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神力の少年兵  作者: 夢野楽人


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インチキ合気道

 地面に広げた防水シートの上に三人が座る。立って食うのは落ち着かないからな。

 俺は焼いた肉を皿にのせて運んでいった。良い匂いが食欲をそそる。

 弥生と紅美はお腹をグーグー鳴らし、涎も垂らしていたが直ぐには渡さない。


「は、早くよこせ! それを食わせろ!」


「ダメだ。まだ熱いから先に水を飲め、口の火傷をなめるな」


「もう少しだけ我慢しろ、軍曹」

「ぐぬぬぬぬ」


 紅美は静香から渡された茶碗で水を一気に飲み、弥生は淡々と飲んだ。

 タレや卵でもあれば浸けて冷ませるが、残念ながらない。

 少し経って渡すと二人は肉にかぶりつく。


「はぐっ! はぐっ! あぐっ!」


「モグモグモグモグモグモグモグモグモグモグ」


 大盛りにした皿が空になるのはあっと言う間、よほど空腹だったのだろう。

 捕まってる間、まともに食わせてはもらえなかったようだ。


「ほら追加だ紅美、弥生」


 静香が焼いて持ってきたので俺も食べる。他にはガラスープの素で、山草を入れたスープを作って飲ませた。

 たくさん食べまくり、ようやく落ち着く。まともな食事にありつけて満ち足りた表情をしていた。

 手持ちの食料は減ったが、また獲ればいい。


「あー食った、食った。久々に満腹だー!」

「……うん、おいしかった」


 二人は満足したようだった。そして紅美は聞いてくる。

 おあずけをくらったのが気に入らなかったようで、俺を見くびっていた。


「それで、このガキは誰なんだ? 静香」

「隊長と呼べ、紅美! あと礼が先だ!」


 紅美の態度が悪くて、弥生が大声を張りあげた。

 助けられ飯を食わせたので感謝してるのだろう。赤髪とは違い礼儀を弁えている。

 静香は叱りつけるように言った。


「構わん八雲曹長、こんなとこで階級は何の意味もない。ただ彼女に対しての無礼は許さない! 私の命の恩人で、お前達を助けたのもアラシだ!」


 いまだに静香は俺を女と思っているようだった。

 周りに女しかいないし、俺が子供だから見分けがつかないのだろう。今のとこは否定しないでおく。


 男と知られると何かマズいような気がした……。


「あはははは! おいおい冗談を言うなよ、静香。こんな子供に何ができる?」

「……見た目で、判断するな」

「そうだ、アラシが本気ならお前なんか……」


 仲間内の言い争いは俺が手を上げて止めた。口より先に手が出る脳筋は、力で分からせた方が早いからな。

 これは何度も経験してきたようだ。


「こういう輩に説明しても時間の無駄だ。紅美とか言ったな、少し遊んでやるからかかってこい!」


「良い度胸だ。泣いて吠え面かくなよ、ガキ!」


 少し煽っただけでこれか、やれやれ血が頭に上りやすいタイプのようだ。

 戦場では命とりになりかねない。これは体に教えてやらないとな。

 俺と紅美は立ち上がって場所を変える。間合いを取って向き合い、俺は手招きして挑発してやった。


「オラー! くらえー!」


 紅美は走って何も考えずに殴りかかってきた。

 ひねりもなく、ただ一直線に向かってくるだけ。思いきりだけは良い、愚かだが。

 これは軍隊格闘術を知らないな、生身の闘いもしたことはなくタダの喧嘩だ。


「ふん」

「ぐわっ!」

挿絵(By みてみん)


 次の瞬間、紅美が地面に転がっていた。

 目を丸くして何をされたか分からなかったようだが、それでも直ぐに立ち上がってきた。

 その根性だけは認めよう。


「てめえー!」

「それ」


 紅美が突っ込んでくる度に、俺は投げて地面に叩きつけるだけだった。

 下手に殴ったり蹴ったりするよりも、相手に痛手を与えられる。

 下がコンクリートなら死ぬ場合もある。草地で良かったな。


「凄い……」


 見ている静香達は驚いていた。見たこともない技だからな。


 ただ俺がやってるのは、超能力を使ったインチキ合気道。

 紅美の手や腕を掴んで投げてるだけだが、体格差があるので念力を使い、先にバランスを崩してやっていた。


 本来であれば相手の勢いを利用し、手や足を極めて円の動きをする必要がある。

 今の非力で小さな俺はやれない。


 紅美は投げ技に為す術もなく、受け身を取ってないからダメージは大きく、やがて息を切らして立ち上がれなくなった。

 ヘトヘトの状態で息も絶え絶えだ。よく粘ったほうだろう。


 俺は倒れた紅美を見下ろす。


「ぜー……ぜー……お前、一体……なにもの……」


「まずは負けを認めろ。顔は殴らないでおいてやる」


「いてえ――――!」


 デコピン一発、これで勘弁してやる。紅美の介抱?には弥生が向かった。


「……だから、言ったの」

「う……うるせ……」


 これで少しは大人しくなるだろう。ダメならまたシめるだけだ。

 俺は地図を確認し、もう少し移動するように静香に言った。

 念のために、敵がいる場所からは離れておきたかった。


「分かった。あと紅美が重ね重ねすまない、アラシ」


「そうだな、上官としては失格だ。下に立場をはっきり分からせないと、上を舐めるようになって言うことを聞かなくなる。戦場では部隊を危険にさらすことになる」


「ああ、アラシの言う通りだ。次に何かしたら私が対処する」


 生き残るには必要なことで、俺は厳しく静香に言う……上官じゃないんだがな。

 これは体に染みついてる記憶なのかもしれない。俺は根っからの兵士なのだ。


 トラックでの移動を再開し、夜になる頃に放棄された敵拠点へとやってきた。

 もちろん誰もいないので、ここをまず足掛かりにする。


 情報は忍び込んだ時に仕入れたので、他の駐屯地の場所と兵数は分かっている。

 ただ全体的にみると占領地が広いわりに、守る兵士の数が全然足りてなかった。


「これでよく戦争をやってられるな。兵力集中という言葉を知らんのか? それよりも、占領してる土地に価値がないじゃないか! 農業はしてないし資源も掘ってもいない。趣味でいくさしてんのか⁈」


 俺は憤る。

 どう考えても無意味な占領なので、不思議がるよりムカついてしまう。

 記憶では無駄なことばかりをやらされてたようだからな。

 イライラを解消するにも、もっと情報が必要だった。


「アラシ、今日も一緒に寝よう」


「ああ……」


 俺は荒ぶるが、静香と一緒にいると心が安らぐ。唯一の安息地だ。

 寝るときだけは安心して、嫌な記憶も思い出すことはない。


 静香に出会えてよかった………Zzzz

お読みいただきありがとうございます。この作品がお気に召したら

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