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神力の少年兵  作者: 夢野楽人


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モノローグ 東雲志乃

紅蓮姫団側の視点です

 私の名前は東雲志乃しののめしの。紅蓮姫団の士官で階級は中尉。


 鐵乙女団との戦いで功があって昇進したばかり。ただ出世したところで嬉しくもない。

 苦し紛れの戦術が上手くいっただけの戦果に過ぎず、それで責任と仕事を増やされたら疲れるだけだ。

 今の軍には不満しかない。


「もっと補給を前線に回してください! このままだと兵が飢え死にします!」


「善処する、検討する、総司令部には伝える」


 上層部に掛け合ってもなしのつぶて、腹が立ってしょうがない。

 敵が逃げても追撃命令を出さず、いつも部隊を後退させるのは、おかしいとしか言いようがなかった。

 勝つ気がないのか?


 とはいえ命令に逆らうわけにもいかず、私は目の前の敵と戦うしかなかった。

 少し前には偽装作戦で敵を罠にはめて、大半を討ち取るか捕虜にしたが、一人だけ逃げた敵兵がいた。

 我が軍の支配地域に踏み込んできたのには驚いたが、一人では何もできずに捕まるだろうと私は思っていたが、捜索隊がやられて逃げ帰ってくる。


 一機の機甲羽衣が損傷しており、私が事情聴取をした。


「生身の敵兵を発見して追い詰めたのですが、いきなり狙撃を受けてしまいました」


「他にも敵がいたのか? 姿は見えたか?」


「いえ熱センサーに反応はなく、いくら見回しても望遠カメラで発見できませんでした。しかも発砲音が全く聞こえなかったのです。正確な射撃で膝関節が破壊され、私達は撤退するしかありませんでした」


「良い判断だ。恐らく罠か何かにやられたのだろう。ご苦労だった、今は休め」

「はっ! 失礼します」


 それから私は敵兵追討の任務を命じられる。ただ兵員要請が通らない。

 追討部隊はたったの12名だけで、なけなしの補給品しか司令部は寄越さなかったのだ。

  敵の数が不明なのに話にならない! これで十分な戦力だと思っているのか⁈


 どうやら上は敵を甘くみてるようだ。私は(あったま)にきた!


「ふざけんな!」


 キレた私は部隊を送り出してから、本部基地へ不服の申し立てに向かう。

 処罰されるのも覚悟の上だ。やってられるか!


 まさかその間に、事件が起きるとは思ってみなかった。移動中に無線が入る。


『駐屯地が奇襲を受けました!』


「……バカな……有り得ない」

 

 私は急いで拠点に戻るしかなかった。陸路しかないのがもどかしい。

 羽があったら飛んでいきたい。飛行機とかヘリコプターという乗り物が欲しい……無い物ねだりだが。


 慌てて帰ってきたものの、ほとんど被害はなく兵達が無事で安堵した。


 一体なにが起きたんだ? 私は兵士達から事情を聞くことにする。


「早朝、けたたましい音が鳴って、機甲羽衣が奪われたと大騒ぎになりました。混乱の中、奪われた機体を無力化したところ、誰も乗っておりませんでした。自動プログラムで動いていただけでした」


「……となると格納庫に潜入されて工作されたのか? 誰か気づいた者はいるか?」


「いえ、おりません。中尉も御存じの通り、見張りをやってる者はいないので」

「そうだったな……」


 私は誰も責められない。

 軍務規定はあっても食料不足のせいで、見張りをやる気もやる体力もなく、日が落ちたら眠るだけの日々。とにかく休まないと体が保たないのだ。

 マニュアルもいい加減だし、そもそも想定外のことなのだ。


 次に聞いたのは、捕虜の見張りをしていた兵士達。


「私達二人は小屋で見張りをしていました。駐屯地が騒しくて気になりましたが、勝手に持ち場を離れるわけにはいきません。そこにトラックが来て、運転手が捕虜を移送すると言ったので鍵を開けました。すると捕虜の一人が暴れて私は倒され、相方ともみ合いになりました……」


「それで」


「その時、運転手の助けが入り捕虜が気絶しました。見てはいませんが、たぶん殴ったのだと思います。そして私達は捕虜をトラックの荷台に放り込み、運転手は敬礼して去っていきました。後で聞いて見ると移送命令は出ておらず、敵にダマされた事を知りました。どうやら運転手に変装してたようです。私達は気づかず失態を犯しました」


「申し訳ございません」


 謝ってくる二人に私は言う。


「今回の件については、不在だった私にも責任がある。なので諸君らを厳罰に処すつもりはない。ただ無罪放免ともいかんから、反省文と報告書を提出するように。以上、解散!」


「はっ、ありがとうございます! 中尉」


 兵達が去り、私は椅子に寝そべって眉間を押さえる。

「これは非常事態だ! 敵の目的は捕虜の救出だった。問題なのは誰にも気づかれずに、陣地に侵入されたことだ。格納庫の施錠を破ったところを見ると特殊工兵か……」


 いや違う、と私の勘が告げている。


 軍服まで盗みだし虚言で陽動して、我が軍を混乱させたのだ。

 こんな鮮やかな手並みをする兵が、鐵乙女団にいるとは思えない。我が軍にも皆無。


 なにか得体の知れない恐ろしい影が見え隠れしている……。


 凶報は続くもので、今度は拠点のツヴァイが奪われてしまう。誰もが衝撃を受ける。


 だから兵を各地に分散させすぎなのだ! 全く意味がない!


 報告によれば、敵は我が軍の機甲羽衣を使っていたらしい。恐らく放置されていたものが奪われている。

 妙なのは死者が一人もでてないことだった。慌てて逃げる時に怪我をした者はいるが。

 兵達は何も出来ずに、駐屯地を追い出されただけだった。


「味方の救出だけが目的ではあるまい。一体なにが狙いなんだ⁈」


 最前線ならともかく、今までに内部の拠点に攻め込まれた事など一度もなかった。

 なので守備の不備はしかたない。それにしても半裸で敗走してきた味方も情けない。

 いや、敵が一枚上手なだけか。今度は格納庫に入れなかったそうだ。


 一体どうやったのだ?


 私は敵の正体、意図、手段が読めず不眠症になってしまう。

 何も分からなければ手の打ちようがないからだ。


 ……全てを知ったのは、かなり後のことである。



 今度ばかりは軍上層部も本気になったらしく、ツヴァイ奪還のための大部隊が編成されることになる。

 しかし各地からの集まりが悪い。補給が行き届いていないからだ。


 私は強引に指揮官に任命されてしまう。正直やりたくない。

 嫌な予感がして胸騒ぎが収まらなかったからだ。


 そこで不安要素を無線で本部に訴えたが、にべもなく却下された。


「……の恐れがあります。ここは動くべきではありません」


『余計なことは気にせず、貴官は任務を全うせよ。目の前の敵を殲滅せよ!』


「了解しました……」


 私は命令に従うしかなかった。上官に逆らえないのが体に染みついてる。

 幼少からの教育のせいだ。

 私の予感が外れることを祈りつつ、奪還部隊に号令をかける。


「目的はツヴァイの奪還、そして敵を見つけ出して駆逐する! 出発!」


「了解!」


 こうして私は不安な征旅に出た。

お読みいただきありがとうございます。この作品がお気に召したら

ブックマークと★評価よろしくお願いします。


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