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神力の少年兵  作者: 夢野楽人
第二章 動乱編

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黒くて太くて長ーい、アレ

 俺は農園基地へ向かい、現場で指示を出すことにした。

 補佐をするのは静香と志乃、優秀なので頼りになる。


 まずは駐屯地からやってきた兵士達を集めて訓示し、超能力を見せて力を示した。

 驚かせた後は、人事と仕事の割り振りを二人に任せた。


「アラシに従うことに反対する者はいない」

「司令には肉を頂いた御恩がありますから、我らは忠誠を尽くします」


「そうか」


 食料はまだまだ足りない。鐵乙女団の本部へ殴り込みにいくには、たくさんの糧食が必要だった。

 昔から戦をするより、兵に食わせる方が大変なのだ。だから戦争なんかやるもんじゃない!


 作物の収穫には時間がかかるので、自生してる野草や木の実を探すことにする。

 植物のデータは機甲羽衣に転送したので、大人数でやればかなりの量を集められた。


 また付近の川辺や湖に足をのばし、釣りの他に罠をしかけた。


 竹筒や(うけ)という仕掛けをしておく。獣罠と違って成功率は高い。


 ――そして数日後。


「うわすごい、こんなに入ってる!」

「やったぜ大漁だ! こりゃ当分、食いっぱぐれはねえな」

「……全部元気、うまそう」


 回収にきて魚が捕れたのを喜ぶ一方、ある魚で騒動が起きる。


「きゃああああ! 気持ち悪い、何これ⁈」


「黒くて太くて長ーい、恐いわ!」


「ぬるぬるしてる。蛇みたいでいやあああああ!」


 女達は悲鳴を上げていたが、俺はそれを見て喜ぶ。


「おっ、ウナギじゃねーか。これは美味いぞ!」


「ま、まさかアラシ、それを食うのか?」


「もちろんだ。見た目はいまいちだが味は最高だ。ただこいつは滑るし暴れるので、調理が難しい。おれがさばこう」


 農園に戻ってから、俺は外の獣解体所で作業を始める。近くで作業してた者らは、ウナギを見てギョッとしていた。


「うわあ! また司令が変なもの持ってきたー!」

「またですか――――!」

「もう勘弁してほしいわ……」


 見た途端にげんなりしている。俺に蛇の前科があるから仕方ない。

 なので今回は希望者だけに、さばき方を指南することにした。あえて無理強いはしない。

 ふっふふふ、嫌がってるのも今のうちだけだ。すぐにウナギが食いたくなるだろう。


 まずは、まな板に穴を開けて釘がさせるように加工した。

 次に水おけに入ってるうなぎを取り出すのだが、暴れるので掴むだけでも大変だ。


 そこで、


神影縛デウス・バインド


 念力で動きを止めてから、まな板の上にウナギを置いて目打ちした。

 あとは包丁を頭に刺して〆る、合掌。


 そして包丁を腹に入れてウナギを開き、背骨と一緒に内臓をとり、腹びれと背びれをとってから切り分けた。

 大きいので一匹で三人分になるだろう。何匹か処理したあとで、静香と志乃達もやってみることになる。


 ウナギをしめる作業は俺がやり、動かなくなったのをさばいてもらう。これなら簡単。

 魚や獣は毎日のようにやってたので、ぬめる以外は問題なかったようだ。


 あとは串に刺して炭火で焼く。


 皮を下にして弱火でじっくりとあぶり、乾燥させないように酒も少量振った。

 そして作ったタレを塗って強火で炙る。これを何度か繰り返す。


 脂が落ちるので煙はすごいが、濃厚な甘辛の匂いが一面に広がった。


 これは鼻から脳天を刺激し、誰もが食いたくなってしまう。


「なんだこれは⁈」

「食欲をそそる……美味そうな匂い。よだれがでちゃう」

「嘘でしょ⁈ これがさっきのアレ⁈」


 焼き上がった鰻を俺が味見してから、さばいた者らにまず食ってもらう。これぞ役得。

 最初はためらっていたが、匂いに負けてかぶりついてしまう。


「う、美味いぞおぉぉぉぉ‼」


 これぞ魂の叫び。あっという間に鰻を平らげてしまった。

 食った志乃達は感動していた。


「ほんとに美味しい。アラシ司令にはいつも頭が下がる思いです」


「鰻は惑星や国によっては高級食材だからな」


「そうだったんだアラシ。道理で美味いわけだ」

「香ばしくて、身がとろける。至福の味だわ……いっちゃいそう」

「大将が作るもんに不味いもんはねえ。あっ、弥生! こっそりとってんじゃねー!」

「……これは私が食べる」

「小官も、もっと頂くであります!」


 これを見て仲間達が殺到してくる。

 我慢できなくなったようで、口からヨダレを垂らしていた。


「私達にも鰻を食べさせてくださーい!」

「お願いしまーす! 是非一口!」


 現金なものだ。

 残った鰻の奪い合いになるが、全員分はないのでジャンケンで決めさせた。

 食えなかった者らは、


「く、くそう! これは川で捕ってくるしかない!」

「そうね、罠をたくさん作ろう!」


 竹をとってきて罠作りに勤しんでいた。こうしてしばらく鰻祭りが続く。

 しめるやり方も狭い竹筒に誘い込んでから、頭を刺すことで解決した。これなら手が滑らないので扱いが楽になる。

 うな丼を食いたいとこだが、米がないので残念。


 その代わりに作った麦飯でも十分にうまい。あとはパンに挟んで、仲間達は頬張っていた。



 狩りも続けて着実に糧食が集まっていく中、斥候部隊から連絡が入る。


『司令、鐵乙女団の部隊がこちらに向かってきてます』


「敵の様子はどうだ?」


『輸送トラックは少ないですね。兵数は百五十から二百人といったところでしょう』


「そうか、引き続き監視を頼む」


『了解しました』


 むこうの管理AIが痺れを切らし、動かせる限界の戦力をかき集めて攻めてきたようだ。

 これに勝ってしまえば、もう鐵乙女団は戦えまい。

 情報によれば向こうの糧食は兵数が少ないため、まだ持ちこたえられるようだ。

 それも無理な遠征で尽きるだろう。静香と志乃が言ってくる。


「私達はいつでも戦えるぞ、アラシ」

「戦闘準備は万端です。アラシ司令、ご命令を!」


挿絵(By みてみん)


 誰もが張り切っていた。兵数もコッチが上回っているから、負けるわけもない。

 ただ俺は意外なことを言った。


「あー、戦う気はねえぞ。念のために部隊は連れていくが、こっちは三百人くらいでいいだろ。作戦は……こうだ」


 聞いた二人は笑い出してしまう。


「あはははは! 相変わらずだなアラシ。敵にも優しい」

「くくくくく! なるほど、そうやって基地を落としてきたわけですね? これは成功するでしょう。絶対に耐えられるわけがない。あー、可笑しい」


 俺の作戦が全軍に伝えられると、仲間達は一斉に吹き出して、あちこちで笑い声が上がった。


「わははははははは!」

「ぶひゃひゃひゃ! 大将らしいぜ!」


 ただ誰もがこの作戦に参加したがり、部隊を選ぶのに苦労した。

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