天岩戸作戦
「よし、ここに防衛陣地を作ろう」
「了解!」
俺達は敵本部の手前にある、小高い丘で築陣を始める。予想される索敵範囲からは外れてるので、見つかることはないだろう。
それよりも全く基地に動きがないのだ。誰も出てくる様子はなく、まるで時間が止まってるかのようだった。偵察ぐらいしろ。
四角錐の高さはおよそ20㍍。さほど巨大ではないが、かなりの面積がある。
超能力で探知してみたが、分厚い防壁に覆われていて窓もなく、内部の様子はよく分からなかった。
中に生命反応はかすかにある。たぶん子供らだろう。
「とりあえず近づいて見るか、神影走!」
監視カメラのような物はない。
あったところで俺の姿はぼやけた影として映るだけで、高速カメラでもなければ捉えられない。
それでも一応、夜に動いた。
入り口も硬い隔壁で閉ざされており、近くの壁には生体認証システムが一つあり、これで出入りをしてるのだろう。
「装置を壊したところで入れまい。隔壁も今の俺の力じゃ破れない。電磁操作が得意だったアイツならハッキングして…………やっぱり思い出せん」
記憶は戻らないが、心が覚えてるのかもしれない。
面倒だが無い物ねだりは止めよう。何事も楽はできんな。
「基地というよりはシェルターに近いな、外部からの侵入を拒んでいるようだ。こうなると中から開けてもらうほかない」
俺は侵入をあきらめて戻る。
陣地を作りながら、俺は静香達と作戦を練ることにした。
「本部基地はミサイルや爆撃を受けたとしても、簡単には壊れないだろう。外からは絶対無理で、入るには敵さんが隔壁を上げるように仕向けるしかない。門が開いたら俺が潜入して片を付けてくる。そこで考えた策は……」
「……なるほど、これも前代未聞な作戦だなアラシ。こんなことをされたら、まともな人間ならキレるぞ。あはははは!」
「全く気にする必要はないぞ、静香。敵は人じゃないからな。機甲羽衣が出てくると思うが全て無人のはず、容赦なく叩き潰せ!」
「了解した」
防衛陣地が完成する頃、陽動をしてた椿が戻ってきたので俺はねぎらう。
「よくやってくれた、椿」
「ありがとうございます! ただ敵兵は痩せこけておりましたので、ここに来たとしても、まともには戦えないと思います。哀れで仕方ありませんでした」
「そうか……食料不足は、いよいよ深刻になってきたな。明後日には敵本部を攻めるから、それまで休んでてくれ」
「了解であります!」
何度も相談し計画を立てたので準備は万端だ。あとは行動あるのみ。
決戦当日、朝飯を食った後に俺は全員の前で訓示する。
「みんなのお陰でここまで来れた。心より感謝する。だが、礼を言うのは勝ってからにしよう。我々は、これより決戦に臨む! 勝つぞ‼」
「うおおおおおおー!」
鬨の声は大地を揺るがすほどだった。各部隊が陣地で持ち場に就き、先行部隊が前進する。
もうコッチの存在を隠す気はない。いくらアホでも姿を見せたら気づくだろう。
あとは、敵がどう出てくるかを見るだけだ。
静香をのぞく元巴隊が先陣を切り、その後ろに台車に乗せた、コンテナを運んでる部隊が続く。中は秘密で後のお楽しみ。
作戦名は、「天岩戸」。
ひきこもった女神様を外に出すために、踊りや宴会をして騒いだという故事にならっている。
ただし、俺達の騒ぎ方はちと過激だった。
先行部隊は妨害もなく正門の隔壁前に到達し、大声で喚き立てた。
「新聞屋であります、三か月だけでいいんで取ってください。お願いしまーす! まずは中に入れてくれであります」
「……あなただけに教える特別情報がある、絶対に損はさせない、出てきてくれたら話す」
「こんにちは肉の販売にきました。そちらは今大変ですよね? お時間は取らせませんので、まずはお話だけでもどうでしょうか? ドンドン! 開けてくださーい‼」
「オラッ! 聞こえてんだろ。さっさと開けろや! こっちも暇じゃねえんだよ!」
詐欺と訪問販売とヤクザが同時に押しかけていた。
実際に家に来たら迷惑この上ない。俺が教えたことだが、紅美達はノリノリで悪者をやっていた。
どうでもいい知識だけは覚えてるんだよなー。
これに対して敵に反応があった。
『ここは紅蓮姫団本部である。許可無き者の立ち入りは認められていない。直ちに退去せよ』
「おっ、こいつ喋りやがったぜ。くくくくく」
「どうせ、管理AIだろ? 脅し文句を並べるしか能のない、ポンコツだ」
「……なにもできない、ガラクタ」
『繰り返す、この場から退去せよ。命令に従わない場合、排除措置に移行する』
「やれるもんなら、やってみるであります! みんな準備できた?」
「はい、椿さん。いつでもいけます」
「よし、では皆さん離れるであります!」
「そらっ、逃げろ~、あははははは!」
先行部隊は敵の警告にビビって、逃げたわけではない。
距離をとってからうつ伏せになり、椿はスイッチを押す。
「ぽちっとな、であります」
ドゴ――――――――ン!
直後、隔壁前で爆発が起きた。椿達がコントをしてるうちに、他の仲間は爆弾をしかけていたのだ。
もちろん分厚い隔壁を破るには至ってない。安全を確認して戻ってみると、
「おっ! 結構えぐれてるじゃん。大将の言った通りだぜ」
「ああ、地面の下までは守りきれてない。ドンドン爆破して掘り進めよう」
「……ふふふ、穴掘り作戦」
そう指向性爆薬を使って、地面を吹っ飛ばすように俺は指示をしていたのだ。
堅固な城を地下から攻める戦法は、昔から使われてきている。穴から中につながれば、なだれ込むだけだ。
先行部隊改め工作隊が意気揚々と、次の爆弾をしかけてると隔壁が動き出す。
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