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神力の少年兵  作者: 夢野楽人
第二章 動乱編

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焼き肉作戦

 俺は大部隊を引き連れ、敵部隊の元へ向かっていた。


 例によって無線傍受できるので敵の位置は丸わかり、作戦に支障がなくて済む。

 志乃はトラックの中で嘆いていた。


「私達もこうして裏をかかれたわけですね。通信に対する警戒が全くありませんでした。これからは、暗号通信をしなくてはいけませんね」


「ああ面倒だが、全軍の命に関わるからな。簡単な暗号文を作って、行動パターンを決めよう」

「ええ」


「話は変わるがアラシ、新しい軍団名はどうするんだ?」

「決まってはいるが、鐵乙女団の本部を制圧してから発表しよう」

「分かった」


 敵部隊はこっちの基地を巡って、食料を確保する気だったようだが、何も得られず士気は下がったようだ。何も残してないからな。


 進軍すればするほど減っていくだけ、同時にやる気も失っていく。

 斥候部隊からの報告を受け、敵の糧食が尽きかけた頃に作戦を開始する。


 まずはドローンによる放送攻撃だ。


 上空より拡声器スピーカーを通じて、真実を突きつける。これでかなり動揺するだろう。


 次の日には、ドローンに肉を運ばせてくれてやった。


 敵に塩を送ったわけではなく、仲間割れを誘うのと降伏させる狙いがある。

 これに敵は引っかかり、少ない肉の奪い合いになったようだ。


 次の日の朝には、脱走した兵士達が白旗を掲げて、こっちに向かってきていた。


 すでに受け入れの準備はできており、大鍋にはスープがたくさんあり、焼き肉も作っていた。


 天音がメガホンで勧告する。


「全員の降伏を受け入れる。ただし、武器は捨てて機甲羽衣からは降りてくれ。一緒に朝食を取ろうじゃないか」


「分かった! 飯を食わせてくれ!」


 投降兵達は両手を挙げて一列に並び、食事場へと案内されていく。

 防水布に座って渡された食事を口にすると、感極まって泣いてしまう。


「うう、生きてて良かった!」

「……美味しい、もう思い残すことはない」


 毎度のことながら、空腹は死ぬより辛いかもしれん。

 降伏した者らを、元捕虜達が慰めていた。ただ、


「これからは飢えることはないぞ。全てはアラシ指令のおかげだ」


「敵味方関係なく我らを救ってくださる、神のような御方だ」


「おおっ、そうなんだ⁈ 感謝を捧げる」


 俺を持ち上げるのは止めてくれ、小っ恥ずかしい。

 投降兵の数を数えて見ると、残った敵は半数にも満たず、勝負にすらならないだろう。


 これで作戦目的の半分は達成した。俺は腕時計で時間を見る。


 そろそろ志乃が率いる別働隊が、敵の野営地に到着した頃なので、俺も向かうことにする。これでトドメだ。

「ここは任せた天音。神影走」

「了解しました」


 敵の野営地はさほど遠くないので、あっという間に着く。こっそり近づいていたからな。


 すでに最終作戦は始まっていた。


 ジュウジュウと鶏肉と鰻が焼かれ、良い匂いが敵陣に届くように、送風機で風が送られている。


 これぞ焼き肉作戦。


 本来は屋台の焼き鳥を買わせるために、香ばしい匂いで客を引き寄せるための方法だ。

 焼き担当者は笑っていた。


「この匂い攻撃に耐えられるわけがない。食いたくて我慢できなくなる」


「うんまさに、焼き鳥一本もらっていい?」


「お前が食べてどうする⁈ これは降伏してくる者らの分だ!」


 効果てきめん、残った鐵乙女団の兵士達が集まり、ヨダレを垂らしながらコッチを見ていた。

 ここで志乃が最終勧告を行う。というか煽りに近いな。


「どうだ、この香り。腹が鳴ってるんじゃないか? 焼き鳥は柔らかくて美味いぞー! 鰻も最高だ。口に入れた途端に天にも昇る心地になる。どうだ、食べてみたくはないか?」


「ゴクリ……」


「ならば、武器を捨てて降伏せよ。我が軍はいかなる処罰もしない。こちらには元鐵乙女団の者もいるしな。降ってしまえば、もう飢えで苦しむことはなくな……」


 言い終える前に兵士達は叫んでいた。


「もう我慢できない! 降伏する!」

「私もよ、何も持たずにそっちに行くわ! だから食べさせて‼」


「よーし、並んで歩いてこーい。順番に食わせてやるぞ」


 雪崩を打つように、投降者が次々と増えていく。その中には指揮官らしい者もいた。

 こうして敵部隊はいなくなり、涙を流しながら焼き鳥と鰻を食っていた。


 ただ一人だけ残っていたので、静香が説得に向かう。どうやら知り合いのようだ。

 震えてる女の前に、焼き鳥をそっと差し出す。


「食べろ、氷花。もう済んだことだ。お前に仕返しはしない」


「うううううー! ごめん、静香」


 泣きながら女は食べ始めた。

 これでこの作戦は完了……そして次の作戦に移る。

 後続部隊と合流したところで、俺は全軍に号令をかける。


「これより我が軍は敵本部へと進軍する。作戦目的はAIの掌握、そして戦争を終わらせるぞ!」


「了解! 敵本部へ進軍します!」

「この戦いに終止符を打ちましょう!」

「おう!」


 最初から引き返す気などなく、一気に決めるつもりでいたのだ。前もって通達済み。

 敵本部に残ってるのは無人機だけで、この戦力があれば余裕で踏み潰せる。

 しかし無駄な犠牲を出したくないので、俺は別の方法をとる気でいた。


 補給に問題はないが、最短距離でも悪路を進むので時間はかかる。

 移動中にも俺は獲物を狩って、皆に渡していた。また人数が増えたからな。


 投降兵の大半は農園基地へと送ったが、恩義を感じた同行志願者もいたので、戦力として仕事をしてもらっている。


「よう氷花、静香は許したようだが、アタイらは容赦しねえぞ。くっくくく」


「うう、何をする気だ……?」


「それはもちろん、解体刑(・・・)であります!」

「血まみれにしてやるぜ!」


 ビビる氷花を紅美と椿が挟み込んで、獣のさばき方を教えていた。

 暴力を振るったりはしないが、血だるま作業から逃がさなかった。


「いやああああああ!」


 絶叫を上げる氷花を見て、二人は笑って満足していた。

 過去の事情は聞いたが、敵前逃亡はよくあることなので、あんまり苛めるなよ。


 残っている鐵乙女団の兵士達には、侵攻部隊が降伏したことを無線で伝え、我が軍に投降するよう呼びかけた。

 もちろん食糧の配給を約束する、と無線での問い合わせが殺到する。


『本当に食い物をくれるのか? 嘘じゃないのか⁈』


「元鐵乙女団の巴隊隊長、獅堂静香が保証する」


「同じく元紅蓮姫団、東雲志乃が約束しよう」


 二人が説得すると、鐵乙女団の本部で落ち合うことが決まる。

 今までは立ち入り禁止区域だったが、そこで機械AIがいることを証明する。皆が見届け人になるだろう。


 ――数日が経ち、ついに俺達は本部へとやってきた。


 そこにあったのは円蓋(えんがい)状の建物、巨大なドームだった。

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