進軍
模擬戦の総仕上げに予備機のAI機甲羽衣も入れ、二〇対二〇で対戦を行った。
指揮官は静香と天音の二人で、紅美と弥生達が下についてそれぞれ分かれて戦う。
今回天音は本気になったので、かなり良い勝負となった。
双方のメンバーが半分になったところで、俺は模擬戦を途中で止めた。
試合が長時間になるので、途中終了することは皆に伝えてある。
決戦前に疲れさせたら意味がなく、早めに切り上げさせた。
「そこまで!」
「ふう、キツかった」
「お疲れ様でしたー!」
敵味方がハイタッチをして健闘をたたえ合う。みんな笑顔だった。
不安顔の天音は静香と感想戦をする。
この前は手を抜いて叱られたので、今回は真剣に戦った。
静香に見放されて嫌われるのが、天音にとっては何より辛いからな。
「あのー……どうでしたか? 獅堂隊長」
「良い指揮ぶりだったぞ、天音。間断ない攻めには苦戦して私はかなり焦った。判断も早くメンバーへの指示も適確だった。天音は十分胸を張って良いぞ、これからも頼りにさせてもらう」
「あ、ありがとうございます! 静香様!」
「ただ抱きつくのは禁止な、人目もあるから」
「えー! そんなー……」
褒められて嬉しさ半分、ふれ合いを拒否られてガッカリ半分と言ったところだろう。
重い……いや想いが届くことを陰ながら祈ってるぞ。
次の日から、農園基地からの撤収作業と進軍準備に入った。
これが結構時間がかかる。
もう身軽な五人ではなく仲間がたくさんいるので、持っていく物資は多かった。
時間を無駄にする気はなく、この間にある作戦を仕掛けておく。
一つの小隊をつくって椿を隊長にし、俺は命令した。
「任務了解であります!」
「頼むぞ、椿」
椿は喜び勇んで出発する。行き先は敵のドライ基地。
もちろん攻める気はなく、偵察のふりをした陽動作戦をさせたのだ。
敵が近くに姿を見せれば警戒は必至で、基地に兵を割いてくれれば、敵本部は手薄になるだろう。
椿にやらせた理由は、脳筋の紅美なら単機で基地に突っ込みそうだし、気まぐれな弥生だったら、敵に一泡食わせようとするから困る。
あくまでも陽動、敵に疑念を持たれてしまうと、真の狙いが見破られる恐れがある。
だから余計なことをしない椿に任せたのだ。
彼女が戻る頃には俺達は移動してるので、敵本部の前で合流することになる。
準備は終わったが、まだ出発はできなかった。
戻ってくる敵主力の動きが気になったからで、かなりの切れ者がいる以上、一番警戒せねばならない。
このまま中継基地に戻ってくれればいいが、俺の意図を見抜いて、直接本部にでも来られたら勝ち目がなくなるだろう。
それだけの相手だ。
俺は仲間達と24時間交代で無線を傍受し続ける。
全員の生死がかかってくるので、一言も聞き逃すまいと必死だ。
しばらくは音沙汰がなかったが、やがて待望の情報が入ってくる。
戻ってきた主力は中継基地に戻り、本部から農園基地かドライ基地へ向かうように、命令がなされた。
これに敵指揮官はキレて、上層部と大喧嘩をしてしまう。あまりの剣幕に聞いてた俺はビビる。
「こわっ……向こうにも過激な士官がいるものだな? これは軍事裁判ものだぞ」
「私も気持ちは分かる。戻ってきたばかりで、補給もなしに動けるわけがない。何も送らない敵の上層部は頭がおかしい」
「基地の物資は全部奪ってやったからな、腹が減ってイラついてるのかもしれん。俺のせいか……」
「これは戦争だアラシ、私達は卑怯ではあっても卑劣ではない。重要な中継基地に兵もおかず、守ってなかったむこうが悪い。敵が内ゲバしてくれるなら、願ったり叶ったりだ。もっとやれ!」
「そうだな静香。よし! これで後顧の憂いはなくなった。進軍するぞ!」
「了解!」
俺達は急いで出発した。
農園から離れていく中、元捕虜だった者達はトラックから敬礼していた。
「さらばだ。今まで野菜をありがとう」
「もし戻ってこれたら、また収穫するぞ」
収容されて長い間いたからな、愛着もあるだろう。基地との別れを惜しんでいた。
敵本部の位置は分かってるが、距離は遠くて数日はかかるだろう。
旅の間に静香達から、鐵乙女団の本部基地の話を聞いてみた。
恐らく紅蓮姫団と変わらないと予想してるので、攻める前に参考にしたかったが……
「すまないアラシ。いたのは確かだが、物心ついた頃には別な施設に移されたので、ほとんど覚えがないんだ」
「そして本部に近づくことは禁止されてます」
「アタイも覚えちゃいないな。司令長官とかがいるんだっけか? 見たことはねえな」
「……副司令がいるという噂」
「上官も無線で本部命令を受けてるだけだったから、内情を知ってる者は誰もいないと思う。毎日の戦いで疑問に思ってる暇もなかった」
「そうか、完全に秘匿されてるわけか。逆を言えば、よほど知られたくない事が本部にはあるのだろう。俺が暴いてやる!」
「ああやろう、アラシ!」
そしてついに敵本部が見えてくる。今までのようなプレハブ駐屯地ではない。
外観はまるでピラミッドのようだった。
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