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神力の少年兵  作者: 夢野楽人
第二章 動乱編

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南部の開拓


 ガタンゴトン


 俺は屋根も窓もないむき出しの列車に揺られ、風を受けながら外を眺めていた。

 人工の建物は何一つなく、左右には果てしない草原が広がり、遠くには緩やかな山並みが連なっていた。

 上を見上げれば青空が広がり、鳥がゆったりと旋回していた。


 捕って食ったら美味いだろうか?


 ……やばいな、食うことばっかり考えてしまう。少しは風情を楽しもう。

 周りにいる女達は笑っていた。どうやら口に出ていたらしい。



 俺達は建設中の南の基地へと向かっていた。もともと視察に出向く予定だったが、不測の事態が起きたので、急ぎ向かうことにした。


 ようやく単線が開通し、電気専用レールも引いたので、機関車を動かすには問題ない。

 しかし客車や貨車がまだ製造中なので、平台車の上に格子柵をつけ椅子を乗せ、無理矢理走らせることにした。


 強風が体を打ちつけてくるが、南へ進んでいるので寒さは感じなかった。

 ただ風にあおられるため、食事は取りづらく、地図を広げることもできない。


 快適な旅ではないにも関わらず、同行希望者は後を絶たなかった。


「絶対にイキます!」


 仕事真面目なのは分かるが、女達からは鬼気迫るものが感じられた。なぜだろう?


 志乃と静香は笑いながら言う。


「司令が出向くからには、お一人で行かせるわけにはいきません。万が一に備える必要があります。親衛隊メンバーならなおのこと」


「みんな少しでも、アラシの近くにいたいからな。色んな意味で」


「そうか……」


 部隊管理は二人に任せてあるが……親衛隊はなかったはず。

 たぶん有志が集まってできた、同好会のようなものだろう。気にしなくていいんだが、俺に恩を感じてる者は多い。

 ファン倶楽部と思えば、気持ちも分からなくもない。ここは成り行きに任せよう。


 しかしその活動目的はある意味で恐ろしく、俺はまだそれを知らなかった……。


 こうして抽選と選抜によって七十名ほどが選ばれた。機甲羽衣と物資も乗せて基地へ運んでいく。

 武器を持っていくのは身を守るためだ。


 無線で報告を聞いたところ、攻撃を受けたらしく、詳しい話は南基地で聞くことになるだろう。


 昼休憩した後、夕方には到着した。やはり列車は速い。


 基地と言っても生活インフラが最低限あるだけで、あとはプレハブが並んでおり、今までの駐屯地と変わりなかった。


 防衛面はまだ不十分だが、食料と水には困っていない。大型の冷蔵保管庫と浄水器があるからな。仮設トイレも問題ない。


「各員、テント設営にかかれ!」

「了解!」


 大人数が泊まれる場所はなく野営となる。炊事班も動きだして、かまどと炊事場が組まれていく。

 手慣れたもので、無駄なく飯の準備が進められていった。


 この間に俺は現場指揮官から話を聞いていた。元は静香らの上官だが、今は小隊長格なので腰は低い。

 本部を離れてから日が経ち、元部下とのわだかまりも薄れつつあった。


 遺恨抜きにしても、集団だともめ事は必ず起きる。

 怒りが再燃すると暴力沙汰になるので、やはり顔を合わせないのが一番だな。


「それで何が起きた」


「はっ! 我らは機甲羽衣で密林に入り、ゴム・香辛料・果物・鉱物などを発見しました。資源探索は順調で、収集部隊の増員をお願いするところでした。そして奥にまで足を運び、司令がお望みの稲を発見したとこで、何者かの襲撃を受けました」


「それで被害は?」


「攻撃で機甲羽衣がひしゃげたものの、怪我はありませんでした。敵は素早く森の中を移動し、その姿を捉えることはできませんでした。無駄な交戦はせず撤退にいたりました。敵の追撃はありませんでした」


「いい判断だ。地の利は向こうにあるからな、犠牲がでなくて何より」


「ありがとうございます」


「じゃあ、明日にでも現場に行ってみるとしよう」

「ご案内いたします」


 あとは俺の歓迎を兼ねた夕食会となった。

 採集されて食事に出されたトロピカルフルーツは、滅茶苦茶美味かった。


 これで女達の目の色が変わる。


「これは美味いであります! もっと果実が欲しいであります! 他のみんなにもあげないと!」


「あたいが採ってきてやるぜ、月城。邪魔する奴は皆殺しだー!」


「……紅美は悪者、悪役軍曹。はむはむ」


「少し前までは草をむしり、木の皮をかじっていたのに、ずいぶん贅沢になったものだ。しかしこれは病みつきになりますね、静香様」


「ああそれも、全部アラシのおかげだ」


 全員がフルーツをむしゃむしゃと食べて、夢中になっている。

 士気は高まり、欲望に満ちた闘気が立ち上っているかのようだった。


 女の方が美味さを感じやすいので、甘い物には目がなく、それが近くにあるとなれば我慢できるわけもない……これは抑えられんな。



 次の日。


 朝飯を食って訓示の後、俺達は出発する。

 武器は対人用の短機関銃(SMG)と自動拳銃で、足場も視界も悪いので、機動力を優先する。

 最悪味方に誤射しても、機甲羽衣を着てるから被害はでないだろう。


 敵は撃ってこなかったようで、銃はないと見た。人かどうかも怪しい。


 ゴリラのような類人猿だったら、凄い力を発揮するからな。機甲羽衣を潰しても不思議ではない。

 野生動物なら大した脅威ではないので、仲間達は気にも留めず、それよりもフルーツ集めに真剣になっていた。


 全員大きな背嚢を持ってきていて、採る気満々。


 各部隊は散会して密林を進み、行く手を阻む木々をチェーンソーで切り倒していく。

 すでに開墾作業に入っている。自然破壊はしかたない。


「邪魔な毒蛇だ、えい!」


 普段は怖がっているのに、物ともせずに踏み潰した。

 機甲羽衣を着てるから蛭にビビることもない。食欲が恐怖を押しのけていた。


 フルーツ採集を妨害するものは、何であろうと排除!


 紅美のやばい台詞が体現されている。その当人は大蛇と格闘していた……。

 果実を採ってる最中に、巻き付かれたらしい。


「邪魔しやがってこの野郎! 叩き殺してやる!」

「……いけいけ、ゴリラ」


 尻尾を掴んで投げ飛ばし、何度も木に叩きつけて大蛇にダメージを与えた。

 動かなくなったところで、巨体を踏みつけて電磁ナイフを頭に突き刺した。

 これで大蛇は絶命し、紅美はドラミングしながら勝ち鬨を上げた。


「よっしゃあああ! ざまあみやがれ!」


「おー!」


 周囲の兵達は巻き込まれたくなかったので、遠目から見ていた。俺も手は出さなかった。

 笑い半分、冷やかし半分の拍手がパチパチとなる。


 こうして紅美は、「蛇殺しの雌ゴリラ」と呼ばれることになる。体もでかいしな。


 休憩を挟みながら探索するも、初日は何事もなく終わり、夕方には俺達は撤収した。

 夜は流石に危険だからな。


 その様子を密林の奥から見てる、何者かの気配に気づくことはなかった。

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