モノローグ サラ4
不快な会談のあと、私達は少し過激になったかもしれません。
それはリジーの提案でした。
「なあ姉貴、雑魚を始末したら幹部と司令官を取っ捕まえて、被害者達に引き渡したらいいんじゃねえか?」
「それで報復させるのね? リジー姉さん、こわーい。私達に殺されるより苦しむかも」
「いいわねリジー、これからそうしましょう。その動画が出回れば、屑どもは眠れなくなるでしょうね」
その結果は想像以上でした。
恨みに燃えた民衆によって、指令官達は惨たらしく殺されることになります。
同情はしません。民に酷いことをしてきたので当然の報いです。
これに触発され各惑星でレジスタンス活動が活発になり、軍閥はその鎮圧に手を焼くことになりました。
私達は奪った武器を流して協力し、レジスタンス同士の仲介をしながら、着実に軍閥を弱体化させていきます。
リジーのナイスアイデアで、私達の復讐は思いのほか早く進み、軍は恐怖でガタガタと震えてるでしょう。
ざまあみろ!
そんな中、なんと帝国からの接触がありました。ネットから非公式の会談を、申し込まれたのです。
帝国も大災害から攻めてこなくなったので、かなりの被害を受けたはずですが、もし再び侵攻してくるなら、私達も対応を考えねばなりません。
話の内容はともかく会ってみることにします。指定してきた場所は中立惑星のメモリア。
そこは私達が隊長と再び会った場所で、かつて野戦病院があった所です。
「お姉ちゃん、これって……」
「ええ、ここを知ってるのは……」
「ん?」
相手は先に来ていました。
降下艇が着陸していて、その前にテーブルと椅子が用意されてます。
大型パラソルの下で、優雅にお茶を飲んでるのはドレスを着た少女? 仮面をつけてるのでよく分かりません。
ただ、その側にいるメイドさんには見覚えがあります。
私達もトラックを止めて降り、近づくと椅子を勧められました。
「どうぞおかけください」
私達が座るとメイドさんは、カップに紅茶を注いでいきました。
いい香りが漂い、飲むと懐かしい記憶が蘇ります。もう招待した者の正体は分かっていました。
ただ、困ったことにリジーは気づいてません。鋭い時と鈍い時の落差が大きい。
仮面少女は挨拶してきます。
「この度は会談に応じてくださり、ありがとうございます。私はネメシス光星帝国皇妹、クラリス・ステラ・アストリアと申します。お久しぶりね、お姉ちゃん達、ルナ。会えてうれしいわ!」
クラリスは仮面を外して微笑みました。あれから成長してますが昔の面影があります。
ルナは親友との再会に大喜び。
「ええ、ほんとに」
「私も嬉しいわ! クラリス」
「ええっ! クラリスだったのかよ⁈」
これには思わず笑ってしまいました。そして、クラリスは身の上話を始めます。
「……四年前、帝国で皇帝の後継者争いがあったの。私なんて皇位継承のはるか末席なのに、命を狙われたわ。それで侍女のミレーユと皇宮からこの惑星へ逃げ込んだのだけれど、刺客に見つかってしまい、ミレーユは私を庇って重傷を負ったわ。刺客に囲まれてもう駄目だと思ったその時、颯爽と現れて救ってくれたのが、嵐お兄ちゃんよ」
「そうだったんだ。助けられたのは私達と同じね」
「正にお伽話の王子様。それから間もなく皇位継承争いは終わったわ。だまし合いと暗殺合戦や艦隊戦の果てに相討ちになって、残ったのは私とカイゼル兄様だけ。実に馬鹿らしい争いだったわ。それから母方の叔父のもとに身を寄せて、そして兄様が皇帝になったわ」
「そんな事情があったのね? 大変だったわね、クラリス」
「ありがとう、ルナ。でも私は謝らなくちゃいけないことがあるの……それから私は兄様の相談役になり、戦略を立てて共和国と戦ったわ。助言がたまたま上手くいってしまい、今では参謀長よ。ルナやお兄ちゃんのいる傭兵団を、攻撃しないように厳命したわ」
「ああそれで、私達が帝国軍と対峙する機会が減ってたのね。仕事は防衛だけだし」
「ええ、サラお姉ちゃん。みんなと戦ったら犠牲が増えるだけだから。負けが続いて共和国は停戦を申し出てきたわ。それで私は、嵐お兄ちゃんとお姉ちゃん達を帝国に迎え入れようと思ったの。ルナと一緒に平和に暮らしたかった。ただ恩を返したかっただけなのに……こんなことになってしまってごめんなさい」
クラリスは謝ってきました。
交渉の行き違いで話がこじれたのでしょう。伝言ゲームに認知バイアスが加わると、話は悪い方向へと進んでしまう。
まして共和国の悪徳政治家達は、事実をねじ曲げるのが得意だから。
優しいクラリスとは真逆。
「クラリスのせいじゃないわ。宇宙がこうなったのも、全部アカスリのせいよ!」
「そうだそうだ、あの狂人野郎が悪い! 絶対見つけて焼き殺してやる!」
ルナは吐き捨てるように言い、リジーは憤ります。
私も気持ちは同じですが、感情を抑えて質問します。
「それでクラリス、私達を呼んだ理由――――⁈」
「これは⁈」
「まさか⁈」
私達は驚いて固まってしまいます。それだけ衝撃的なことが起きたのです。
クラリスは不安そうな顔で、心配してくれました。
「どうしたのみんな? 大丈夫、ルナ⁈」
「……聞こえたの……声は違うけど、これは嵐お兄ちゃんだわ!」
「あたいも微かだけど聞こえた!」
「これは隊長からの念話!」
「ええええええ!」
「生きてた! お兄ちゃんは生きてたわー‼」
ルナは大声で叫びました。
隊長が生きていると知り、私達は歓喜して抱き合って喜びました。嬉し涙がこぼれて止まりません。
メイドのミレーユさんも輪に加わっています。彼女も隊長に救われた身ですから、きっと慕っていたのでしょう。
落ち着いたあと、ルナが念話の内容を詳しく語ります。
私も少ししか声を聞き取れなかったので、血を貰っているルナの方が、隊長と深くつながっているようです。
『三人が無事であることを祈る。俺は記憶を失ったが、生きてる――嵐』
これを聞いて、また涙がこぼれてしまいます。
自分のことより私達を心配してるのですから、隊長は変わってない。
「あと声が、子供のようだったわね」
「記憶をなくしたようですし、何か起きたのでしょう。それでも構わない。生きていてさえくれれば」
「そうだな姉貴」
「それでは一緒に、嵐お兄ちゃんを捜しましょう。実はそのつもりで、みんなを呼んだのよ。まあ他にもあるけどね」
「なるほどな、帝国の力を借りれるとなれば心強い。共和国なんぞと手を組むより、1000倍マシだわ」
「念話が飛ばされた位置は大体わかるけど、お兄ちゃんの居場所を捜すのは大変かも」
「それでは私達も隊長に念話を送ってみましょう。場所を聞ければいいですが、何か手掛かりになる物があれば、それを頼りに動きましょう」
「うん! お姉ちゃん」
私達は手を重ね合わせて思いを込めました。サフラン達も加わります。
超能力者でなくとも、強く願えばその思いはきっと届くはずです。
それから私達はサフランと一日中話し合い、同盟を結ぶことになりました。
皇族であり、しかも帝国軍の参謀長となれば、これほど心強い味方は他におらず、共和国を敵とする点でも一致しています。
ただ帝国の内情を聞くと、先の内乱と今回の大災害の影響で、国力は大きく低下してるそうです。
「それでも封建制のおかげで、共和国のように軍閥化しなかっただけ、まだマシよ。惑星領主達も復興に追われて、反乱を起こしている余裕はないから……一部を除くけど」
「やっぱりどこも大変ね、クラリス」
「それもこれも全部アカスリが悪い!」
「うんうん!」
そして夜には一緒に夕食をとり、ルナとクラリスは一緒のテントで寝ました。
話題は尽きず、親友と一晩中語り合ったようです。
ただクラリスは隊長を婿にする気だったようで、それでルナとは喧嘩になりました。くすくす。
ミレーユさんも狙っていて、ライバルは多そうです。やれやれ。
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