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神力の少年兵  作者: 夢野楽人
第二章 動乱編

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天女団結成

 ――次の日の昼過ぎ。


 整列した全員の前で俺は演台に立った。

 酒を飲み過ぎて頭を押さえてる奴が多く、軍隊というより二日酔いの集団だ。

 いまいち緊張感にかけるが、予想してたので罰したりはしない。


 そんな中、近くにいる静香と志乃はしっかりしていた。あまり飲まなかったらしい。



「全軍、傾聴!」

 静香の号令のあと俺は語り始める。ピンマイクから拡声器につながってるので、声は全員に届く。


「まず初めに、今までの戦いで犠牲になった兵士達に、哀悼の意を捧げる。鎮魂の慰霊碑を作り、決して忘れぬことを誓おう」


 俺が手を上げて合図をすると、弔砲が空に響き渡った。


「黙祷……」


 しばしの静寂の後、俺は話を続ける。


「さて我らは新たな軍団を名乗ることにする。強いられてきた紅蓮姫団と鐵乙女団は、忌むべき名なので捨てる。古来より羽衣を纏うのは天女だった。よって我らは、天女団だ!」

「うおおおおおおー!」


 大歓声が上がる。

 これが味方からは女神と崇められ、敵からは魔女と恐れられる軍団の始まりだった。


「皆静粛に!」


 騒ぎが収まらなかったので志乃が一喝する。


「獅堂静香と東雲志乃の両名を大隊長に任じ、部隊の再編成を命ずる」


「拝命しました。微力をつくします」

「拝命いたしました。アラシ総司令に忠誠を誓います」


 俺はひざまずいた二人に腕章をつける。仮り物なのであとで正式に作る予定。

 そして訓示を締めくくる。


「最後に今後の方針だが、1に食料、2に食い物、3・4がなくて5に食べ物だ! とにかく食料生産をする。これが無いことには話にならん。生活品も必要だが補給はこないから、自分達で作るしかない。そのために南部に新たな基地を作って探索隊を編成し、資源や食料を発見してもらう」


「了解しました、総司令!」


「……とまあ、建前はここまでだ。ぶっちゃけ肉だけじゃ飽きるから、俺は果物が欲しいんだよ。あと、米食いてえー」


「「「ぶはははははははははは!」」」


 大爆笑が沸き起こる。


「ぷぷぷ――ゴホン! 司令のお言葉を胸に我々は動くぞ。以上、解散!」

「おおおおー!」



 やることは山のようにある。なので大尉になった静香と志乃には、元副司令のアンドロイドを補佐につけることにした。忙しいから利用できる物は何でも使う。


 コンピュータAIに命令されたらムカつくが、二人を副管理者サブマスターに登録したので、今までとは逆に命令する立場になった。


 真実を知った仲間達はAIを嫌っているが、自分達より下になったと思えば溜飲も下がる。


「本当の敵はAIを作った奴らだ」

「分かりました」


 と俺も言い聞かせたので、物に当たることはないだろう。キレて中央制御室をぶっ壊されるとマズいからな。

 部隊の再編も進む。元巴隊の者達を、少尉に任官し隊長にした。

 ただ天音と紅美は断ってくる。


「私は獅堂隊長の元で副官を務めたいです。ずっと、ズッと一緒にいたいです。どうかお願いします!」

「そ、そうか分かった」


 必死に懇願されて静香は断り切れず、俺も許可して階級を准尉から中尉に上げた。


 性癖はともかく能力はあるからな。そして紅美は、


「アタイに隊長が務まるわけねえだろ。だから弥生の下につけてくれ大将」


「……疫病神」


 戦闘力はあるが勝手気ままで、どこの部隊も受け入れたがらず、弥生が引き取るしかなかった。

 紅美を御せるのは弥生くらいだろう。

 その代わりに俺は弥生に上肉を渡し、知識を教えることになった。


 志乃の方も着実に部隊を編成していた。


 部隊は収集・生産・加工・運搬・配給・管理・開発に分かれて仕事をしてもらう。

 それぞれ得手不得手があるので、転属願いは一か月ごとに受けつけることにした。


 そんな中、元軍団の上官達は行き場を失ってしまう。

 食料不足の時に何もしなかったせいで、皆に嫌われてしまっていた。

 彼女らが悪いのではないが感情は抑えられず、人は恨まずにはいられない。無理な命令ばかり出していたからな。

 そこで本部からは離れてもらい、新基地の予定地に赴任させることにした。

 それか調査隊に入ってもらった。そうでもしないと身が危ないので、元上官達はこれを受け入れる。



 あと足りないのは資源で、特に鉄がほしい。全ての基礎になるからな。

 しかし慌てて探す必要はなかった。俺は本部のAIに聞いた。


「ヴァージン大陸の全体地図はあるか? 資源の埋蔵地も教えろ」


「はい人工衛星はありませんが、宇宙船から探査したデータがありますので、全てお渡しします」


 新型のパワードスーツ開発だけでなく、惑星開発する計画もあったようで、宇宙から調査していたようだ。

 その計画を俺達が利用する。すでに調査隊によって鉄鉱石は発見され、無人機による採掘が始まっている。

 実は本部基地の近くに結構な資源があったのだ。立地の段階で計画に織り込んでいたのだろう。


 運ばれた鉄鉱石は重力破砕機にかけて粉々にし、外に作った溶融酸化物電解炉で高温にし、酸素を取り除いて鉄を取り出す。

 重力反応炉があれば電気は使い放題なので、わざわざ高炉を作る必要はない。

 二酸化炭素を出さないので環境にも優しいしな。


 できた鉄で作るのはレール。基地同士を結ぶ鉄道を敷設する予定。

 道路整備も考えたが原油はないし、トラック用の軽油が底をつきかけている。

 バイオディーゼルにするにしても、菜種や大豆を大量生産しなければならず、効率が悪い。


 そこで物資輸送を電車に切り替えることにしたのだ。速度も出るし大人数の部隊も一度に移動できる。

 何より俺が車酔いせずに済む、長距離の神影走は疲れるしな。


 3K作業は無人の機甲羽衣にやらせ、設備建設もAIが昼夜を問わず進めていた。

 人の仕事は機械メンテと作業点検などの安全作業のみで、交代で休日も取れるようにした。


 食料生産も順調だ。


 罠をたくさん設置できるようになったので、俺の狩りの仕事はかなり減った。

 また農園基地にいた家畜を繁殖させて数を増やし、これで牛乳や卵をとれるようになったのは大きい。食材はどんどん増えていく。


「これで色んな料理が作れるであります!」


 炊事兵長の椿は喜んでいた。美味い物が増えれば士気も上がる。

 今まではただ食うだけで、美食を楽しむ余裕などなかったからな。


 ついでに娯楽も教えて、重力レーザープリンタを使い、ダーツやビリヤード・ボードゲームなどの室内遊具を作り、暇な時間に誰でも遊べるようにした。


「これは面白い!」

「楽しい!」


 まあ、ハマり過ぎて仕事をサボる奴が増え、少し問題になってるが。

 俺は東西の本部を半月ごとに移動して視察と指示を行っていた。椅子にふんぞり返って命令するのは嫌いなので、現場で何かあれば駆けつけて超能力で対処した。



 そして月に一度、定例会議を本部で行う。


 各部隊の小隊長を集めて状況を報告してもらい、問題点があればその場で対策を検討する。

 議長の静香と志乃に任せてあるので、俺は特に発言はしない。


「司令、今のとこ大きな問題はありませんが、サボり魔が多いので綱紀粛正に努めます」


「そうか。ただあまり厳しくしないでやってくれ、志乃。今までが地獄だったからな」


「分かりました」


 志乃はくすりと笑う。甘い、と言いたいのだろう。

 次に静香が質問してくる。ため口なのは俺が許可したからで、堅苦しい言い方をされると本音が出にくいからな。

 それに静香にまで畏まられると、心が疲れてしまう。


「それでアラシ。なぜ私達は未だに軍事訓練をしてるんだ? もう戦争は終わったのに」

「そうですね。あの特殊訓練は何なのでしょう?」


「確かに軍団同士の戦いは終わった。しかし敵はいずれやってくる」


「どこから?」


 俺は天を指差して皆に言った。これは予測というより予言に近い。

 聞いた小隊長達は表情かおを引き締めた。

お読みいただきありがとうございます。

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