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神力の少年兵  作者: 夢野楽人


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35/43

射撃訓練

 活躍したので元巴隊員にも、希少肉を与えようとしたが全員辞退した。


「本当なら獅堂隊長に渡したかったですが、弥生が受け取らないなら、私も貰うわけにはいきません」

「小官は何も出来なかったので、その資格はありません」

「うぐぐぐ……天音と弥生が貰わねえのに、アタイだけが肉を食うわけにはいかんだろ」


 紅美は心底残念そうだったが、我慢したので偉いと思う。

 だいぶ自制ができるようになってきたな。


 そして他のメンバーが肉を食べることになる。地味でも良い動きをしてた者達を選んだ。

 伊達に審判をしていたわけではない。俺は全員の動きを見ていた。


「ゴチになります」

「マジ美味しい!」


「くそう! 次は私が見せつけて食ってやる!」


 仲間達はワイワイ騒いで、夕食は盛り上がった。

 食えなかった者達は雪辱に燃えている。

 


 それから日をおいて準備をし、また模擬戦を行った。今度は5人で好きな相手と組ませた。

 分隊レベルでの戦闘訓練だ。くどくなるので結果だけを伝えよう。


 辛くも優勝したのは静香。やはり元巴隊メンバーには苦戦したが、ギリギリの所で勝っている。

 個人としての能力も高いが、やはり判断力と指揮能力が抜きん出ていた。

 これは一種の才能で真似できるものではないのだ。人それぞれ得意分野がある。


 ただ今回は、一つだけ問題が起きた。


 静香と対戦した天音が、あからさまに手を抜いたので厳重注意することになる。

 誰から見ても勝つ気がなかったので、噂が更に広まってしまう。


 頭を下げて、天音はチームメンバーと俺に謝る。


「大変申し訳ございませんでした!」


「これは実戦訓練なんだからな、誰が相手だろうと八百長は駄目だ! 他の仲間に示しがつかん。次にやったら蛇を食わすぞ」


「准尉、よかれと思ってやったのなら、それは私にとっては侮辱だ。本気を出せないなら、天音のことを嫌いになるからな!」


「ガーン! そんな、静香様! 見捨てないで――――!」


 俺の脅しより静香の言葉が堪えたようで、天音はしばらく凹んでいた

 少しは反省してほしい。



 俺は模擬戦以外にも射撃大会を開いた。もちろん商品つき。

 対人戦ではない射的なので、これは自分との戦いとなる。


 拳銃・自動小銃・狙撃銃の腕前を見るのが目的だ。


 また大型倉庫の中に仕切り板を立てて、小部屋を作り突入訓練をさせた。


 入り口と出口があってクリアタイムを競う、いわゆるRTAだ。


 訓練目的を俺は包み隠さず皆に伝える。


「これは、敵本部に侵入した想定で行う制圧訓練だ。みんな本気でやってくれ」


「了解しましたー!」


 返事は大きかった。目的がハッキリしてれば俄然やる気にもなる。

 俺は無意味な命令を出したりはしない。一通り訓練を終えた静香がやってくる。


「室内突入訓練というのもあるんだな。私達は野戦と市街戦しかしたことがなかった。負ければ逃げるだけだったし」


「人が住んでない街もおかしいんだがな、まるで映画のセットのようだ。やはり裏で糸を引いてる者がいるのだろう」


「アラシが言う黒幕だな? 一体誰なんだろう?」


 そこに紅美が浮かない顔でやってくる。

 RTAの成績は五十点、ただし全ての的に当てており命中率は100%だった。


 減点されて半分になってしまい、紅美は愚痴る。


「……大将、ありゃあねえだろ。敵の他になんで少女が出てくんだ? アタイはどうしても反射的に撃っちまう」


 的役は機甲羽衣を自動プログラムで動かしてるが、その中には少女のお面を被った機体があるのだ。ちなみに俺が顔を描いた。撃てば減点の民間人を混ぜた理由はある。


「紅蓮姫団本部と鐵乙女団の本部には、軍事教育されてる少女達がいるそうじゃないか? 敵でも境遇は同じだ。中に突入すれば遭遇するかもしれない。だから撃たない判断を培って、保護して欲しいんだよ。子供は敵じゃない」


「……なるほど助ける、脳筋には無理」

「なんだとう!」


 話に割り込んできた弥生は納得し、紅美を煽る。ちなみに成績は八十点で現在一番だ。

 電光掲示板に名前と順位が表示されていて、機甲羽衣のモニターでも見ることができた。

 スコアボードを見て燃えない者はおらず、誰もが上を目指す。

 そして成績が低かった者達が、俺に直談判してきた。


「もう一回させてください! お願いします!」


「ああいいぞ、納得がいかないだろうからな」


「ありがとうございます。今度こそは高得点を!」


 もともとリトライはさせる気だった。

 ただし一人一回までで、一番良かった点で順位が決まる。


 商品の肉は十分足りてる。

 獲物を多めに狩ってるし褒める理由を適当に作って、順番に行き渡るように調整していた。

 これなら不満はでないだろう。静香はとっくに気づいていた。


「相変わらず優しいなアラシ。でも獲ってきてる当人が、一切食べないのは何故だ?」


「……俺の目的のために、みんなを巻き込んでるからな。恩賞の前渡しだ。もし死んだら食えんし……その時は済まないと思う」


 決戦を前にして、俺は罪悪感を持ってしまう……今さらだが。

 本来守るべき女達を利用してるので極悪人だろう。

 しかしここまで来たら退く気はなく、あとは犠牲を出さないように頑張るしかない。


 察した静香は笑いながら言う。


「アラシがいなかったら、私達は敵にやられて死んでいた。そうでなくても飢え死にしただろう。だから仲間達はみんな感謝してるし、恩を返したいと思ってる。仮にも軍人なのだから死ぬ覚悟はある。この命、アラシのために使ってくれ!」


「ああ……ありがとう」


 俺は静香の気遣いを素直に嬉しいと思った。記憶はないが今は一人じゃない。

 ならば甘えて頼らせてもらおう。


「水くさいぜ大将、敵はアタイが蹴散らしてやるぜ!」

「紅美には任せられん。私がみんなを守る」

「……絶対に勝つ」

「小官が敵を打ち破るであります!」


 やれやれ、すっかり慰められてしまったな。

 でも良い気分だ。


「みんな頼りにしてるぞ」


 いよいよ俺達は敵本部へ乗り込もうとしていた。

お読みいただきありがとうございます。この作品がお気に召したら

ブックマークと★評価よろしゅうお頼み申す


うーむ、後書きのねだりネタがつきました。

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