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神力の少年兵  作者: 夢野楽人
第二章 動乱編

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戦争から農漁へ

 ぎこちない食事会が終わったあと、俺は本部の会議室に静香と志乃を呼んだ。

 気が重いが真実を告げねばならない。いつまでも後回しにはできん。

 そして二人が譲り合うように部屋に入ってきて、俺は椅子に座るように言った。


 志乃には俺のことを知ってもらうために、軽く自己紹介をする。


「俺の名はアラシ・テンマ。別の世界からやってきた男だ。ただ記憶はなくて、断片的な知識だけは残っている。ヴァージン大陸で目覚めてから、静香と出会って紅蓮姫団の基地を奪いながら本部まできた。目的は記憶探しと、この世界の秘密を探ることだった。ここまでいいか?」


「……別世界……男、おとこ、オトコ……少年……あ、はい!」


 志乃はかなり驚いたようだが、取り乱すことはなかった。

 無線を聞いてた時には激しい性格だと思っていたが、腹が満ちてイライラは収まったようだ。


「ここに来て、AI指令官が両軍団に命令してたのが分かった。その上には兵器会社と金持ちの黒幕がいて、新型のパワードスーツの開発と戦争博打をやっていた。そして兵士の女達はそのために造られた、人造人間……そして慰み者だ」


 俺は大きく息を吐く。口に出すとやはりきつい。

 倫理や道徳、人道から外れた酷い話だからな、この報いは必ず受けさせてやる!


 聞いた二人が喚きだすかと思っていたら、反応は頭に?マークが浮かんでいるようで、首をかしげている。


「すまないアラシ、私達が造られたのは分かったが、博打と慰み者ってなんだ? 全然わからない」


「同じく分かりません。それは一体なんなのでしょうか? あと兵器会社とか、金持ちとか……知らないですわ」


「あ、そうか! 知識が与えられてないから、善悪の判別ができないんだ。無垢になるように教育されちまってるからな。兵士だから恐怖心は薄いし、性知識もない。ただショックを受けずには済む……」

「アラシ?」


「すまん、独り言だ。簡単に言っちまえば、静香も志乃も操り人形として作られ、いいように弄ばれていたんだ。今までに戦死した兵士達はその犠牲になった。可哀想にな」


「うっ!」

「……少し、理解できました」


 二人とも仲間の死を目にしてるので、別れの辛さはあっただろう。

 それが他人によるものだと分かれば、怒らずにはいられない。

「そいつらへの報復はあとだ。まずは鐵乙女団の本部を落として、そこのAIも俺の支配下におく。これで、くだらん戦争は終わりにする。協力してくれるか?」


「もちろんだ、アラシ!」

「私もアラシ司令に従います!」


 二人は起立して敬礼してくる。


「助かる。この話は二人からみんなに伝えてくれ。しかし攻め込む前に、やるべきことがあるな。もう紅蓮姫団には糧食がないだろ? 志乃」


「はい、おっしゃる通りで、全員が飢え死に寸前です」


「中継基地には俺が隠しておいた食料と燃料があるが、それだけじゃ足りん。農園基地に全軍を集めて食い物を生産する。その前に各駐屯地に保存食を、急いで送らんとまずい。ここいらの獲物を狩って、干し肉と燻製をみんなで作るとしよう」


「任務了解しました。喜んで作業に当たります!」


 志乃は笑っていた。ひもじい仲間を救えるとなれば嬉しいのだろう。

 静香と同じく部下思いだ。じゃなきゃ、上に食ってかかったりはしない。


「ふっふふふ、中尉覚悟しておけよ、獣の解体は甘くないぞ」


「了解だ。獅堂少尉」


 元は敵同士で因縁があったものの、二人は気が合ったようだ。

 今日は休んで、明日から本格的に働くことにする。酒が抜けてないからな。



 次の日。


 俺は数人の手伝いと一緒に、トラックに乗って狩りに出かける。

 獲物の積み下ろしをしてもらうためだ。


 その間静香達には準備と、新たな仲間達に解体作業をレクチャーしてもらう。

 これもいつも通りで日常茶飯事と言っていい。


 みんな最初はド素人なので、教える側が厳しくなるのは仕方ないだろう。コツをつかむまでは大変だ。

 俺はかなり気合いをいれて、たくさんの獲物を狩り、午後には基地に戻ってくる。


 休憩したあとで、また狩りに出かける。いつもなら休んでるとこだが、食わせる人数が増えたのでもっと必要だった。

 志乃に聞いたところ、


「紅蓮姫団の残存兵数は、およそ八百人です」


「そうか、早く作るしかないな。志乃は肉を送る駐屯地の順番決めと、輸送の準備をしてくれ。予備燃料とトラックは基地にあるからな。あとは無線で兵士達に、食い物を送ることを伝えてやってくれ」


「ご指示、承りました。これで皆に希望が生まれます!」


 夕方まで狩りをして帰ってみると、やはり紅蓮姫団の者らはヘロヘロになっていた。

 解体は慣れるまではきついわな。誰でも一度は経験するものだから、頑張ってほしい。


 静香に聞いてみると、やはり阿鼻叫喚地獄になったようだ。血の池ができるしな。

 かと言って仕事を止める気はない。


「休みはなしだ。飯を食ったら、夜も基地内で働いてもらう」

「そうだなアラシ。徹夜は覚悟している」


 基地の動力さえあれば、電力はいくらでも使える。明かりを点けて作業できるし、大型乾燥機を回せば干し肉も早く仕上がる。

 あとはヒーターを使ってスモーク乾燥も行う。


 基地内には様々な設備や資材があり、使ってない装置をフル稼働させていた。


 皆が交代しながら必死で働く。飢える辛さを知ってるから、早く仲間に届けたいのだろう。

 元鐵乙女団の者達も手を抜いたりはしない。もう敵ではなく仲間だからだ。


 とはいえ、まだ獲物の解体には慣れてないので、血まみれになっては悲鳴を上げていた。


 それでも逃げ出さないのは偉いと思う。根性あるなー。

 

「きゃああああああああ!」


「へっへへへ、いい声で鳴くじゃねえか? 中尉さんよ。感じてきちまうぜ、もっと聞かせろよ」


「くっ! 私さえ我慢すれば、部下が(飢えで)苦しまずに済む。このくらい耐えて見せるわ!」


「東雲中尉だけに辛い思いはさせません! 私達も体を張って頑張ります! たとえこの身が、(獣の血で)汚されようとも!」


「おまえ達……すまない」


「…………」


 うーむ、台詞だけ聞いてるとやばい気がする。

 これは飽くまでも獣の解体作業であって、どこぞの官○小説ではありません。


 志乃達の献身?もあって、干し肉は完成し糧食を乗せたトラックは駐屯地へと向かった。

 燃料も積んだので、これで農園基地に移動してもらう。


 しばらくはこの繰り返し。そして残った獣の死骸も有効活用する。


 基地の設備を使い、骨は細かく粉砕し血は乾燥させて、落ち葉・おがくずなどを混ぜて密閉発酵させる。短期間での肥料作りだ。


 アンモニア合成(ハーバー・ボッシュ)法で作りたいとこだが、大規模な設備が必要になるので今は無理だ。

 なのでAI無人機にやらせた方が無難。高温堆肥化は危険があるし、かなり臭うからな。

 これからは農作業に機甲羽衣を使っていく予定だ。人が疲れずに済むように。

 

 肉の配送が一段落したところで、本部に残る部隊と農園基地へ向かう部隊を分けた。

 中の大型設備は動かせんから、機械作業要員として残ってもらう。


 また水耕栽培も始めた。本部にはLED照明がありAIが空調管理するので、季節や天候に左右されることなく野菜を育てられる。


 種をまいたら後はやることはなく、素人でも問題はない。育ったら収穫するだけだ。


 誰もがやる気満々なので、部隊を分けるのに苦労したが、交代制にすることで話はついた。

お読みいただきありがとうございます。この作品がお気に召しましたら

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