射撃訓練
活躍したので元巴隊員にも、希少肉を与えようとしたが全員辞退した。
「本当なら獅堂隊長に渡したかったですが、弥生が受け取らないなら、私も貰うわけにはいきません」
「小官は何も出来なかったので、その資格はありません」
「うぐぐぐ……天音と弥生が貰わねえのに、アタイだけが肉を食うわけにはいかんだろ」
紅美は心底残念そうだったが、我慢したので偉いと思う。
だいぶ自制ができるようになってきたな。
そして他のメンバーが肉を食べることになる。地味でも良い動きをしてた者達を選んだ。
伊達に審判をしていたわけではない。俺は全員の動きを見ていた。
「ゴチになります」
「マジ美味しい!」
「くそう! 次は私が見せつけて食ってやる!」
仲間達はワイワイ騒いで、夕食は盛り上がった。
食えなかった者達は雪辱に燃えている。
それから日をおいて準備をし、また模擬戦を行った。今度は5人で好きな相手と組ませた。
分隊レベルでの戦闘訓練だ。くどくなるので結果だけを伝えよう。
辛くも優勝したのは静香。やはり元巴隊メンバーには苦戦したが、ギリギリの所で勝っている。
個人としての能力も高いが、やはり判断力と指揮能力が抜きん出ていた。
これは一種の才能で真似できるものではないのだ。人それぞれ得意分野がある。
ただ今回は、一つだけ問題が起きた。
静香と対戦した天音が、あからさまに手を抜いたので厳重注意することになる。
誰から見ても勝つ気がなかったので、噂が更に広まってしまう。
頭を下げて、天音はチームメンバーと俺に謝る。
「大変申し訳ございませんでした!」
「これは実戦訓練なんだからな、誰が相手だろうと八百長は駄目だ! 他の仲間に示しがつかん。次にやったら蛇を食わすぞ」
「准尉、よかれと思ってやったのなら、それは私にとっては侮辱だ。本気を出せないなら、天音のことを嫌いになるからな!」
「ガーン! そんな、静香様! 見捨てないで――――!」
俺の脅しより静香の言葉が堪えたようで、天音はしばらく凹んでいた
少しは反省してほしい。
俺は模擬戦以外にも射撃大会を開いた。もちろん商品つき。
対人戦ではない射的なので、これは自分との戦いとなる。
拳銃・自動小銃・狙撃銃の腕前を見るのが目的だ。
また大型倉庫の中に仕切り板を立てて、小部屋を作り突入訓練をさせた。
入り口と出口があってクリアタイムを競う、いわゆるRTAだ。
訓練目的を俺は包み隠さず皆に伝える。
「これは、敵本部に侵入した想定で行う制圧訓練だ。みんな本気でやってくれ」
「了解しましたー!」
返事は大きかった。目的がハッキリしてれば俄然やる気にもなる。
俺は無意味な命令を出したりはしない。一通り訓練を終えた静香がやってくる。
「室内突入訓練というのもあるんだな。私達は野戦と市街戦しかしたことがなかった。負ければ逃げるだけだったし」
「人が住んでない街もおかしいんだがな、まるで映画のセットのようだ。やはり裏で糸を引いてる者がいるのだろう」
「アラシが言う黒幕だな? 一体誰なんだろう?」
そこに紅美が浮かない顔でやってくる。
RTAの成績は五十点、ただし全ての的に当てており命中率は100%だった。
減点されて半分になってしまい、紅美は愚痴る。
「……大将、ありゃあねえだろ。敵の他になんで少女が出てくんだ? アタイはどうしても反射的に撃っちまう」
的役は機甲羽衣を自動プログラムで動かしてるが、その中には少女のお面を被った機体があるのだ。ちなみに俺が顔を描いた。撃てば減点の民間人を混ぜた理由はある。
「紅蓮姫団本部と鐵乙女団の本部には、軍事教育されてる少女達がいるそうじゃないか? 敵でも境遇は同じだ。中に突入すれば遭遇するかもしれない。だから撃たない判断を培って、保護して欲しいんだよ。子供は敵じゃない」
「……なるほど助ける、脳筋には無理」
「なんだとう!」
話に割り込んできた弥生は納得し、紅美を煽る。ちなみに成績は八十点で現在一番だ。
電光掲示板に名前と順位が表示されていて、機甲羽衣のモニターでも見ることができた。
スコアボードを見て燃えない者はおらず、誰もが上を目指す。
そして成績が低かった者達が、俺に直談判してきた。
「もう一回させてください! お願いします!」
「ああいいぞ、納得がいかないだろうからな」
「ありがとうございます。今度こそは高得点を!」
もともとリトライはさせる気だった。
ただし一人一回までで、一番良かった点で順位が決まる。
商品の肉は十分足りてる。
獲物を多めに狩ってるし褒める理由を適当に作って、順番に行き渡るように調整していた。
これなら不満はでないだろう。静香はとっくに気づいていた。
「相変わらず優しいなアラシ。でも獲ってきてる当人が、一切食べないのは何故だ?」
「……俺の目的のために、みんなを巻き込んでるからな。恩賞の前渡しだ。もし死んだら食えんし……その時は済まないと思う」
決戦を前にして、俺は罪悪感を持ってしまう……今さらだが。
本来守るべき女達を利用してるので極悪人だろう。
しかしここまで来たら退く気はなく、あとは犠牲を出さないように頑張るしかない。
察した静香は笑いながら言う。
「アラシがいなかったら、私達は敵にやられて死んでいた。そうでなくても飢え死にしただろう。だから仲間達はみんな感謝してるし、恩を返したいと思ってる。仮にも軍人なのだから死ぬ覚悟はある。この命、アラシのために使ってくれ!」
「ああ……ありがとう」
俺は静香の気遣いを素直に嬉しいと思った。記憶はないが今は一人じゃない。
ならば甘えて頼らせてもらおう。
「水くさいぜ大将、敵はアタイが蹴散らしてやるぜ!」
「紅美には任せられん。私がみんなを守る」
「……絶対に勝つ」
「小官が敵を打ち破るであります!」
やれやれ、すっかり慰められてしまったな。
でも良い気分だ。
「みんな頼りにしてるぞ」
いよいよ俺達は敵本部へ乗り込もうとしていた。
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うーむ、後書きのねだりネタがつきました。




