息をついていた。
「竜モドキとしか言われてないからね~、正体不明、真相はまた今度ってね」
「今更何が来たってな。救国の英雄だ、狂戦士だ、孤独剣闘士だ。それに龍殺しだっている。俺ら四人が揃ったら敵なしだ」
「ふふんっ‼」
「「なぜお前らはその異名で誇れんだ...」」
「えっ、二人とも何か言った?てか明日には聖教国に到着しろってさ」
「「「それを早く言え‼‼」」」
イルムも加わった突っ込みは汚いハーモニーがあった。




