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神力の少年兵  作者: 夢野楽人
第二章 動乱編

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モノローグ サラ3

 私達はいつものように依頼を受け、その街に蔓延はびこっていたダニ(・・)を退治しました。もちろん独立連合共和国の軍隊です。


 倒しても倒しても、きりがありません。潰えぬ悪はゴキブリのように沸いて出てくる。

 盗賊と変わらない兵士達は地道に働こうとはせず、武器で脅して他人から奪うことしかしません。

 守るべき民から搾取してる軍を放置してる共和国など、腐った国家でしかない。


 連合政府は「宇宙最高峰の民主政治!」という御立派なスローガンを掲げておいて、被災惑星の救済すら行っていないのだから、政治家はゴミ以下です。


 ただ世の中には利己的な人だけでなく、嵐隊長のように利他的な人もいます。

 無私の心で危険もいとわず、無法者から弱者を守る姿を見て深く感動し、私達もまた人々の希望になろうと心に誓ったのです。



 仕事が終わってファミリー号に戻ろうとしたところ、声をかけられました。


「天馬団の皆さん、どうかお話をさせてくださーい!」


 見ればスーツ姿の男性が白旗を振っていました。私達は身構えます。

 仕事の依頼であればローカルネットの窓口を通し、内容を確認した上で引き受けます。

 しかし、交渉を拒絶している相手と会うつもりはありません。


 それは怨敵である、独立連合共和国。


「お姉ちゃん、伏兵のたぐいはいないわ。遠くに随員はいるようだけど」

「そう、私達が無視してるから直接交渉にきたようね」

「無視しようぜ姉貴。なんなら、あたいが焼き払ってやろうか?」


「おやめなさいリジー。彼を殺したら私達が悪者よ。私に考えがあるわ、ひとまず話をしてみましょう。ルナ……をお願い」


「分かったわ、お姉ちゃん。うふふふふ」

「はははは! なるほどな、流石は姉貴だぜ」

「とりあえず交渉したという、アリバイ作りよ」


 私達はひとしきり笑ってから、スーツ男と話すことにしました。

 朽ちたオープンカフェのテーブルで向かい合います。この辺りは廃墟で誰もおらず、どこの惑星も似た有様です。

 男は名刺を出しながら、自己紹介してきました。


「私、ネヴィル・ナマクラと申します。独立連合共和国の外交官でございます。このたびは交渉役として参りました。本日はお時間を頂き、誠にありがとうございます」


 姉妹達は冷ややかな視線で男を見ていました。

 私は挨拶もせずに問いただします。押しかけてきた者に礼を尽くすつもりはありません。


「そう、それでそっちの要望は? 無駄話をする気はないわ。忙しいので手短に」


「は、はい。あのう、そのう……できれば、共和国軍への攻撃を控えて頂きたいのですが」


 男は冷や汗をハンカチで拭っていました。私達が恐ろしいのでしょう。

 その気になれば瞬殺できますからね。


「いいですよ」


「ほっ」


「ただし! 政府が全ての軍閥を処罰し、各惑星に賠償することが条件です。そもそも最高評議長が不在では話になりませんね。共和国を代表する者がいなければ、交渉する意味もないし、約束しても守られないでしょう」


「う……一応、議長代理が選出されております。申し訳ありませんが、その要求には応じられません、です」


 男は一瞬だけ喜んだものの、それが甘い期待だったことに気づいたようだ。

 私は畳かける。


「そう、じゃあ条件を変えましょう。アカスリ最高評議長の首……と言いたいとこですが、逃げた者は仕方ないですね。いずれ見つけて殺します。その代わりに軍の総司令官と、艦隊司令だったアノ女の処刑を私達は望みます。この大災害の元凶ですからね。公開処刑してくれたら、軍への攻撃を即止めましょう」


「うんうん」

「それ、いいな姉貴。くくくくく」


「そ、それは……ちょっと……」


 笑う妹達とは反対に、男の顔から血の気が引いてました。とても飲めない条件なのは分かっています。

 この状況下で軍のトップがいなくなれば、国はガタガタになってしまうから。


 ただ私は宇宙の民に代わって、その声を大便……ではなく代弁しているにすぎません。

 アカスリと同じくらい軍は恨まれてます。私は大げさにため息をつく。


「ふー、あれも駄目、これもダメでは話にもなりませんね。それでは最後の要求です。これも受け入れないのであれば、お引き取りください」


「……はい」


「それは、我らが隊長である天馬嵐の捜索です。全宇宙を隈なく捜して見つけてください。さすれば停戦協定を結んで戦いを止めましょう」


「う……あの……その……」


 話し合いはココまで。最初から何も期待してはいません。

 私達が席を立とうとした時、男は言ってきました。


「お金で何とかなりませんか? 多額の和解金を用意しますので。どうせ、死んでる奴を捜すなんて時間の無駄なので、どうかお願いしますよー」


 男の態度からは、罪悪感も反省も謝罪も感じられませんでした。

 なんでも金で解決できると思ってるようで、私達をなめきっています。話にならない。

 私が罵声を浴びせようとしたところ、ルナの様子を見て慌てます。


 まずい!


「今……何て言ったの⁈」


「いや、だから……とっくにくたばっていると……」


「ふざけるなああああああ! お兄ちゃんは生きてる! 絶対に生きてるわー‼」


「ルナ止め――! リジー!」

「ちっ、馬鹿が! ルナを怒らせやがって!」


「サンダーボルト!」

挿絵(By みてみん)

 ルナが手を伸ばすと稲妻が走り、奥にそびえるビルへ直撃しました。壁は黒焦げになって亀裂が走り、ガラス窓は砕け散って地上に散乱しました。少し遅れて雷鳴が轟きます。


 雷の超能力を使ったのはルナです。

 電気信号を操るハッキングが専門ですが、本気になれば容赦なく、一瞬で敵を消し炭にします。

 男が言ったことは最悪でした。ルナは隊長の生存を信じて諦めていないので、それを否定されたら殺意しか沸きません。


 姉妹の中でルナは最強なので、私とリジーでは止めようもない。

 それでも今回は運が良く、最悪の事態だけは避けられました。


「うう、いてててて」


 ナマクラは生きていました。怪我をしたようですが、死ぬよりはマシ。

 これは咄嗟にリジーがテーブルを蹴飛ばして、男を椅子ごと吹っ飛ばし、私は後ろからルナの両肩を掴んで、雷撃を上にそらしたからです。


 あと0.1秒遅れていたら、バカ男の命はなかったでしょう。


「ふー、ふー」

「落ちついてルナ!」


 まだ興奮してるルナをなだめながら、私は男に言います。


「交渉は決裂、もう二度と会うことはないでしょう。議長代理に伝えなさい。地方の軍閥を片付けたら、首星に殴り込んで中央軍を叩き潰すと! 星民を踏みにじってきた報いを、受けてもらいます‼」


 絶句する男を尻目に、私達はこの場を去りました。

 ファミリー号に戻ると、怒りが収まったルナは私達に謝り、コンピュータ作業を始めました。


 ある仕事を頼んでいて、これで独立連合共和国は大きく揺らぐことになります。

お読みいただきありがとうございます。この作品がお気に召しましたら


ブックマークと★評価よろしくお願いします。

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