聖女 プロローグ
ミナが勇者に任命したことを知った、数週間前の聖教国にある大聖堂。
星が夜空に満面に広がる今日、聖教国の聖女は宇宙からの侵略者を神託にて検知した。
仰々しく、禍々しく、この世の物とは思えない龍の形をしたそれは闇を纏っていた。いや闇そのものが龍という存在を形作っているのかもしれない。それから発せられる魔力の危険性を生物としての本能で感じとった。
生物としての格の強者弱者の覆し用のない差。
縮こまるしか出来ない理不尽に目尻が熱くなる。
また神託はとある可能性も示してくれた。
「侵略者――星を喰らおうとする愚かな龍モドキども。
二人の勇者を立役者とし、全戦力をもって抹殺せよ。
さすれば危機は乗り越えられるであろう」
「侵略者いや星を喰らおうとする愚かなる矮小な龍モドキら。二人の勇者を立役者にし、全戦力を持って抹殺せよ。さすれば危機は乗り越えられるであろう」と。
そして同時にとある「未来」示された。
神託は絶対、神託は星の創意、すなわち我らが母の意思。
だが筆舌尽くしがたい光景を見た聖女は教会のステンドグラスを通した赤い月の光に照らされ悶え苦しんだ。
聖女が見たものは、魅せられたものは数多の世界線。
血が目を覆い手で塞ぎたくなる光景に膝から力が抜け、強ばった筋肉によって呼吸すらままならない。
一瞬の内に三ヶ月もの時間を体験し今にも倒れそうな聖女は、最後の力を振り絞り喉を開き、自分を介抱する侍従へと伝える。
「大陸一の戦士イルムとアアル王国の赤髪のメイドを直ぐにでも連れてきて。あの二人が邪竜討伐に最も近い...あっ」
しかし、なぜ精霊様は只のメイドなんかを……
聖女はその言葉を紡いだ瞬間、役目を終えたかのように倒れた。




