胸くそ悪い真実
アンドロイド二体は同時に掴みかかってきた。
どうやら殺す気はないようで、人への攻撃が制限されてるのだろう。
「ふん!」
俺は触られる直前で目の前から消え、二体を何もない壁際へ蹴飛ばしてやった。
壁に叩きつけられたアンドロイドは、何事もなかったかのように立ち上がってくる。
痛みを感じてないのもあるが、かなり頑丈だ。
「神拳」
俺の握り拳が力場をまとう。超能力で強化されたゲンコツは何者も砕く。
さらに高速で動き回り、肘鉄や蹴りも加えてアンドロイドをタコ殴りにしてやった。
これで関節が軋みセンサーは潰れ、割れた装甲からは部品が飛び散り、アンドロイドはついに膝をついて動かなくなった。残り一体も倒れ伏す。
反撃すらさせない、許さない。残ったのは空回りする駆動音だけ。
人が相手だったら、最初の一撃で死んでいる。ここまでしたのは初めてだ。
「ふう…………」
俺は暴れて少し落ち着いた。それでも怒りは収まっていないが。
残るは最上階、俺は脇目も振らずに向かう。
狭い梯子を登ってハッチを開けて中に入ると、明滅してるインジケーターが目に入る。
周りにはデバイス間を走る配線が、網目のように張り巡らされていた。
ここが中央制御室のコンピュータルームだ。中心の天井には、丸いミラーボールのようなものが浮かんでいた。
上を見ていると半透明な女が現れる。立体映像だ。
白い軍服を着ていたので、こいつが司令官役のAIだ。そして俺に命令してくる。
「あなたは管理者ではありませんね。手を触れないでください。速やかに、ここから退出してください」
「今のお前と話す気はない。さてアレはどこかな?」
俺は喚くAIを無視して、四つん這いになって室内を探す。
目当ての物はすぐに見つかり、それは赤いカバーで鍵もついていた。
「あった、これだ」
それは強制初期化スイッチ。
ほとんどのコンピュータには、暴走やウィルスで乗っ取られた場合に備えて、バックドアが仕込んであるのだ。
これを使えばデータは初期化されるが、早急に復帰できる。
俺は鍵を念力で開け、赤いカバーを外してボタンを押した。
するとAI女の様子が変わる。
「これより初期化を行います。その前に管理者登録をしてください。直近までのバックアップデータは復元しますか?」
「その場合、権限は前の管理者に戻るのか?」
「いえ、新たなユーザー様です」
「よし、ならば俺が新しい管理者だ。名はテンマ・アラシ。データは復元しろ」
「承知しました。少しお待ちください」
体がレーザースキャンされ、生体認証が完了する。これで俺がコイツの御主人様だ。
システム書き換えと復元には数分はかかる。
その間、俺は目を瞑って心を落ち着かせていた。感情のままに壊したら元も子もないからな。
「お待たせしました。設定と復元が完了しました。御命令をどうぞ、アラシ様」
「質問だ。ここと人造……彼女らが造られた目的を話せ。分かりやすくな」
「はい。兵器の実験場として、無人だったこの惑星に施設が建設されました。新型パワードスーツを開発するには、乗り手の実戦データが必要だったので、ホムンクルスが製造されました。さらってきた子を使うと、足がつく恐れがありましたので」
「ふん、ロボットと同じ扱いなわけか? どこの星民でもないから、人権はなく実験マウスのように使い捨てられる。あー、胸くそわりい! それで、この計画の首謀者は誰だ⁈」
「申し訳ございません、アラシ様。関係者名簿はデータに存在しておらず、計画の背景のみ記録しています。ただ開発元である兵器メーカーは、確認できています」
「やましいことだからな、名前を隠すのは当然か。罪を償わせるには、そこから洗うしかないか……だが、それは後回しだ。まずは裏話を聞かせろ」
「はい。小規模な兵器会社が、大金持ちの出資者に話をもちかけ、『次世代PS計画』が始まりました。二社なのは双方を競わせるためで、それが鐵乙女団と紅蓮姫団です。そしてパトロンには金銭の代わりに、別な見返りが用意されました」
「……それは?」
もはや聞かなくても分かっているが、ハッキリさせねばならない。
「娯楽としての戦争の提供です。金持ちだけの闇賭博が開催され、賭けの対象になりました。中にはホムンクルスが死ぬ様を、楽しんでた者もいます。あと見目麗しい女性を製造したのは、姓ど……」
「もういい! 黙れ‼」
俺は理性を総動員させて我慢する。拳を握りしめ破壊衝動をひたすら耐えた。
機械のコイツに当たっても意味はなく、まずは冷静になってから、何をすべきか考えねばならない。
ただ、もう一つだけ聞いておくことがある。
「ここでの自給は無理だ。連絡補給船は来てないのか?」
「はい、ここ三か月ほど連絡は途絶えています。研究員の出入りも確認されていません」
「……何かあったな」
宇宙で何が起きたかなど知る由もなく、ましてや俺に関わってくるとは、この時は思ってもみなかった。
全てを知るのはかなり後になる……。
おれは女AIに命令を下す。
「紅蓮姫団全軍に、俺が総司令になったことを伝えろ!」
「分かりました。予備のアンドロイドを使い、アラシ様に従うように通信を送ります。鐵乙女団はどうしますか? 非常用のホットラインはありますが?」
「ほっとけ! 別会社のAIなら従わないだろ? また俺が乗り込むから、向こうからの通信は一切無視しろ」
「了解しました」
一先ず用は済んだ。俺はこの場を後にする。
下に降りて見ると、別のアンドロイドが動き出していて、各地に無線連絡をしていた。
俺に気づいて敬礼してくる。
「何か御用がございましたら、遠慮なくお申し付けください」
「……ああ」
俺は上の空で下に降りていく。怒りは収まったが、静香達にどう説明するか悩んでいた。
自分達が造られた存在と知ったら、どう思うだろうか? しかもその動機は最悪。
俺は真実を伝えるのをためらう。
考えてるうちに三階まできてしまい、静香達と合流した……まだ言えない。
「アラシ、無事だったか⁈ それでどうだった?」
「ああ、全部分かった。コンピュータAIが指令官になりすまし、機械ごときが両軍団に命令を下していた。権限は奪ったので、今は俺が総司令だ。詳しいことは後から話す……」
「……そうか。ところで保護した少女が、お兄ちゃんに助けられた、とか言っていたのだが……」
「ああ、それはな――――!」
ブチッ!
頭の血管が切れたわけではない。切れたのはスボンの紐だった。
激しく動き回って暴れたせいで、限界がきたようだ。もともと適当に作った服だしな。
問題なのはズボンだけでなく、パンツまでずり落ちてしまったことだ。
俺は下半身をさらけ出してしまい、見た静香達は釘付けになって騒ぐ。
「あ、アラシ! その股間にある物はなんだ⁈」
「……象さん」
「も、もしかして、伝説のチ○コでありますか⁈」
「男だったの⁈」
「なにい! 男だってええええええ! 男ってなんだ?」
紅美の台詞にずっこけそうになるも、俺のパオーンは見られてしまった。
昔はビックマグナムだったのに悲しい。これで男であることはバレた。
遅かれ早かれなので、俺は素直に白状したが女達の興奮はしばらく収まらなかった。
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