広い軍営農地
それでも俺は納得がいかず、静香達に聞いて見る。
「鐵乙女団もこの程度だとすると、食料生産率はどれくらいなんだ? どう考えても軍隊を養える量ではない。全然足りないぞ」
「すまないアラシ。上層部が全て管理してるから私達は知らないんだ。たぶん聞いたところで、教えてはもらえなかっただろう」
「隊ごとに配給されてただけだからなー、ここ最近は少なくなりやがった」
「……物資不足、生活品も足りない」
「となると、どこからか物資を運びこんでいた事になる。誰か何か知らないか?」
俺が聞くと椿が手を上げた。
「小官は食い物を探してるうちに、本部基地の禁止区画に入り込んでしまったことがあります。その時、上から大きな物が降りてくるのを見ました。たぶん宇宙船とかいう乗り物だと思います」
「おおっ! それはいい情報だぞ、椿」
「……軍規違反、でもえらい」
「月城は真面目だと思っていたが、中々やるじゃないか。はっはははは!」
お陰でこの世界の謎が少し解けた。ようやく核心に迫りつつある。
つまり誰かがココを管理してるということで、恐らく両軍に関わっている。
そもそも工場がないのに製品があるのは不思議で、他の惑星から持ってきてるのは確かなのだ。
食料と武器も一緒に運びこまれている。でなけりゃ、とっくに全員飢え死にだ。
ただ、「何のために?」という謎は残ったが、これ以上考えるのは止める。
……全ての答えは敵本部にあるはず。
「よし、気持ちを切り替えよう。まずは作戦を……」
「あっ⁈ 天音がいた! 良かった……」
「マジか⁈ ホントだ。あいつ生きてやがったか、なんて悪運の強い」
「……農作業してる、准尉の存在を確認」
「小官も嬉しいであります!」
双眼鏡で仲間を見つけたらしい。
静香は涙を流して喜んでいる。巴隊全員に助けられて生き延びたからな。
部下が生きていたので嬉しいのだろう……となると言ってくるな。
「アラシー! 頼みがあるー! なんでもするー!」
「分かった分かった、土下座を安売りするな。まったく俺以外の奴だったら、何をさせられるかわからんぞ、気をつけろ。部下を助けたいんだろ? 今考える」
「けっ! あいつなんかほっときゃいいのに」
「そうは言うが、紅美と天音は仲が良いだろ?」
「誰があんな奴と!」
「……喧嘩友達。提案、紅美を囮にして准尉を助けよう」
「他の捕虜も助けたいであります! アラシ殿。かつての小官と同じで、飢えてるのは一目瞭然。見てられないであります!」
やはり、一番偉いのは椿だろう。他人のことを思っている。
分捕ったので物資は十分、トラック四台分もあるからな。足りないのは兵力。
広い軍営農地は武器は少ない分、兵は百五十人もいて分散していた。
前のような追い出し作戦はできない。広すぎてデマが届かないのだ。
それに警戒もされてるようで、見張り台に見張りもいる。
捕虜の救出が最優先となれば、知恵を絞られねばならない。それと一般人と変わらない者達を殺したくはなかった。もう少し情報がいるな。
「一人で考える。みんなは休憩しててくれ」
「分かった、アラシ」
俺は女達から離れて超能力を使い、拠点を詳しく調べてみた。
これで施設の場所が大体分かった。
「うーむ、施設同士が離れ過ぎだ。制圧するには人手が足らん。となれば……」
なんとか作戦は決まり、俺はみんなの元に戻る。
「十分とは言えない作戦だが、これで行こうと思う」
俺は内部の地図を地面に描いて、作戦の説明を始めた。
詳細に描いたので弥生は怪しんでるようだが、何も言ってはこなかった。
あとは各自に役割をふる。
「それしかないだろうな。私は天音宛の手紙を書けばいいんだな? アラシ」
「ああ内容は…………と書いてくれ」
「今回も地味な役目だけどしゃーねーなー、大将は殺したくないんだろ?」
俺は肯く。散々言ってきたからな。
「ふふ……早く起きなくて済むぞ、獅堂隊長」
「うぐっ! 紙鉄砲は勘弁してくれ、心臓に悪い」
「頑張るであります!」
後は決めた作戦に沿って皆が動き出す。今は敵の主力がいないとはいえ、のんびりとはしてられない。
この後の予定がびっしり詰まっているのだ。
俺の都合でもあるが、主力が戻って来る前にケリをつけたかった。
ゴールまではあと少し……。
夕方になって捕虜達と農務兵の作業は終わった。見張りも撤収している。
見張り台にサーチライトがないから夜は無理だった。
炊煙の上がる陣地では夕食を作っている。ただ量は少なそうだ。
すでに俺は侵入しており物陰に潜んでいた。そしてターゲットである、天羽天音を見つけた。
顔は知らなかったが静香に特徴を聞き、椿が持っていた巴隊の写真を見て、特定することができた。
彼女が今回の作戦の肝になるだろう。コッソリと後をつけていく。
食事をとったあと、捕虜達は2階建てのプレハブ小屋へ戻っていった。
一応収容所らしいが、監視はおらず施錠もされてはいなかった。
たぶん逃げたところで体力不足で途中で倒れてしまうから、捕虜達は逃走する気もおきないのだろう。それだけココは広い。
それ以前に肉体労働で疲れ切って動けないな。
げっそりしてる天音が部屋に入ってから、俺はドアをノックして姿を消す。
接触はせずに様子を見る。いきなり会ったら怪しまれるだけだからな。
なのでドアの前に段ボール箱と静香の手紙を置いておく。
苛立った顔の天音がドアを開けると、
「こ、これは!」
大声を出して慌てて口を閉じ、周りを見回してから段ボール箱を部屋に入れた。
どうやら気づいてくれたらしい。これでどう動くかは彼女次第だ。
「さて、いつも通りにイタズラをするとするか」
もはや工作活動と言うのも、アホらしくなっていた。
俺は敵陣で明日の準備をする。
お読みいただきありがとうございます。この作品がお気に召したら
ブックマークと★評価よろしくお願いします




