モノローグ サラ3
私達はいつものように依頼を受け、その街に蔓延っていたダニを退治しました。もちろん独立連合共和国の軍隊です。
倒しても倒しても、きりがありません。潰えぬ悪はゴキブリのように沸いて出てくる。
盗賊と変わらない兵士達は地道に働こうとはせず、武器で脅して他人から奪うことしかしません。
守るべき民から搾取してる軍を放置してる共和国など、腐った国家でしかない。
連合政府は「宇宙最高峰の民主政治!」という御立派なスローガンを掲げておいて、被災惑星の救済すら行っていないのだから、政治家はゴミ以下です。
ただ世の中には利己的な人だけでなく、嵐隊長のように利他的な人もいます。
無私の心で危険もいとわず、無法者から弱者を守る姿を見て深く感動し、私達もまた人々の希望になろうと心に誓ったのです。
仕事が終わってファミリー号に戻ろうとしたところ、声をかけられました。
「天馬団の皆さん、どうかお話をさせてくださーい!」
見ればスーツ姿の男性が白旗を振っていました。私達は身構えます。
仕事の依頼であればローカルネットの窓口を通し、内容を確認した上で引き受けます。
しかし、交渉を拒絶している相手と会うつもりはありません。
それは怨敵である、独立連合共和国。
「お姉ちゃん、伏兵のたぐいはいないわ。遠くに随員はいるようだけど」
「そう、私達が無視してるから直接交渉にきたようね」
「無視しようぜ姉貴。なんなら、あたいが焼き払ってやろうか?」
「おやめなさいリジー。彼を殺したら私達が悪者よ。私に考えがあるわ、ひとまず話をしてみましょう。ルナ……をお願い」
「分かったわ、お姉ちゃん。うふふふふ」
「はははは! なるほどな、流石は姉貴だぜ」
「とりあえず交渉したという、アリバイ作りよ」
私達はひとしきり笑ってから、スーツ男と話すことにしました。
朽ちたオープンカフェのテーブルで向かい合います。この辺りは廃墟で誰もおらず、どこの惑星も似た有様です。
男は名刺を出しながら、自己紹介してきました。
「私、ネヴィル・ナマクラと申します。独立連合共和国の外交官でございます。このたびは交渉役として参りました。本日はお時間を頂き、誠にありがとうございます」
姉妹達は冷ややかな視線で男を見ていました。
私は挨拶もせずに問いただします。押しかけてきた者に礼を尽くすつもりはありません。
「そう、それでそっちの要望は? 無駄話をする気はないわ。忙しいので手短に」
「は、はい。あのう、そのう……できれば、共和国軍への攻撃を控えて頂きたいのですが」
男は冷や汗をハンカチで拭っていました。私達が恐ろしいのでしょう。
その気になれば瞬殺できますからね。
「いいですよ」
「ほっ」
「ただし! 政府が全ての軍閥を処罰し、各惑星に賠償することが条件です。そもそも最高評議長が不在では話になりませんね。共和国を代表する者がいなければ、交渉する意味もないし、約束しても守られないでしょう」
「う……一応、議長代理が選出されております。申し訳ありませんが、その要求には応じられません、です」
男は一瞬だけ喜んだものの、それが甘い期待だったことに気づいたようだ。
私は畳かける。
「そう、じゃあ条件を変えましょう。アカスリ最高評議長の首……と言いたいとこですが、逃げた者は仕方ないですね。いずれ見つけて殺します。その代わりに軍の総司令官と、艦隊司令だったアノ女の処刑を私達は望みます。この大災害の元凶ですからね。公開処刑してくれたら、軍への攻撃を即止めましょう」
「うんうん」
「それ、いいな姉貴。くくくくく」
「そ、それは……ちょっと……」
笑う妹達とは反対に、男の顔から血の気が引いてました。とても飲めない条件なのは分かっています。
この状況下で軍のトップがいなくなれば、国はガタガタになってしまうから。
ただ私は宇宙の民に代わって、その声を大便……ではなく代弁しているにすぎません。
アカスリと同じくらい軍は恨まれてます。私は大げさにため息をつく。
「ふー、あれも駄目、これもダメでは話にもなりませんね。それでは最後の要求です。これも受け入れないのであれば、お引き取りください」
「……はい」
「それは、我らが隊長である天馬嵐の捜索です。全宇宙を隈なく捜して見つけてください。さすれば停戦協定を結んで戦いを止めましょう」
「う……あの……その……」
話し合いはココまで。最初から何も期待してはいません。
私達が席を立とうとした時、男は言ってきました。
「お金で何とかなりませんか? 多額の和解金を用意しますので。どうせ、死んでる奴を捜すなんて時間の無駄なので、どうかお願いしますよー」
男の態度からは、罪悪感も反省も謝罪も感じられませんでした。
なんでも金で解決できると思ってるようで、私達をなめきっています。話にならない。
私が罵声を浴びせようとしたところ、ルナの様子を見て慌てます。
まずい!
「今……何て言ったの⁈」
「いや、だから……とっくにくたばっていると……」
「ふざけるなああああああ! お兄ちゃんは生きてる! 絶対に生きてるわー‼」
「ルナ止め――! リジー!」
「ちっ、馬鹿が! 妹を怒らせやがって!」
「サンダーボルト!」
ルナが手を伸ばすと稲妻が走り、奥にそびえるビルへ直撃しました。壁は黒焦げになって亀裂が走り、ガラス窓は砕け散って地上に散乱しました。少し遅れて雷鳴が轟きます。
雷の超能力を使ったのはルナです。
電気信号を操るハッキングが専門ですが、本気になれば容赦なく、一瞬で敵を消し炭にします。
男が言ったことは最悪でした。ルナは隊長の生存を信じて諦めていないので、それを否定されたら殺意しか沸きません。
姉妹の中でルナは最強なので、私とリジーでは止めようもない。
それでも今回は運が良く、最悪の事態だけは避けられました。
「うう、いてててて」
ナマクラは生きていました。怪我をしたようですが、死ぬよりはマシ。
これは咄嗟にリジーがテーブルを蹴飛ばして、男を椅子ごと吹っ飛ばし、私は後ろからルナの両肩を掴んで、雷撃を上にそらしたからです。
あと0.1秒遅れていたら、バカ男の命はなかったでしょう。
「ふー、ふー」
「落ちついてルナ!」
まだ興奮してるルナをなだめながら、私は男に言います。
「交渉は決裂、もう二度と会うことはないでしょう。議長代理に伝えなさい。地方の軍閥を片付けたら、首星に殴り込んで中央軍を叩き潰すと! 星民を踏みにじってきた報いを、受けてもらいます‼」
絶句する男を尻目に、私達はこの場を去りました。
ファミリー号に戻ると、怒りが収まったルナは私達に謝り、コンピュータ作業を始めました。
ある仕事を頼んでいて、これで独立連合共和国は大きく揺らぐことになります。
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