表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神力の少年兵  作者: 夢野楽人
第一章 解放編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/43

モノローグ 獅堂静香2

 アラシと天音が狩りに出かけたところで、私はみんなに言う。


「諸君らを鐵乙女団の本部へ送ってやりたいとこだが、ここからでは距離が離れ過ぎていて無理だ。我ら巴隊はアラシについていくが、諸君らにも来てほしい。もちろん無理強いはしないし、一緒に戦わなくてもいいぞ」


「えええええええ⁈」


 元捕虜達は、ますます混乱してしまった。

 幼少から戦争だけを教えられてきたから、それ以外の生き方を知らないのだ。

 私もアラシに出会わなかったら、考えが変わることはなかっただろう。


 上の命令に従い、敵と戦って死ぬ――実にくだらない! やってられるか!


 ……自由。


 アラシに聞いたこの言葉で目覚めた。もう誰も私を縛れはしない。

 ただアラシのためならこの命をかける。

 

 元捕虜達もじっくりと考えてほしい。今はやるべきことがある。


「考えるのは暇な時でいい。それよりも食料だ。収穫できる物があったら集めてくれ。毎日食べるし、人数が増えたからたくさん必要になってくる。それとアラシが獲ってくる獣の解体方法をレクチャーしておく。これは絶対に覚えてくれ」


「あ、ああ……」


 生返事なので、何をするか分かった者は誰一人いないだろう。

 血や肉が飛び散る(スプラッタ)とは思ってもみまい。

 私と部下達も最初はエラい目にあったが、今では肉の奪い合いだ。


 彼女らもそうなるだろう。まあ、慣れるまでが大変だが……ふふふふふふ。


 いかんな、思わず口元がゆがんでしまう。


 私は同じ目に遭う仲間が増えるのを喜んでいる。やはり人は度し難いな。

 そして昼過ぎにアラシと天音が戻ってくる。トラックの荷台には数頭の鹿と猪、そして山鳥が積んであった。


「流石だぜ大将!」

「解体を急ぐであります!」


「冗談だろ……これ全部一人で獲ってきたのか⁈」


「これは夢か……そうだそうに違いない。ここに獣の山が有るわけがない!」


 これを見て巴隊の連中は大喜びし、元捕虜達は仰天していた。

 鹿一頭だけでも百食以上になるだろう。相変わらずアラシは凄いとしか言い様がなく、糧を与えてくれるので感謝だ。

 私は天音と一緒に獲物を降ろしながら話を聞く。


「私はトラックで待機してたのですが、彼女は数十分もしないうちに獲物を仕留めてきては、また狩ってくるのです。異常としか言いようがありません。しかも銃声はなく獣には弾痕があるだけ。これも『力』とやらなのでしょうか? 隊長」


「たぶんな。私も獲物の運搬をさせられたが、狩りをじかに見たことはない。アラシが言うには、獣は人の臭い・気配・足音に敏感で、近づいたら逃げられてしまうらしい。だから彼女は一人で狩りをしている。存在を隠せるから敵基地にも潜入できるのだろう」


「……なるほど、只者ではないということですね」


「ああ、ただ彼女の詮索はしない方がいい。一部しか記憶は戻ってないと言ってるし、アラシは他人を信用してないようだ。過去に何かあったのかもしれないから、刺激しないようにしている。いずれ打ち解けてくれるのを待とう」


「はいそうします。ですが、私の上官は獅堂隊長だけです!」


 私は思わず笑みをこぼす。

 天音の心酔ぶりは嬉しいような恐いような……そこに悲鳴が聞こえてきた。


「血いやああああああ!」


 元捕虜達は、初めて月経血を見た乙女のように叫んでいた。生理を知らないと死ぬかと思うからね。

 解体作業は一種の洗礼でサバイバル訓練なのだ。生きるには食わねばならない。


 そのためにも、手を汚すことを恐れてはいけない。


 ちゃんと処理をしないと食中毒や病気になってしまうから、巴隊の連中は厳しくしごいていた。


「へへへ、泣いても叫んでも許しはしないぜ!」


「いやー! 誰か助けて――――!」


 逃げる者らを紅美が片っ端からとっ捕まえて、血抜き作業をさせている。

 台詞だけ聞くとやばい感じもするが……。


 ただ意外だったのは、天音が一言も叫ばなかったことである。初めてのはずだが。


「ちっ、面白くねえな。悲鳴を上げるのを楽しみにしてたのに」


「私は衛生兵でもあるからな、治療は何度もしてきたし、血なんか見慣れたものだ。こ、こんなものは屁でもない」


 ……多少、やせ我慢はしてるようだ。


 なんやかんや作業が進んだところで私は言う。


「内臓の取り出しは私達がする。失敗するとウン……こ、困ったことになるからな。獲物をダメにしたくないから、まずは見学して覚えてくれ」


「……はい」


 もう歯向かう者はおらず心が折れていた。誰もがげんなりしている。

 ただ獣の内臓を見た途端に卒倒、あるいは逃亡者が続出する。


 初めて見たらキツいからね。すかさず巴隊が確保に動く。


「……おらおら、ジダバタ、すんじゃねえ」

「目をそらしてはダメであります!」


「いやあああ! そんな、大きくてグロいものは見たくない‼」

「もう堪忍してえ!」


 決してイジめてるわけではありません。巴隊はからかって遊んではいません。

 彼女らを思って心を鬼にして、一生懸命に指導してるだけです! 邪推はしないでね♡

 阿鼻叫喚の中、初めての体験会は終わる。



 そして楽しい夕食の時間がきた。

 

「さあ、今日も焼き肉パーティだぜ。獲ってきてくれた大将に感謝しな。あたいらと一緒にいれば、お前らも食いっぱぐれはないぞ」


「もう二度と飢えるのは嫌であります。あー、鹿肉美味しい!」


「……はむ、はむ、はむ」


「紅美がまともな事を言うとはな。確かに基地に帰還したところで、また少ない配給で過ごすことになる。空腹はしんどいなー、ガツガツ」


 巴隊の連中は肉を美味そうに食べながら、元捕虜達を仲間に誘っていた。

 上手いやり方で、これで大きく心が傾くだろう。私だって原隊に復帰する気はない。

 元捕虜達は解体ショックがまだ抜けてはいなかったが、思い出さないように目をつぶって肉を食べていた。

 

 当たり前だが人は食わねば生きられないので、これは我慢できない欲求なのだ。


 味方も敵も食わせてくれないとなれば、腹を満たしてくれるアラシにつくだろう。


 夕食の後で彼女らは言った。


「私達もついていきます」


「ああ、これからよろしく。歓迎するよ」


 こうして全員が新たな仲間となる。戦力が大幅アップしたので嬉しい。

 まとめるのは大変かもしれないが、アラシがいれば大丈夫だろう。


 彼女に勝てる者はいないのだから。

お読みいただきありがとうございます。この作品がお気に召したら


ブックマークと★評価よろしくお願いします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ