バーベーキューパーティ
仕込みは終わり、後は農園基地を制圧するだけだった。
やった事はツヴァイの時と同じく、武器格納庫の閉鎖だけ。
甘い考えかもしれないが、敵の農務兵は武器の携帯をしておらず、抵抗もせずに降参すると見込んでいる。
ただそうなると監視が出来ないので、逃げだす者は出るだろうし、もしくは反撃してくる可能性もある。
たった五人と知られれば、捕虜になっても逆らうかもしれない。
そこで静香の部下である天音に、捕虜達と反乱を起こすように促したのだ。
食い物の入った段ボールを部屋の前に置き、農具置き場に武器を隠しておく。
それでも、戦ってくれるかどうかは不安だったが、
「大丈夫だアラシ、准尉は必ず動いてくれる」
「ふん、天音は静香のためなら命すら投げ出すだろうよ」
「……隊長に、ベタ惚れ」
えー……もしかしてそれは、同性愛というやつではないのか?
女しかいないし……ゴホン。
まあいい、そうした固い絆で結ばれてる兵士は互いを思って、信じられない力を発揮するものだからな。
しかし静香は首を傾げており、これは部下の片想いだろう。
そして夕方になって作戦を開始する。
今までは朝方だったので意表を突いた形になるが、夕暮れも気が緩みやすい。
迫撃砲が合図で、機甲羽衣に乗った紅美達が突撃していく。静香は全体の指揮。
「オラオラオラ! 死にたくなかったら降参しやがれ!」
「……抵抗は、無意味」
「投降したら絶対に殺さないであります!」
破裂音だけで農務兵は驚き、威嚇射撃だけで右往左往していた。
これでは新兵か予備役に近い。訓練はしてても前線にでたことが一度もないのだろう。
「うわわわわ、敵の襲撃だああああああ!」
「どっから現れたんだー⁈」
予想通り逃げ惑い、格納庫が開かないとみるや、あっさりと諦めてしまう。
ああ根性がない、少しがっかり。
「降参しまーす。殺さないでー!」
農務兵らはさしたる抵抗もなく降参した。ここからが問題だ。
周りに煙幕を焚いて誤魔化しているものの、たった五人と気取られるわけにはいかなかった。
俺は姿を見せずに様子を見ていた。もし暴れる奴がいたら、念力で気絶させるつもりだった。とにかく殺したくはない。
そこに、
「うおおおおおー!」
小銃を持った捕虜達が駆けつけてきてくれた。どうやら静香の部下が行動してくれたようで、俺はホッとする。
静香達は天音と話して指示を出していた。後は任せていいだろう。
敵捕虜達を広場に集め、元捕虜達が見張ることとなる。俺は別な仕事があるのだ。
格納庫の閉鎖を解いて歩いていくと、天音が近寄ってきて敬礼してきた。
「自分は巴隊副隊長、天羽天音と申します。貴女が協力者とお見受けしましたが、間違いありませんか?」
「ああ、アラシ・テンマだ。静香達から話は聞いてる。これからよろしく……と言いたいとこだが明日に詳しく話そう」
「はっ! 了解しました。この度は私と仲間を助けていただき、真にありがとうございます!」
静香を呼び捨てにしたので、天音は少しムカついたようだった。顔を見れば分かる。
それでも紅美のように、突っかかってこないのでまだマシ。
礼儀を弁えているし、俺を警戒してるようだった。天音からしたら怪しい男だからな。
俺は静香に話しかけ、この後の指示を出すと驚かれた。
裏方なので俺は顔は出さずに、静香を代表として表に出す。子供では舐められるしな。
それとまだ敵に、俺の存在を知られるわけにはいかなかった。気づいてる者もいるとは思うが……。
「……分かった。しかしこれは前代未聞だな」
「これも将来を見すえてのことだ」
「感動であります! アラシ殿」
日は落ちて暗くなり、大きな焚き火の明かりだけが広場を照らしている。
敵捕虜を前にして静香が急ごしらえの演台に立つ。周りには武装した味方がとり囲んでいた。
元捕虜達を合わせてもコッチは三十人ほどしかいないので、敵兵の方が圧倒的に多い。
そこで静香が大声でハッタリをかます。
「ここ農園基地は我々が占拠した。私達は先遣隊に過ぎず、いずれ鐡乙女団の主力がやってくる予定だ。ここから私達は攻勢にでる!」
「うう……」
もちろん大嘘だが、これに敵捕虜達はざわついてしまう。
これからの不安もあるだろう。捕虜としての辛い生活が待ってるかと思えば暗くもなる。
しかし、静香は明るく思いがけない事を言った。
「さて諸君らは奮戦空しく、降伏せざるを得なかったわけだが、明日の朝には解放しよう。今夜は敵味方関係なく、一緒に肉を食おうではないか!」
「えっ⁈」
俺と巴隊が夕食の準備をしていたのだ。元捕虜達も手伝ってくれた。
鍋を叩く音に皆が振り向くと、金網の上で香ばしく焼けてる肉が、ジュウジュウと音を立てていた。
誰もがゴクリと喉を鳴らして、口の中に溜まった涎がこぼれてしまう。
紅美が叫ぶ。
「ちゃんと具の入ったスープもあるぞ! さあ遠慮せずに食え!」
「うおおおおお!」
空腹に勝てる者などいない。
目の前に食い物があって我慢できるわけもなく、全員が突撃して争うように食べ始めた。
農務兵達も痩せこけており見るに耐えなかったので、俺は全員に食わせることにしたのだ。
これで魚と肉の備蓄は消えたが、また狩ってくれば良いし、分捕った食料はまだまだある……不味いレーションだが。
BBQパーティが終わると、
「美味かった!」「ありがとう!」「感謝する!」
「あ、ああ…………チラッ」
敵兵から静香は礼を言われて、ばつが悪そうだった。コラコラ俺を見るな。
これからも公の場では矢面に立って貰うぞ、くくくくくくく。
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