モノローグ 獅堂静香3
「気をつけて」
と言うと、後ろを向いたままアラシは肯いて消える。力を使ったようだ。
少しだけ心配だったが、その背中はとても頼もしく見えた。
まだ少女なのに大人のように頼り甲斐があり、話し方にも年季が入っていて、かなりの修羅場をくぐってきた古参兵のようだった。
年齢と見た目が合っておらず不思議だ。アラシの失われた過去に、関係してるのかもしれない。
だから私はアラシに惹かれている、出会ったときからズッと。
それと触れあっていると、なぜか心地良い。一緒に寝て温まるのは気持ち良かった。
天音に抱きつかれると、ひどい怖気がするので真逆である。なぜだろう?
私はアラシの言うロリコンではないと思うが、ずっと一緒にいたいと願っている。
そのためにも、目の前の敵を排除しないとな!
「アラシの攻撃で無人機の大半は倒れた。それでもまだ百機ほどが残っている。だが恐れる必要はない。ボロボロになってまともには動けず、もはや脅威とは呼べないガラクタだ。今までの特訓で強くなった私達の敵ではない! ゴミを片付けてアラシと合流するぞ‼」
「おおおおおおおっ!」
「やってやるぞー!」
仲間達の歓声を聞くと、胸の奥に熱いものが込み上げてくる。
思いをこめて言葉で伝えれば、心は必ず動く。アラシの言うとおりだ。
「敵、こちらに接近してきます!」
「よし! 狙撃部隊、射程に入り次第、撃て!」
「了解!」
遮蔽物もない平地では、身を隠せずいい的でしかない。
発射音がする度に、機甲羽衣は次々と倒れていく。腕自慢のスナイパーが撃ってるからな、一発で仕留めている。
それにしても敵AIはバカで創意工夫がなかった。
別ルートを通るとか、何かを盾にして匍匐前進するとか、色んな手があるのにただ突っ込んでくるだけ。まるで紅美のようだ。
「ん? なにか言ったか、静香?」
「なにも……紅美の出番はまだだから、休んでていい」
「腕がなるぜ!」
いや私にしてもタダの撃ち合いしか知らなかったから、人のことを言えた立場じゃないな。
全てはアラシが教えてくれたことで、感謝しかない。
「敵は3割ほど減りました。残りは陣に近づいてます」
「これで、ほぼ五分だな。突撃隊戦闘開始だ! 陣からは出ずに撃ちまくれ!」
「了解したー!」
「くらいやがれ!」
無人機は撃ってくるものの、こっちは高所で初めから優位。
遮蔽物も立ててあるので、そう簡単に弾が当たることはなく、逆にこっちは多数で集中砲火を浴びせてやれる。
これで敵はなす術もなく倒れていった。
それでも無人機は正面特攻でゴリ押ししてくる……やれやれ。
そこに横方向からの射撃が加わる。
隠れていた伏兵部隊で、ここぞという時に動いてもらう気でいたが、もはやその必要はなくなった。
敵に十字砲火を浴びせるので、戦闘に参加してもらったのだ。これぞ臨機応変。
これに無人機は何も出来ずに撃ち倒されていくのみ。これで勝負は決まった。
敵本部から増援が出てくる様子もない。私は大声で叫ぶ。
「全隊撃ち方止め! 弾倉を交換し、予備武器を携帯せよ! これより残敵を掃討しつつ、敵本部へ凸入する‼」
「よっしゃあ! 待ってたぜ、アタイが一番乗りだ!」
「……そうは、させない」
「小官が手柄をいただくであります!」
「獅堂隊長は私が守る!」
「わああああああああああああああ!」
怒号が戦場に響き渡り、仲間達は陣から飛び出して一斉に駆けだす。
先陣争いというやつだ。アラシから手柄と教えられたので、誰もが狙っている。
どんな敵が立ち塞がろうが、止められない、止められまい、止めようがない。
それだけ仲間達の勢いは凄まじかった。
やはり先行したのは、機甲羽衣を軽量化してる紅美の部隊だ。
その代わり残敵の相手を最初にせねばならない。
「邪魔だ、どけ!」
紅美は弾を軽くかわして敵機甲羽衣に近づき、鮮やかに投げ飛ばしてしまう。
アラシから教わった合気道だ。
同時に関節も極めて折ってるので、これで戦闘不能だ。人にはやれないが無人機は遠慮なく破壊できた。
次々と仕留めていくので、お見事である。
昔だったらパルスナックルで、ぶん殴るだけだっただろう。それで故障も多かった。
「殴って手を壊すと、弥生がうるせーからな」
「……当たり前だ、誰が修理すと思ってる」
そう言いながらも、弥生は紅美のカバーをさりげなくしていた。
いいコンビである。
そうこうしてるうちに動いてる無人機はなくなり、全軍が敵本部の入り口に殺到していた。
こうなると味方同士の争いになる。
「どけどけえ!」
「邪魔よ!」
こうなることもアラシは予想してたので、肩でのぶつかり合いは許可してある。
撃ち合いになったら冗談ではすまないからね。
そしてラストスパート、先頭集団が必死にせめぎあって、横一直線に並び勝負は最後の最後までもつれ込む!
「おりゃああああああ!」
「うがあああああああ!」
みんなが雄叫びを上げていた。そしてゴールイン!
門をくぐったのは十数機、入り口が広かったせいでほぼ同時に見えた。
残念ながら写真判定はないので、言い争いになる。
「アタイが一番だった!」
「……いいえ、私よ」
「小官であります!」
あとから中に入った私は争いを止める。
「はい、みんなそこまで。まだ中の制圧が残ってるわよ。アラシの手助けをしないと」
「そうですね、獅堂隊長!」
「みんな警戒を怠らないように。もし子供がいたら保護するのよ」
「了解!」
外に見張りを残し、私達は基地の内部へと進んだ。
お読みいただきありがとうございます。すこしでも笑っていただけたら幸いです。
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