これからどうする?
ここで物語は一区切りです。
コンピュータAIとの戦いは、俺達の勝利に終わった。まだまだやるべきことはあるが、今日のところは仲間達の無事を喜んで祝うことにした。
あまりにも色んなことがありすぎて、疲れてるのでまずは休みたいとこだ。
それでも宴の料理を作ろうとしたが、椿達に止められる。
「祝勝会の準備は小官達でやるであります。アラシ殿は休んでてくだされ」
「任せてくれアラシ。私とて料理の腕は少し上がってる」
「……そうか、なら眠らせてもらう」
俺はテントに入って横になると、すぐに寝てしまう。
やはり相当疲れ…………Zzzz
「アラシ、アラシ、アラシ!」
「…………ん、ああ静香か。俺はどれくらい寝てた?」
「2時間ほどだ。祝勝会の準備はできてる。顔を出してくれ」
「分かった」
すでに日は落ち夜空には星が瞬いていた。
焚き火に囲まれた野営地の一角に、防水布が何枚も敷かれ、たくさんの料理が置かれている。
その周りには仲間達が座って談笑し、楽しそうにしていた。
保護した少女らもいて緊張した面持ちだったが、徐々に和んでるように見えた。
俺が現れると、全員が一斉にこちらを向き拍手が巻き起こる。
歓声も上がり、俺は少し照れながら演壇へと上がった。
「敵AIは降伏し、我が軍門にくだった。この勝利は俺一人だけのものじゃない。ここにいる全員で掴み取った勝利だ。みんな本当にありがとう! 詳しいことは明日に話そう。今夜は思う存分、楽しんでくれ!」
「かんぱ――――い!」
「乾杯!」
仲間達はコップをぶつけ合う。飲酒は許可してるが、ほどほどにしてくれよ。
俺は食事をとりながらも、順番に各小隊の輪に顔を出して、労いの言葉を全員にかけて回った。
「こちらこそ、ありがとうございます! お肉おいしい」
「いつも司令には感謝しております!」
礼を返されると、俺は苦笑するしかなかった。
狩りをして獲物を渡してるが、世話になっているのは、むしろ俺の方かもしれない。
結局のところ、人は互いに支え合って生きていくものなのだ。
少女達とも少し話し、宴会はお開きとなる。
仲間達の半分は基地内で寝ることにし、もう半分は警戒のために外で寝ることにした。
敵はいないが元は敵基地なので、そこで眠る気にはなれなかったようだ。
野宿の方が安心できる。
そして朝を迎える……案の定、二日酔いで誰も起きてこなかった。やれやれ。
「しゃあーない。俺が朝飯を作るか……いや、起きられないから昼飯になるかも」
「私達も手伝います!」
酒を飲めなかった少女達が集まってきていた。
少しでも恩を返したいのだろう。俺はその申し出を、ありがたく受けた。
ただ、素人なので料理を教えることになる。
「ここはこうやって、こうすればいい」
「なるほどー、ためになります!」
「もっと詳しく教えてください、お兄ちゃん!」
笑顔で学ぼうするのは良いんだが、やたら体を密着させてくるのが気になる……なんか近いな?
……俺はまだ知らなかった。女達のある争いが始まっていたことを。知るのはズッとあとになる。
少女達は要領が良く調理は捗り、作業は思いのほか早く終わった。
予想通り仲間達は起きてこなかったので、少女達と朝飯を食べることにした。
全員分作ったので後で温めてやればいい。食後にくつろぎながら、これからどうするかを考えていた。
「まずは食料の確保だな、とにかく人が多い。全ての軍務を止めて紅蓮姫団総出で生産すれば、少しはマシになるだろう。バカな戦はもう止めだ。それから鐵乙女団の本部AIも手に入れる。向こうにも子供はいるからな、保護せんと…………あっ、そうだ!」
今後の方針は決まった。そして自分の目的を思い出す。
――失われた記憶を取り戻したい。
俺は基地の中に入りエレベーターを使って、アンドロイドの所にくる。
首に下げていた認識票を外して渡す。
「この中にデータチップが入ってるはずだ。中身をみたい」
「分かりました。少々お待ちください」
アンドロイドは近くにあった解析装置の中に、認識票を入れて起動させた。
やはり部屋を壊さなくて良かったな。
「一部破損してますが、復元は可能です」
「そうか、なら見せてくれ」
「はい、モニターに映します」
データチップにあったのは、数枚の写真だけで他には何もなかった。
その中の一枚に一人の中年男性と、三人の女性が一緒に映っていて、顔は静香・紅美・弥生によく似ていた。
男は昔の俺だろう。しかし、
「…………だめだ、名前が全く思い出せん。これは記憶が欠落してるかもしれんな……」
記憶はもう戻らないかもしれない。子供になったのも影響してるのだろう。
それでも何となくは覚えていて、三人は部下で大事な家族だったようだ。
今はどうしてるだろうか? 無事でいるだろうか? 俺は心配になる。
「やってみるか……念話。上手くいくか分からんが、俺の無事を伝えてみよう」
俺は意識を集中させ、思いを精神波にして送ってみる。届くといいな。
あとは画像データをプリントアウトさせ、それを持って下に降りた。
ようやく仲間達は起きて酔い覚ましの薬を飲み、少女達に介抱されながら、飯を食べ始めていた。
飲み過ぎだっつうの…………むっ!
「神聴耳、神里眼」
遠くからの気配を感じ探知能力を使ってみると、数台のトラックが近づいてきてるのが分かった。たぶん彼女だろう。
俺は少女達を呼ぶ。
「追加で料理を作る。手伝ってくれ」
「はーい!」
それから1時間後、本部基地の前でトラックが止まった。俺は真ん前で待ち構える。
仲間達は警戒してるが、手を出さないように厳命してある。
そして、一人の女がトラックから降りてきた。
士官用の軍服を着て外套を羽織り、軍帽を被り丸眼鏡をかけた、ボブヘアの女が近づいてくる。
眼鏡に文字が浮かんで見えたので、たぶんスマートグラスだ。
顔はかなり理知的で知性がにじみ出ている。彼女こそが俺が恐れた切れ者だろう。
そして俺の目の前にくると敬礼してきた。
「自分は東雲志乃と申します。階級は中尉です。あなたは……」
「新たに総司令になったアラシだ。まずは焼いた肉を食え、部下も全員呼んでこい。腹減ってるだろ? 話はそれからだ」
「は、はい。それではお言葉に甘えまして」
こうして志乃達は俺達と一緒に飯を食うことになる。まだわだかまりはあるものの、少しずつ消えていくだろう。
もはやいがみ合う敵ではなく、運命を共にする仲間なのだから。
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