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神力の少年兵  作者: 夢野楽人


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決着と表彰

 天音チームはまだ負けてはいない。


 サブリーダーは優秀で強固な陣地が攻撃を防ぎ、弥生チームは攻めあぐねている。

 急いで戻ってきた弥生はメンバーと話す。


「……残ったメンバーは半分、向こうも4人。けど防御面ではあっちが有利、残弾も少ないから最後の勝負をしかける。アレの準備はOK?」


「はい、いつでもいけます!」


「よし、やろう」


 ここで一旦銃撃戦が止み、演習場には不気味な静けさが漂う。

 弥生チームが全員視界から消えたのだ。自陣に戻ったのだろうか?


 サブリーダーは判断を迫られる。


「どうします?」

「うーん……どこに敵がいるか分からないから、陣から出た途端にやられるかもしれない。ここは攻めずに守り続けよう」

「そうですね。籠もってれば負けません」

「どこからか、必ず攻めてくるはず」


 しかし動かずに隠れたままでいると、外の様子は全くわからず、気づいた時には手遅れになってる場合がある。

 俺達と観戦者は動いてる弥生チームを密かに見ていた。


「これは偵察の重用性を思い知らされる。私も敵を発見できずに囲まれたからな。センサー頼みだけではダメだ。やはり自分の目で見つけなくてはならない」


「兵器に隠密装置ステルスはあるし、熱源探知機も水に入るか、冷たい泥をつければ誤魔化せる。完全な物などこの世にはなく、それをどう使って、どう見抜くかが必要だ」


「しかーし、どう足掻いてもアラシだけは見つけられそうもないがな。ははははは!」


「おほん、どうやら決着がつきそうだな」


 弥生チームは姿を現す。

 敵側から見れば、バリケードの上に一つの頭だけが乗ってるような状態だ。


「なんだありゃ⁈」


 それは目の錯覚、バリケードで前が隠されて全体が見えなくなっていたからだ。

 やがて姿がハッキリと分かる。


「前へ! 前へ! 前へ!」

「それ、それ、それー!」


 3人が隊形を組んで馬となり、その上に弥生の機甲羽衣があった。これは騎馬戦だ。

 弥生チームは一丸となって突っ込んでいく。問題なのはバリケードを、軽々と乗り越えてきたことだ。


「ななななな! なんでええええ⁈」


 天音チームは訳が分からず混乱する。

 何のことはない。弥生チームはバリケードの手前に傾斜路スロープを、こっそり作っていただけで、敵側からは見えなかったのだ。


 バリケードで安心してたから、その裏をかかれて利用された。

 そして陣内に突入されてしまう。


「くそう! 撃て撃て撃てえ……あ、弾がない!」

「まだ終わらんぞ! 接近戦だ!」


 乱戦に身構えるも、もはや弥生は戦う気はなかったようだ。


「そおれ!」


「とうッ!」


 掛け声とともに馬役の三人が弥生を高く持ち上げて、勢いよく前へ投げ飛ばしてしまう。


 これはチアリーディングのスタンツか⁈ 


 驚く間もなく、飛んでる弥生は丸まって一回転し、足を伸ばして叫ぶ!


「八雲キィィィック!」

挿絵(By みてみん)


 片足跳び蹴りだ! 狙いは旗。誰もが呆気にとられて固まっていた。

 バキッ! という音ともに旗竿は折られ、弥生は倒れながらも布を掴んだ。


『優勝、弥生チーム』


「うおおおおおおおおお!」


 決着がつき、歓声と怒号が収まらない。そして万雷の拍手が送られる。


「いやあ、最後は凄い戦いだったなアラシ。学ぶべきことが多かった」


「ああ……どこかで見たような……旗がゴールのゲームがあったような、キックで決めるヒーローがいたような……いかんな記憶が混濁している……考えるのを止めよう」


 覚えていたつもりでも間違ってる場合も多く、無理に思い出すと頭が痛くなりそうなので、俺はあきらめる。記憶が戻るのを気長にまとう。

 


 これで模擬戦は終了、俺は演台に立って全員の前で総評を行う。


「初めての模擬戦にしては、皆良くやったと思う。失敗もあったが、逃げずに頑張った姿勢は立派だ。今回の反省点を踏まえ、次の模擬戦を頑張ってほしい。そして何故、こんなルールにしたか説明しておこう」


「はい」


「実戦で味方の大半がやられてしまったら、残った者達が集まって、逃げるか戦うしかないんだ。だから誰とでも組んで協力して生き残ってほしい。もちろん1時間も相談してる暇はないぞ、すぐにリーダーと方針を決めねばならん」


「おお! 大将はそこまで考えていたのか⁈」

「無茶なルールには、それなりの理由があるということだ」

「か、感動であります! 次は頑張るであります!」


 俺の裏の意図を聞いて拍手が沸き起こる。やや照れくさい。


 そして優勝した弥生チームの表彰を行う。


「八雲弥生の指揮と作戦は見事だった。皆も参考に……するといい。さて、商品の肉は俺が焼いてやろうか?」

「いいなー」


 羨ましがる者がいる中、弥生は意外なことを言う。


「……私は肉はいらない。チームメンバーに分け与えて、他に欲しいものがある」


「そうか、なら俺が出来る事なら叶えてやろう。頑張って優勝したんだから、信賞必罰をせねば示しがつかん」


「……うん、私はアラシの世界の事が聞きたい。もっと色んなことを知りたい。二人きりで」


「あー! ズルいぞ弥生! 私も聞きたいです!」

「我も我も!」


「分かった、分かった! みんな落ち着け」


 食い物は食ってしまえばなくなるが、覚えた知識は忘れない限り失われない。

 頭の良い弥生はその価値が分かっている。知識は武器なのだ。


 別な揉め事が起こってしまい、女達を宥めるのに俺は苦労した。

お読みいただきありがとうございます。この作品がお気に召したら

ブックマークと★評価よろしく頼むっちゃ♡

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