戦争終結
形こそ違うが鐵乙女団の本部も、分厚い外壁に覆われていた。
重火器で攻撃したところで、びくともしないだろう。とうてい破壊できる代物ではなく、攻略にはからめ手が必要だ。
俺は片手を上げて振り下ろす。
「全軍、凹字陣型」
「了解!」
ドーム本部の正面口を前にして陣を敷いた。
部隊は左翼・中央・右翼の三隊に分かれ、間隔を保って展開する。
中央が厚く主力部隊が集中させた布陣である。
もっとも正面突撃はしないし、端から戦うつもりはなかった。
これは挑発をかねた陣形訓練だった。
「よーし、昼飯を食うぞ! 投降してきた者らに食わせてやれ!」
「了解しました‼」
敵本部の目の前で、俺達は食事会を始めてしまう。隙だらけにも関わらず、本部からの反応は全くなかった。
コンピュータAIも状況は把握しているはずだが、自軍の部隊が降伏してしまってるので、無人の機甲羽衣を戦わせるしかない。
だが戦力はこちらが圧倒的なので、ゲートが開いた瞬間に猛攻を叩き込み、そのまま内部へ雪崩れ込める。
負け確なのは、戦術AIでなくとも分かるはず。ならば籠城するしか手はない。
「食った、食った、美味かった」
「我らも従うぞ。しかし本部は本当に何もしてこないな、むかつく!」
「オラ出てこいや、指令官!」
食後のひとときを過ぎると、降伏した者らが一斉に騒ぎ出す。
ドームに向かってのヤジが止まらない。もうデモだな。
飢えさせられた恨みが怒りとなって爆発したようだ。
流石に暴れられるとマズいので、志乃がメガホンで叫ぶ。
「諸君、まずは落ち着け。私もかつては、紅蓮姫団本部を憎んで恨んだ。だが中枢にいるのは機械だ。人じゃない石ころに、怒りをぶつけても意味はあるまい。それと中には子供らもいるので保護が必要だ。ここは総司令にお任せしよう」
俺は肯いてメガホンを受け取る。
「俺が総司令のテンマ・アラシだ。自己紹介は省く。今から本部を奪取するから、しばらく待機してくれ、以上」
メガホンを志乃に返して、すぐさま動く。
「消えた!」「ど、どこだ⁈」「どうなってる⁈」
「ふっふふふふ、司令はもう正面口にいるぞ」
初めて俺の力を見た者らは驚き、見慣れてる者らは笑っていた。
まずは訪問の挨拶をする。セキュリティ端末に近づいて降伏勧告をする。
「こんにちは、抵抗は無駄なので降伏してください」
『ここは鐵乙女団本部である。許可無き者の……』
「はいはい、安定のテンプレ回答ですね。もう少しひねりが欲しいとこだが、聞いてる暇はない。タイパが悪いからサッサと終わらせるわ」
俺は正面口からドームの横に移動し、等間隔で歩いて距離を測る。
「――18、19、20歩と。ここらだな…………あった」
俺は地面に埋もれていた鉄蓋を見つけた。
それを開けてスイッチを押すと、外壁の一部がスライドしてドアが現れる。
これは非常用の隠し扉で、紅蓮姫団の本部AIから情報を得ていたのだ。
ただしドアには鍵がかかっていて、専用の鍵が必要だが、
「神力解錠」
アナログ鍵なら開けるのは造作もない。
俺はドアを開けて中に入り、梯子を登っていく。このまま司令室まで直行だ。
構造的には紅蓮姫団の本部と大差はなく、中央制御室の少し位置が違うだけで、やることは前と変わりない。
副司令役のアンドロイドを黙らせてから、コンピュータAIの初期化ボタンを押し、管理者登録をするだけだ。
AIが再起動したところで、俺は司令室の無線を使い全軍に通達した。
『全軍に告げる、本部AIは掌握した。これよりメインゲートを開放する。各部隊は作戦通りに突入し、速やかに内部を占拠せよ。子供達の保護を最優先とする、以上』
「了解、全隊突撃!」
「うおおおおおお!」
モニターを見れば、先を争うように部隊が入ってくる。
指示は出しておいたので、あとは任せていいだろう。
俺は中央のエレベーターに乗り、一階へ降りた。扉が開くと、
「アラシ総司令に敬礼!」
いつの間にか左右に兵士達が並んでいて、一斉に敬礼してくる。
俺は命令してないので、静香と志乃が指示をしてたのだろう。
簡易な凱旋式だ。俺は手を振って、ドームの外へと出た。
そして夜には祝勝会。
ココにこられなかった仲間達には無線で伝え、一緒に勝利を祝う。
俺は挨拶と乾杯の音頭を取る。飲めないけどね。
「俺達の勝利だ! そして終戦に乾杯!」
「かんぱーい!」
あとは料理を食って飲んではしゃぐ、もう敵も味方もなく全員が仲間だ。
くだらん戦争はもうおしまい。
本部で助けた女子らは何が起きてるか分からず、オドオドしていたが、前に助けた子供達が面倒を見ていた。
いずれ落ち着くだろう。あー、でも洗脳教育されてるから、まともな教育を受けさせんとあかん。教師が欲しいとこだ。
あと他の者らにも勉学を……!
「大将、なにしけた面してんだー! 一緒に飲もうぜ!」
「ヒック! 軍曹の言うとおりであります。アラシ殿がたくさん酒を、飲むべきでありまーす!」
「ええい、この酔っ払いどもー! 俺はまだ子供だ――――!」
「……少しなら問題ない。ふふふふふ」
「大丈夫です。酔って倒れても、私達がお兄ちゃんを介抱します!」
飲めない女子らは素面のはずなのに、なぜか恐怖を感じてしまう。
まあ次々と俺の元に乱入者がやって来たので、その隙に逃げだし本部内に隠れた。
絡まれると疲れるわ。
「やっぱり一般常識を教える必要があるな……身が持たん」
宴は夜遅くまで続いた。
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