模擬戦2
対戦してるのは、椿チームと弥生チームだった。
元巴隊メンバーがリーダーに選ばれたのは、気を使われたからだろう。
新参者がでしゃばるわけにはいかず、軍隊では一日でも先に入隊した者が先輩で、年齢は関係ない。
椿は嫌々やってるようだが頑張っている。
オーソドックスに攻撃と防御に隊員を分けて、自陣にこもって無理な攻めはしなかった。
「教本通りだが悪くない。攻めには向かんが、遅滞戦術のお手本になる」
「月城は真面目だからな、一生懸命に軍学を勉強してる。これなら何処から攻められても守れるし、いざとなれば即座に反撃できる。敵からしたら厄介だ。しかし相手が弥生だからな、何をしでかすか分からん」
「確かに……おっ、動きがあったぞ」
弥生は全員で椿の陣地に攻め込んでいたが、半数は隠れて待機していた。
隙を狙って、ここぞという時に動く気だろう。
ところが、一機の機甲羽衣が単機で突撃してしまう。誰かは言うまでもない。
「おりゃあああ! 肉はアタイのもんだー!」
紅美が焦れて勝手に動いていた。命令よりも欲望が優先している。
見ていた俺達は頭を抱える。
「なんてこらえ性がない奴だ。これを実戦でやられたらたまらんぞ」
「はあー……紅美はどうしようもないな」
当然砲火が集中するのだが、紅美は機甲羽衣を巧みに操り、なんとペイント弾を躱し続けたのだ。
かすりはしたが当たり判定にはならない。頭はともかく反射神経だけは凄いな。
それと機甲羽衣を接近戦仕様にし、装甲を薄くしたので機体は軽くなり、素早い動きが出来るようになっていた。
「へへへ、そんなへなちょこ弾には当たらないぜ!」
脳筋は調子にのって小馬鹿にしていた。
これにチームは慌ててしまうが、リーダーの椿は冷静だった。
「大丈夫であります。どうせ軍曹は長く続きません。焦らずに狙って撃つであります」
「了解!」
「うっ!」
前進しすぎた紅美は隙間のない弾幕のせいで、後ろに下がるしかなくなる。
そりゃあそうだ。そう簡単に接近戦に持ち込めるわけがない。そして――
ドキューン!
『紅美機、撃墜されました。モニターを閉じます』
「うがあああああ! やられたあああああ!」
椿が狙撃銃で紅美を仕留めていた。見事な腕だ。
撃墜判定された機甲羽衣は、中が真っ暗になって外が見えなくなるので、ゾンビ参加はできない。
リタイアした紅美に対し弥生は、
「……やっぱりアホ。でも負けない、全機突撃!」
「了解しました!」
一人欠けて不利になったものの、どうやら弥生は最初から紅美を、囮にするつもりだったらしい。
なぜなら紅美がいた場所は弥生達とは逆の位置で、気を取られてる内に椿達の背後は無防備になっていた。
「く、奮戦するであります!」
「……残念伍長、私の勝ち」
弥生チームの猛攻は早く、椿は部隊を立て直す暇がない。
しかも一列縦隊で突撃されて先頭はやられ役。残った者達が陣内で暴れまわり、どうしようもなかった。
機甲羽衣はペンキまみれになってしまい、椿チームは全滅した。
そしてAIが宣言する。
『勝者、弥生チーム』
「うおおおおお!」
「よく頑張った! 感動した!」
演習場内で大歓声が沸き起こる。良い試合だったので誰もが興奮していた。
正に手に汗握る戦いで、俺も見ていてかなり面白かった。
「無念であります……」
「次こそは!」
機甲羽衣のモニター画面が戻り、引き上げていく椿達にも拍手が送られる。
負けはしたが、この悔しさをバネに成長してほしい。
興奮冷めやらぬまま、次の模擬戦が行われる。
演習場はそれほど荒れてないので、このまま続行だ。
「気合い入れていくぞー!」
「おう!」
試合を見た次のチームは真剣になって、負けたくないという気持ちが前に出てくる。
目の色が変わり本気になっていた。次の対戦前に俺は感想を言う。
「弥生の作戦は良かったが、仲間を犠牲にするような戦法はいただけない。追い詰められたら仕方がないが、やる時は無人の機甲羽衣を使うように言おう」
「賛成だアラシ、実戦でやったら味方に恨まれるだけだ。それにしても高台から、全体の動きを見てると参考になるな。兵士の動きは様々で癖があり、良い面と悪い面がある。アラシは私にこれを見せたかったのか?」
「そうだ。今後静香は部隊長として、戦場を大局的に見極め全体指揮をしてもらう。前にも言ったが、俺は単独で動くから嵐隊は任せる。アドバイスとしては戦線を維持するのを優先し、勝つことよりも負けない戦いをするんだ。あと部下を大事にしろ、その間に俺が決定打をうつ!」
「……分かった、アラシ。責任重大だがやってやるぞ!」
やる気があるようで何よりだ。部下思いの静香なら上手くやれるだろう。
あとはひたすら経験を積むしかない。シミュレーションはお遊びで、実戦では何が起きるか分からないからな。
「どうやら準備が終わったようだな」
「ああ」
俺達は次の模擬戦を見ることにした。
2回戦は、天音チーム VS モブキャラチームだった。
ツッコミはなしでお願いしたい。かませ犬でも相手がいないと勝負はできないのだ。
作者が「名前つけんのめんどくせー」で、こうなったわけではない……たぶん。
ゴホン……これは置いといて、合図と共に模擬戦が始まった。
静香は笑いながら見ている。
「天音がどう動くか楽しみだ。もちろん負けたら許さない」
「意外と厳しいな、静香」
「期待の表れだ。副官として信頼してるからな」
さて、当の天音はどう思ってることやら……これは本人同士に任せよう。
俺は何とも言えない気持ちで、戦いを観戦していた。
お読みいただきありがとうございます。この作品がお気に召したら
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