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神力の少年兵  作者: 夢野楽人
第一章 解放編

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モノローグ 天羽天音

 ようやく今日の農作業が終わり、私は部屋へと戻ってきた。


 中に照明はなく狭い部屋でベットだけが置いてある。鍵はなくとも捕虜収容所。

 毎日の仕事でヘロヘロになっているので、脱走する気など起きなかった。

 それ以前にお腹が空いてたまらない。


 肉体労働の割には食料配給が少なすぎる。じゃあ、敵の農務兵が多いのかと言われたら、量はあまり変わりなかった。

 生産したほとんどの食料が各拠点へ運ばれていて残らない。生産性が悪いので、作っても作っても足りない。まるで私達は農奴のようだった。

 仕方ないので味方の捕虜達と、水を飲んで我慢する毎日だ。


 ……ああ、いつまで生きてられるだろうか? そう長くはないだろう。


 私は窓から★空を見て思う。


「隊長は逃げられただろうか? 無事でいるだろうか? あの凜々しいお顔を、もう見られないのが辛い。美しい唇をねっとりと舐めたかった。ああ、抱き合って愛を語りたかった」


 コンコン


 身もだえしてると、ノック音が聞こえてきて我に返る。ムカッ!

 楽しい妄想が止められて、疲れてる私は不機嫌になる。

 こんな時間に一体どこのドイツだ。バカは紅美だけでたくさんだ。


 文句を言ってやろうと私はドアを開けたが誰もいない。イタズラかと思い、辺りを見回して見ると、


「こ、これは⁈」


 置いてあったのは大きな段ボール箱。それよりも私の目を引いたのは上にあった手紙。

 大きい字で、【天音へ】と書いてあった。私宛だ!


 この美しい筆跡を忘れはしない、忘れるはずもない! 獅堂隊長の字だ!


 私の下手な字とは比べものにならなかった。

 驚いて思わず大声を出した私は、手で自分の口を塞いでから、急いで箱を中に入れた。

 見張りがいないので気づかれなかったようだ。


「早く読まないと!」


 喜びのあまり手が震えてしまう。

 なんとか星明かりで手紙を読み進め、私は嬉しくて小躍りしてしまう。

 隊長が生きていてくれたのも喜ばしいが、私を救いに来てくださったのが、何よりも嬉しい。


 ああ、やっぱり私の王子様だ。ただ、


「この協力者というのが気になるが、他の仲間達も生きていたのは良かった……紅美はいらんが」


 段ボール箱の中身は食料、干し肉や塩漬けの魚などでかなりの量があった。

 これを味方に配って力をつけてもらい、隊長の作戦に協力してもらうのだ。


 作戦は内部からの反乱で、決行は明日。


 しかし今日は興奮して眠れそうもない。隊長を思って手○みしたいとこだが、ここは我慢だ。

 疲れては本末転倒。静香様に早く会いたい!



 ――早朝、起きてからいつもの配給所へと向かう。


 たった一杯のスープを飲んでから農作業をさせられる。やることは決まってるので、監視がつくこともない。


 それでも慎重に私は動く。捕虜仲間とのミーティングの最中に隊長の計画を話した。


「助けが近くに来ている。みんな協力してくれ!」


「そんなの嘘だ! こんな敵地の奥深くまで来られるもんか!」


「証拠はある。みんな道具置き場まで来てくれ」


 いつもの作業ルーティンなので怪しまれることはない。

 そこで私は巧妙に隠されていた小銃と拳銃、そして弾薬を見せた。

 どうやっていつ運ばれたのかは分からない。たぶん協力者とやらが用意したのだろう。


「凄い……マジだった」


「食料も寄越されたから、みんなで食べよう。今日は仕事をサボって夕方に備えてくれ」


「ありがたい!」

「分かった、やってやるぜ!」


 焚き火で温まるふりをしながら、肉と魚を焼いて食べた。みんな腹を空かしていたので涙を流している。私も隊長に感謝しながら頂いた。

 飢えるのは本当に辛い、久々にやる気と力がわいてくる。

 銃だけあっても動けなかっただろう。全員の目つきが兵士に戻る。

 あとは作業をサボリながら待っていた。


 ――ついにその時が来る。夕暮れ時に騒ぎが起きた。


「敵襲!」


 の声と同時に爆撃が響き渡る。迫撃砲の攻撃で、これが合図だ。


「私達もいくぞ!」

挿絵(By みてみん)


「おう!」

「うおおおおおー!」


 私達は隠しておいた銃を手に取って駆け出す。突撃開始だ!

 このまま飢えて死ぬよりはマシで、誰もが恐れ知らずになっている。

 機甲羽衣が相手だろうとかまわない。


 生身の農務兵が相手なら、こっちが有利だ。敵が武装する前に攻撃する。


「な、な、なんで捕虜が武器を持ってるんだー!」

「うそだろ⁈」


 案の上、農務兵はこちらを見た途端、驚いて逃げだしてしまう。

 私達は威嚇射撃をしながら追い回した。

 敵は反乱されるとは思ってもおらず、慌てふためいて逃げ回った末に、両手を上げてしまう。


「降参しまーす。どうか殺さないでー!」


 切実な思いが伝わってきた。もともと戦闘が専門じゃないからな、それに虐められたわけではなかったので、殺すには忍びなかった。

 味方の捕虜達も同じ気持ちだったので、投降した敵兵を広場に集めて監視することにした。


 これで立場は逆転したが、


「問題は敵の機甲羽衣だ。確か格納庫に三十機はあったはず。押さえにいくぞ!」

「わかった!」


 出てこられたら戦況は一気に覆る。私は焦りながら仲間達と格納庫へ向かう。


「くそっ! 遅かったか!」


 待ち構えていたのは三機の機甲羽衣。万事休す……と思ったら、


『よう天音、悪運強く生きてやがったな』


 一番聞きたくない声が耳に届く。乗っていたのは紅美の奴だった。


『天羽副隊長、御無事で何よりであります。今アラシ殿が格納庫を解放しますので、占拠してください。こちらは人が足りないので増援をお願いします』


「わかった、月城伍長」


 そして後ろから声がかけられた。敵の軍服を着ていたが獅堂隊長と分かる。

 嬉しがってる暇はなく、あとからじっくり語り合おう。


「天羽准尉、悪いがこっちにも人を回してくれ。降伏した者が一杯で手が足りん」


『……監視は大変、副隊長よろしく』


「了解だ!」


 このの抜けたような声は八雲だ。みんな変わってないな。

 私は捕虜仲間に指示を出しながら思った。もしかして救出部隊は巴隊しかいないのか?

 あと一人いるとしても、たった五人で基地を攻め落としたことになる。


 信じられない戦果に私は驚くしかない。そして格納庫から歩いてくる少女がいた。


 まさか彼女が協力者? と疑いはするものの、優秀な隊長でも不可能な作戦なのだ。


 それと私の直感が告げてる……彼女は只者ではない。


 一体何者なのか? 本当に少女なのか? 


 知りたいことは山ほどあるが、まずは挨拶をすることにした。

お読みいただきありがとうございます。この作品がお気に召したら

ブックマークと★評価をよろしく、宜しくお願いします。

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