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神力の少年兵  作者: 夢野楽人


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33/43

決勝戦

 双方ともに、出だしは中間地点の小競り合いになり、まずは様子見となる。

 弥生も不用意に敵陣を攻めたりはしない。


挿絵(By みてみん)


 天音は今回もトーチカを作り、更にバリケードまで作ったので、陣の突破はほぼ不可能となった。ペイント弾であれば鉄壁の防御と言える。


「実戦とは違い、迫撃砲やグレネードは使えんからな。こう守りを固められてしまうと打つ手がない」


「このまま消耗戦になるかな? アラシ」


「いや、天音も弥生も知恵者だ。まだ一波乱あるだろう」 


 そして塹壕からの撃ち合いが続いてるうちに、弾が命中して数人がリタイアする。

 意外なことに紅美はまだやられておらず、自陣で待機していた。


 初戦が無様だったので、弥生からは何か言われたようだ。少しは反省して自重してるのだろう。

 いつ暴走かるかは分からんが。ここで弥生が攻勢にでる。


 審判の俺達に双方の会話は筒抜けだ。


 また機甲羽衣のセンサーは止めてあるので、敵は視認して見つけるしかない。


「……メンバーが減った。私達がやや不利、こうなったら全員で敵陣を攻めるしかない。ただし紅美は一人で旗の守り」


「了解!」


「あー、分かったよ」


 紅美は命令に逆らわなかった。明日、雨でもふるんじゃないか?

 弥生は他のメンバーと打って出る


「……突撃、のふり」

「クスクス、了解」


 とは言え闇雲に突っ込んだわけではく、有効射程ギリギリのところで、踏みとどまっている。

 集中攻撃されそうになると、すぐに別の場所に移動して攻撃をしかけた。


 これはかく乱戦法だ。防御が崩れるのを狙ってるので、天音もうかつには動けなくなる。

 だが、敵の動きを見て天音は決断した。


「……陣地に残ってるのは紅美だけだな。ならば裏を回って旗を取りに行く。私一人でいい、ここは任せた」


「了解、指揮官腕章あずかります」


 サブリーダーが天音になりすまし、中にいるように見せかけて、天音はこっそり陣から出て行った。


「これもルール違反じゃない! 天音の発想には舌を巻く。私より指揮官の器かもしれない。参ったな」


「固定観念がないのは得がたい才能だ。一部隊を安心して任せる。だがな静香、小隊をあずかるのと、大隊を指揮するのは別物だからな。戦場を見渡す力がお前にはある」


「……そうだろうか?」


「自信を持て、それに天音の作戦が成功するとは限らない。くくくくく」



 時をおかずして天音と紅美が対峙していた。遭うなり二人は罵り合う。


「てめえ一人で来るとはいい度胸だ。アタイが返り討ちにしてやるぜ!」


「丁度良い機会だから、徹底的に叩きのめしてやるぞ、紅美! 獅堂隊長に勝利を捧げてやる!」


 二人の一騎打ちとなり、遮蔽物に隠れながらの撃ち合いが始まる。


「おお! 二人とも中々やるな。紅美は接近戦より射撃をさせた方がいいんじゃないか? 静香。撃つのが正確で上手いぞ」


照準合わせ(エイム)はAIが補正してるはずなんだが、紅美の場合本能で撃ってるからなー……」


「そうか! 敵の動きを読んで勘で撃ってるわけか。これも非凡な才能だぞ、ランダムに動く的を当てるのは本来難しい」


 俺は紅美を見直す。ただの脳筋じゃなかった……いやだからこそか。

 短所が長所になる場合もある。人はやはり面白い。


「くっ! 考えなしの単細胞め!」


 天音の腕も劣るものではなかったが、紅美は弾を避けるのも天才的で、まるで弾道そのものを読み切っているかのようだった。

 天音はかなり不利。しかし紅美には最大の欠点がある。


 ……それは、すぐに調子に乗ってしまうことだ。


「弥生の予想通りだったぜ。『待ってれば、天音くる』と言われたからな、我慢した甲斐がある。さあ覚悟しろ天音! アタイが仕留めてやる!」


 紅美は軽い機体を活かして一気に詰め寄っていく。

 観戦者達はココまでかと思ったようだが、俺達は逆の予想していた。


「准尉は計算高いからな、最初から読み切っていたのだろう。これで勝負は決まった」


「ああ、一騎打ち(・・・・)は天音の勝ちだ」


 天音は逃げるかと思いきや、旗に向かって突進していく。


「うおおおおお!」


 近くに身を守る物はなく、紅美は勝ったと思っただろう。


「バカめ、くらえ! ――――なにい⁈」


 引き金を引くものの、カチカチと音がするだけで弾はでなかった。

 モニターをよく見れば、EMPTYの表示が点滅していた。


「馬鹿は貴様だ紅美! もうお前の銃は弾切れなんだよ! さて旗をいただくとするか」


「くそう! やらせるか!」


 焦った紅美は遮蔽物から飛び出して、天音に突進していく。

あとはパルスナックルで殴るしか手はない。しかし無謀だった。


「出てくるのを待ってたぞ!」


「うがあー!」


 天音は残りの弾丸を撃ちまくり、紅美の機甲羽衣をペンキまみれにする。


『紅美機、リタイア』

「ちくしょう!」


 天音は撃ち合いをしながら残弾計算をして、紅美が撃てなくなるまで耐えていたのだ。

 やはり駆け引きは天音が上だった。天音は旗に近づいて手を伸ばす……


「これで私達の勝ちだ! ――えっ⁈」


 旗を取る直前で軽い衝撃を受け、天音の機甲羽衣が倒れていく。


『天音機、リタイア』


「ばかなああああああああ!」


 機体にはパルスナックルのペンキ跡があり、殴り倒されたのだ。

 やったのは紅美ではない。


「……准尉残念、私の勝ち」


「弥生いいいいいいいい!」


 実は一騎打ちが始まる前に、弥生もこっそりと自陣に戻っていたのだ。


「紅美じゃ、准尉に勝てない」


 そして紅美の後ろに隠れ、機会チャンスをうかがっていたのである。

 これに天音は気づけなかった。目の前の敵に気を取られてるうちに、伏兵にやられるというパターンである。


 またもや紅美を囮にしたわけだが、成功したので見事な作戦と言うほかない。


 しかし、人としては問題だな……。


 まだ模擬戦の決着はついていない。残ったチームメンバーが粘っていた。

お読みいただきありがとうございます。この作品がお気に召したら

ブックマークと★評価ゆたしく うにげーさびら


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