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神力の少年兵  作者: 夢野楽人


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30/43

模擬戦1

 ガチ喧嘩になる前に俺は肉を取り上げて、冷凍庫に入れるように言った。

 このまま闘えば格闘技を覚えた紅美が有利で、相手が怪我する恐れがあったからだ。


 まずは大声で全員にさとす。


「力こそ正義で何をしても良いとなれば、規律ルールはなくなって、終わりのない報復だけになる。寝てる時やトイレの間に殺されるか、恨みを持った仲間から後ろから撃たれるぞ。以後、仲間同士の争いは禁止する。文句があるなら俺が相手になろう」


「了解しました」


「うー、分かった。大将には従う」


 紅美も俺には逆らえない。

 しかし、争いの種は残ったままなので静香が聞いてくる。


「でも肉の分配はどうしよう? アラシ。少ないから全員で分けるわけにもいかないし……」


「そこでだ、訓練を兼ねた競技をやろうと思う。それで勝った者達に肉をやろう。負けても活躍した者には与える。競技は機甲羽衣を使った模擬戦だ」


「おおっ!」


「……具体的には、どうするの?」


「部隊を8名ずつの4チームに分けてトーナメントを行う。内容は陣地に立てた敵旗(フラッグ)を奪うか、ペイント弾で相手を全機倒すか、で勝敗を決める。当たり判定はAIにさせるから公平だ。ただしチーム分けはランダムとするので誰と組むかは分からない。そして各チームは1時間で相談して、リーダーと作戦を決めねばならない」


「これは厳しいであります!」

「好きな奴とは組めないわけか……」


 この条件に皆が騒ぎだすが、あえて理由はいわない。教えるのは簡単だが自分達で考えてもらいたいのだ。


「今日は模擬戦の準備をするとしよう。敵が使っていた演習場があるので、そこを整備する。あと機体が赤一色では分かりにくいから、機甲羽衣の頭と肩をパートラッピングして色を一部変える。もしくはスプレー塗装なら時間はかかるまい」


「なるほど」


「あと、弾数は制限するが武器は自由だ。近接戦で殴ってもかまわない。それと俺と静香は不参加で審判だ。全体の動きを上から見て、ドローンも使って録画する」


「了解した、アラシ」


「それでは準備開始だ」


「「「了解!」」」


 そうと決まれば全員が動き出す。俺の指示通りに模擬戦場をテキパキと作り、自機の整備に余念がない。


「これはテンションが上がるな」

「敵になっても恨みっこなしだぜ」

「肉は私のもんだ!」


 敵から奪った機体を自分用にカスタマイズしてたから、ようやく使う機会がやってきたので、楽しくて仕方ないのだろう。


 人が死なない戦闘だからこそ本気でやれる。兵士の娯楽だ。

 商品つきとなればやる気もでるし、模擬戦は始まる前から盛り上がっていく。



 次の日。


 朝食のあとにチーム分けを発表する。これもAIにさせたので手心はくわえてない。

 元巴隊はバラバラになったが、


「……ああ紅美と、同じチームだなんて」


「おう! よろしくな弥生」


 弥生は心底嫌そうな顔をして、喜んでる紅美とは対象的だった。

 気持ちは分かるが頑張れ。あとは機甲羽衣の頭と肩の塗装をしてもらう。


 赤のほかに青・黄・緑の明るい色を使うのは、敵味方をハッキリさせるためだ。

 ただ黒もそうだが、実際の戦場では目立つので使えない。いずれ機甲羽衣の全機を迷彩色に変えようと思っている。


 そもそも原色を使ってるのが変なんだよなー、発見してくださいと言わんばかりじゃないか。


 金色とか白色は論外で、そんな派手な機体はないよな?


 そして、各チームごとに分かれてのミーティング。


「いやいや、お前がリーダーをしろよ」

「負けたら責任とれんわ!」


 円陣を組んで遠くで話してるのだが、大声なので会話が聞こえてくる。

 予想通り揉めているので狙いどおりだ。静香が話しかけてくる。


「私も隊長だから分かる。部下をまとめるのは大変だからな、命をあずかるから責任も重大だし。アラシの意図がだんだん読めてきた」


「そうか。戦場でまず大切なことは生き残ることだ。そのためにはどうするか? 常に考えねばならない。敵は待ってはくれないからな」

「ああ」


 リーダーがあっさり決まったチームもあれば、時間ギリギリに決まったところもある。

 作戦を考えてる暇はなかっただろう。ちなみに、そのチーム・リーダーは椿だった。


「伍長の私がリーダーなんて、おかしいであります!」


 月城は嘆いていた。嵐隊では少し先輩なので、多数決で押しつけられたようだ。

 まあよくあることだ。

 俺はみんなに経験を積んでほしいので、失敗してもかまわないのだ。そこから何かを学んでくれればいい。

 

 早速一回戦だ。模擬戦場に二つのチームが自陣の配置につく。


「試合開始!」

「うおおおおお!」


 号砲を合図に試合が始まり、歓声と怒号がそこら中に響く。


「ガンバレー!」

「おらおら、根性をみせろ!」


 次の試合をするチームは応援と見学だ。目の前の戦いを参考にしてもらう。

 誰もが興奮して本気で叫んでるから、かなりやかましい……野次も多いな。


 俺と静香は演習場を見渡せる高台で見ていた。


「うー、戦いを見てるとウズウズする。次は参加させてくれアラシ」


「そうだな、前線指揮をする場合もあるからな。何でもこなしてもらおう」


 そして俺達は白熱する模擬戦を見ていた。

お読みいただきありがとうございます。この作品がお気に召したら

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― 新着の感想 ―
主人公・アラシのプロローグでの無双シーンから、少年となって以降の頭脳戦を交えた戦いまで、とても面白く拝読させていただきました。 ミリタリー感もたっぷりで、細かなディテールまでしっかりしていて、終始楽し…
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