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神力の少年兵  作者: 夢野楽人
第二章 動乱編

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モノローグ サラ4

 不快な会談のあと、私達は少し過激になったかもしれません。


 それはリジーの提案でした。


「なあ姉貴、雑魚を始末したら幹部と司令官を取っ捕まえて、被害者達に引き渡したらいいんじゃねえか?」


「それで報復させるのね? リジー姉さん、こわーい。私達に殺されるより苦しむかも」


「いいわねリジー、これからそうしましょう。その動画が出回れば、屑どもは眠れなくなるでしょうね」


 その結果は想像以上でした。

 恨みに燃えた民衆によって、指令官達は惨たらしく殺されることになります。

 同情はしません。民に酷いことをしてきたので当然の報いです。


 これに触発され各惑星でレジスタンス活動が活発になり、軍閥はその鎮圧に手を焼くことになりました。

 私達は奪った武器を流して協力し、レジスタンス同士の仲介をしながら、着実に軍閥を弱体化させていきます。


 リジーのナイスアイデアで、私達の復讐は思いのほか早く進み、軍は恐怖でガタガタと震えてるでしょう。


 ざまあみろ!



 そんな中、なんと帝国からの接触がありました。ネットから非公式の会談を、申し込まれたのです。


 帝国も大災害から攻めてこなくなったので、かなりの被害を受けたはずですが、もし再び侵攻してくるなら、私達も対応を考えねばなりません。


 話の内容はともかく会ってみることにします。指定してきた場所は中立惑星のメモリア。


 そこは私達が隊長と再び会った場所で、かつて野戦病院があった所です。


「お姉ちゃん、これって……」

「ええ、ここを知ってるのは……」

「ん?」


 相手は先に来ていました。

 降下艇が着陸していて、その前にテーブルと椅子が用意されてます。


挿絵(By みてみん)


 大型パラソルの下で、優雅にお茶を飲んでるのはドレスを着た少女? 仮面をつけてるのでよく分かりません。


 ただ、その側にいるメイドさんには見覚えがあります。

 私達もトラックを止めて降り、近づくと椅子を勧められました。


「どうぞおかけください」


 私達が座るとメイドさんは、カップに紅茶を注いでいきました。

 いい香りが漂い、飲むと懐かしい記憶が蘇ります。もう招待した者の正体は分かっていました。


 ただ、困ったことにリジーは気づいてません。鋭い時と鈍い時の落差が大きい。


 仮面少女は挨拶してきます。


「この度は会談に応じてくださり、ありがとうございます。私はネメシス光星帝国皇妹、クラリス・ステラ・アストリアと申します。お久しぶりね、お姉ちゃん達、ルナ。会えてうれしいわ!」


 クラリスは仮面を外して微笑みました。あれから成長してますが昔の面影があります。

 ルナは親友との再会に大喜び。


「ええ、ほんとに」

「私も嬉しいわ! クラリス」

「ええっ! クラリスだったのかよ⁈」


 これには思わず笑ってしまいました。そして、クラリスは身の上話を始めます。


「……四年前、帝国で皇帝の後継者争いがあったの。私なんて皇位継承のはるか末席なのに、命を狙われたわ。それで侍女のミレーユと皇宮からこの惑星へ逃げ込んだのだけれど、刺客に見つかってしまい、ミレーユは私を庇って重傷を負ったわ。刺客に囲まれてもう駄目だと思ったその時、颯爽と現れて救ってくれたのが、嵐お兄ちゃんよ」


「そうだったんだ。助けられたのは私達と同じね」


「正にお伽話の王子様。それから間もなく皇位継承争いは終わったわ。だまし合いと暗殺合戦や艦隊戦の果てに相討ちになって、残ったのは私とカイゼル兄様だけ。実に馬鹿らしい争いだったわ。それから母方の叔父のもとに身を寄せて、そして兄様が皇帝になったわ」


「そんな事情があったのね? 大変だったわね、クラリス」


「ありがとう、ルナ。でも私は謝らなくちゃいけないことがあるの……それから私は兄様の相談役になり、戦略を立てて共和国と戦ったわ。助言がたまたま上手くいってしまい、今では参謀長よ。ルナやお兄ちゃんのいる傭兵団を、攻撃しないように厳命したわ」


「ああそれで、私達が帝国軍と対峙する機会が減ってたのね。仕事は防衛だけだし」


「ええ、サラお姉ちゃん。みんなと戦ったら犠牲が増えるだけだから。負けが続いて共和国は停戦を申し出てきたわ。それで私は、嵐お兄ちゃんとお姉ちゃん達を帝国に迎え入れようと思ったの。ルナと一緒に平和に暮らしたかった。ただ恩を返したかっただけなのに……こんなことになってしまってごめんなさい」


 クラリスは謝ってきました。

 交渉の行き違いで話がこじれたのでしょう。伝言ゲームに認知バイアスが加わると、話は悪い方向へと進んでしまう。


 まして共和国の悪徳政治家達は、事実をねじ曲げるのが得意だから。

 優しいクラリスとは真逆。


「クラリスのせいじゃないわ。宇宙がこうなったのも、全部アカスリのせいよ!」

「そうだそうだ、あの狂人野郎が悪い! 絶対見つけて焼き殺してやる!」


 ルナは吐き捨てるように言い、リジーは憤ります。

 私も気持ちは同じですが、感情を抑えて質問します。


「それでクラリス、私達を呼んだ理由――――⁈」


「これは⁈」


「まさか⁈」


 私達は驚いて固まってしまいます。それだけ衝撃的なことが起きたのです。

 クラリスは不安そうな顔で、心配してくれました。


「どうしたのみんな? 大丈夫、ルナ⁈」


「……聞こえたの……声は違うけど、これは嵐お兄ちゃんだわ!」


「あたいも微かだけど聞こえた!」


「これは隊長からの念話テレパシー!」


「ええええええ!」


「生きてた! お兄ちゃんは生きてたわー‼」


 ルナは大声で叫びました。

 隊長が生きていると知り、私達は歓喜して抱き合って喜びました。嬉し涙がこぼれて止まりません。

 メイドのミレーユさんも輪に加わっています。彼女も隊長に救われた身ですから、きっと慕っていたのでしょう。


 落ち着いたあと、ルナが念話の内容を詳しく語ります。

 私も少ししか声を聞き取れなかったので、血を貰っているルナの方が、隊長と深くつながっているようです。


『三人が無事であることを祈る。俺は記憶を失ったが、生きてる――嵐』


 これを聞いて、また涙がこぼれてしまいます。

 自分のことより私達を心配してるのですから、隊長は変わってない。


「あと声が、子供のようだったわね」


「記憶をなくしたようですし、何か起きたのでしょう。それでも構わない。生きていてさえくれれば」


「そうだな姉貴」


「それでは一緒に、嵐お兄ちゃんを捜しましょう。実はそのつもりで、みんなを呼んだのよ。まあ他にもあるけどね」


「なるほどな、帝国の力を借りれるとなれば心強い。共和国なんぞと手を組むより、1000倍マシだわ」


「念話が飛ばされた位置は大体わかるけど、お兄ちゃんの居場所を捜すのは大変かも」


「それでは私達も隊長に念話を送ってみましょう。場所を聞ければいいですが、何か手掛かりになる物があれば、それを頼りに動きましょう」


「うん! お姉ちゃん」


 私達は手を重ね合わせて思いを込めました。サフラン達も加わります。

 超能力者でなくとも、強く願えばその思いはきっと届くはずです。



 それから私達はサフランと一日中話し合い、同盟を結ぶことになりました。

 皇族であり、しかも帝国軍の参謀長となれば、これほど心強い味方は他におらず、共和国を敵とする点でも一致しています。


 ただ帝国の内情を聞くと、先の内乱と今回の大災害の影響で、国力は大きく低下してるそうです。


「それでも封建制のおかげで、共和国のように軍閥化しなかっただけ、まだマシよ。惑星領主達も復興に追われて、反乱を起こしている余裕はないから……一部を除くけど」


「やっぱりどこも大変ね、クラリス」

「それもこれも全部アカスリが悪い!」

「うんうん!」


 そして夜には一緒に夕食をとり、ルナとクラリスは一緒のテントで寝ました。

 話題は尽きず、親友と一晩中語り合ったようです。


 ただクラリスは隊長を婿にする気だったようで、それでルナとは喧嘩になりました。くすくす。

 ミレーユさんも狙っていて、ライバルは多そうです。やれやれ。

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