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神力の少年兵  作者: 夢野楽人


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32/43

模擬戦3

「突撃ー!」

「うおおおおおっ!」


 モブキャラチームは果敢に天音の陣地を攻めていた。自陣の守りは2人だけで、他8人は攻撃に回っている。

 攻め主体の戦法に天音は防戦一方に見えるが、敵を陣地までは近寄らせず、まだ五分五分の戦いをしていた。


「敵チームは動き回って的を絞らせず、一点突破を狙っているが天音は鉄壁の守りだ。陣内の遮蔽物を動かし、塹壕と組み合わせて小さなトーチカを作ってる。ただ薄いので実弾なら意味はないが、ペイント弾なら十分に防げる」


「旗の移動は禁止だが、陣内の物を動かしてはダメとは言ってないからな。これは創意工夫をさせる訓練でもあるんだろ? アラシ」


「ああ軍事教本マニュアルを覚えたからと言って、生き残れるわけがないからな。最悪の状況では、手近にある物なら何でも利用するしかない。武器・弾薬がなくても知恵を絞ればなんとかなるものだ」


「ただ糧食だけは必要だがな、ふふ」

「まったくだ。飢えた兵しかいないのでは、戦う以前の問題だ」


 俺達はしみじみ語る。

 今まで敵拠点を攻め落としてきたが、作戦だけでなく紅蓮姫団の兵達が飢えていて、やる気を失っていたから勝てたのだと思う。

 常に空腹では体も頭も動かなくなるわ。セルフ兵糧攻めかよ……。


 まあいい、それも含めて俺が全部終わらせてやる。


「おっ! 天音側が有利になってきたな」


「勝負はついたな」


 モブキャラチームは攻めあぐねてるうちに、一人二人と倒されていく。

 天音は敵一人に対し、味方数人で弾幕を浴びせる戦法を用いたので、これは躱しきれるものではない。

 作ったトーチカのお陰で防御を考えなくていいので、一点集中攻撃ができる。

 地形も上手く利用した堅実な戦い方である。


 天音は確かに有能で、静香が頼りにしてるのも分かる……性癖は知らんが。


「後退だー!」


「追撃だー!」


 敵が態勢を立て直そうと後退したところで、天音は反撃に出る。これぞ機を見るに敏。

 ビビリの指揮官だったら、陣に籠もったままだったろう。

 天音チームは敵を猛追して、モブキャラメンバーを仕留めていく。

 そのまま一気に敵陣に攻め込み、フラッグを奪ってしまう。


 見事な勝利だった。

 

『勝者、天音チーム』


ええー!」

「圧倒的じゃないか!」


 観戦してた者達は、天音の鮮やかな戦術に驚嘆していた。

 なかなかやれる事ではないからな。そして当の本人はというと……


「獅堂隊長、見ててくれましたかー⁈ 私やりましたー! 勝ちましたよー! 褒めて褒めてー‼」

「あ、ああ…………良くやった」


 コッチを見上げて奪った旗を振り回し、大声で叫んで静香に猛アピールしていた。

 良い所を見せられたと思って、嬉しくてたまらないようだった。


 これには静香もドン引きになる。好意を向けるのはまだ良いとして、度を超しているので周囲の視線が痛い。


「ヒソヒソ……」


「そういう関係なのね……」


 隊内で噂が広まるのはあっと言う間。ただそれが静香の耳に入ることはなかった。

 二人の事は触れずにおくのが、暗黙のルールとなったからだ……俺も言わない。


 試合が終わり退場していく両チームに、盛大な拍手が送られた。

 残るは決勝戦。


「ちっ、調子に乗ってられるのも今のうちだ。アタイが天音をぶっ飛ばしてやるぜ!」


「……たぶん、返り討ち」


 紅美はライバルに闘志を燃やしていたが、弥生は冷や水を浴びせる。

 無情ではあるが、下手に取り繕うよりは良い。残念ながら事実なのだ。

 俺の見たところ紅美より天音の方が数段強い。


 これは機甲羽衣の操縦能力ではなく、思考力の差だけどな……ハッキリ言えば頭のデキ。

 そこを埋めることができれば紅美にも勝機がある。かなり難しいが。


 そして弥生は紅美に、何かアドバイスをしてるようだった。



 決勝戦は昼食後の午後から行われる。


 みんなで食事をしながら、どっちのチームが勝つかで盛り上がっていた。


「やっぱり弥生チームだろ、あの抜け目のなさは真似できない」


「いやいや勝つのは天音チームだ。隙のない戦いをされたら、手も足もでないぞ」


「まあ、勝負は時の運だからな。やってみないとな」


 それぞれが意見を出し合って良い雰囲気だった。

 元巴隊も集まって、憎まれ口を叩きながら食卓を囲んでいた。

 結局、仲の良い者同士で集まってしまうものだ。知らん奴がくると白けてしまう。

 

「あー負けて悔しいであります。やけ食いであります、ガツガツ」


「伍長は良くやった。大丈夫だ、私が曹長にやり返してやるからな」


「言ってくれるな天音、アタイがいることを忘れんな!」


「猪突兵など知らん。と言うわけで勝たせてもらうぞ、八雲曹長。獅堂隊長のためにも!」


「……准尉には負けない、欲しい物がある」


 笑いながら双方がにらみ合う。

 互いに一歩も譲る気はなく、勝負を前にして本気だった。


 舌戦トラッシュトークはここまで、いよいよ決勝戦が始まる。

 勝った方が優勝だ。


「元巴隊同士の決勝か。二人とも優秀だから見応えのある戦いになるだろう。これは目が離せんな、静香はどっちを応援する?」


「意地悪だなアラシ。私としては天音と言いたいが、弥生にも頑張ってほしい。それよりも、この模擬戦の本当の意味が分からないと駄目だ。アラシの意図を読めた者が優勝だと思う。肉に釣られてるようではいかん」


「ははははは、それは言えるかもしれないな。ただ俺は完全無欠な軍人になって欲しいわけじゃない。少しでも経験を積んで成長してくれればそれでいい。生き残るためにも」


「やっぱりアラシは優しいな」


 俺は静香に褒められて照れてしまい、顔をそらして試合を見ることにした。

お読みいただきありがとうございます。この作品がお気に召したら

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