嵐隊結成
元捕虜達は俺達の仲間になることになった。
静香達が上手く誘ってくれたらしい。これだけいれば敵本部へ攻め込める。
ただ食い扶持が増えた分、もっと狩りをしないとな。俺は絶対に飢えさせねー!
次の日からは忙しかった。役割分担を決めて仕事をしてもらう。
やることは保存食作りと機甲羽衣の整備で、敵主力が戻って来る前に、入念に準備せねばならない。
中継基地に細工をしたので時間は稼げるだろう。
仲間が増えたので、静香は喜んで俺と話す。
「これから敵本部に殴り込みをかけるかと思うと、胸熱で私はワクワクしている。鐡乙女団で誰もやったことはないし、兵士冥利につきるというものだ」
「その気持ちは分かる。攻め落として凱歌をあげてやろう」
「ああ! ところでアラシ、我らは新たな集団として名乗りたいが何がいい? いつまでも巴隊と元捕虜達では格好がつかん。私としてはアラシ団がいいが、ついでに機体色も変えたいと思う。どうだろう?」
俺は少し考えてから言った。
「機甲羽衣は赤のままでいい。敵味方を分からなくして、紅蓮姫団を混乱させる。ただ味方と識別するのにエンブレムをつけよう」
「なるほど流石だな。それで文字は?」
「漢字の『嵐』にするか。それと俺の存在は隠したいから、団を名乗るのは止めとく。規模も小さいしな」
「分かった。これから私達は『嵐隊』だ!」
「あ、ああ……」
少しためらったのは、「荒らしたい」とも読めるからだった。軍隊としてはやばいな。
勇ましいから、まあいいか。
これを静香が伝えると全員が賛成する。前もって言ってたのだろう。
これは鐵乙女団を捨てる覚悟の表れなのだ。
ここにきて不満が爆発し、みんな上層部の悪口しか言わなくなる。
「装備も食糧もないのに、どう戦えってんだ? 上が手本を見せやがれ!」
「何であんな意味のない戦いをしてたんだろうな?」
「紅蓮姫団の次は、鐵乙女団をぶっ潰してやる! 氷花の野郎にはお礼参りだ!」
「大賛成であります! 久遠軍曹」
士気は上がっていく。場合によっては、紅美の言うとおりに動くかもしれない。
まずは目の前の敵だ。
――農園基地を奪ってから数日が過ぎる。
平穏無事とはいかず、ちょっとした騒動は起きていた。
「ほれほれ天音、エサのミミズちゃんだぞ。針につけて釣りをしろー!」
「くそう、覚えてろよ紅美! ウネウネ、いやああああああ!」
二人が追いかけっこをしていた。難なく解体をこなせる天音も、ミミズだけはダメだったらしい。
誰でも苦手な者はあるからな。少し紅美はやりすぎなので、お灸をすえよう。
「そこまでにしておけ紅美。じゃないと、コレを食わすぞ!」
「ぎゃああああああ! 蛇いいいいいいい! 許してくれ大将ー!」
近くにいた一匹を捕まえて見せただけなのだが……あ、かなりデカかった。
予想以上に反応が大きくなる。
「うーん、バタンキュー……」
「無理無理無理むりムリ! それを食べるなんて絶対無理!」
女達の悲鳴が収まらない。
大騒動になってしまい、静香が駆けつけてきて俺は叱られた。
「アラシ! あれほど蛇と虫だけはヤメてって、何度も言ったでしょ⁈」
「……ごめん」
静香が本気で怒ったので謝るしかなかった。俺の方が悪者になってしまう。
その他は順調。
食料班と整備班に分かれ、交代しながら作業をしてるので遅れはない。
みんな真面目に働くので、俺はアドバイスするだけで良かった。
敵の本拠地を叩く日は近い。その時こそ、この世界の秘密がわかるだろう。楽しみだ。
そして敵にも動きがあった。
無線も交代で傍受していたら、久々に情報が入ってきた。ツヴァイに行った敵主力は空振りに終わり、農園基地が奪われたので帰還命令が出されていた。
敵士官がやり取りした内容を聞くと、上官とかなり険悪な雰囲気になっていた。
どうやら俺達の行動を予測してたが、上層部はそれを無視したらしい。
切れ者を警戒すると同時に、意見が通らず可哀想に思えた。
「これで中継基地に戻ったら絶望するだろうなー」
「……アラシは甘い、情け深い」
「俺は敵だろうと、女を守りたいのかもしれんな、弥生」
これが男だったら話は違ってくるだろう。殺すのをためらわない気がする。
記憶はないが、たぶん経験からきている……何かあったのだろう。
俺は頑張って頑張って、毎日狩りをしていた。男は辛いよ……女だと思われてるが。
乱獲が心配になるが超能力で調べたところ、野生動物は多いようなので、もっと獲っても大丈夫だろう。自然が広くて人はいないしな。
新たな仲間達も、すっかり獣の解体に慣れて談笑しながら作業をしていた。
やっぱり最初の、(心の)痛みを超えてしまえば楽になるんだよ。
だが……
「そいつはアタイのもんだー!」
「いいえ、私が食べるのよ!」
美味い部位の奪い合いが始まってしまう。巴隊でも揉めたが、その時はまだ肉を分け合えた。
しかし人数が増えてしまったので、もはやそうはいかない。
大人数でも分け合うという馬鹿な思想もあるらしいが、それは絶対に絶対に不可能なのだ。
あと「田分け」という言葉を俺は思い出す。
田畑を兄弟で分割相続していくうちに、子孫は住む場所さえなくなり、最後は乞食になってしまうというオチだ。
実にアホらしい。
だからこそ人は争って奪いあいになる。ああ、世知辛い世の中だね。実に哀しい。
……などと他人事のように言ってる場合ではないな。
仮にも俺は総隊長なのだから、揉め事は仲裁せねばならない。俺は静香を呼んで、全員を集めさせた。
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