潜入
「神聴耳&神里眼」
俺が超能力で敵の駐屯地を探索してみると、
「なんだこりゃ? 人がほとんどいないじゃないか。全員女で兵士の数はたったの五十人、
民間人らしき者はいない。それと少し離れた小屋に二人……捕虜か」
しかも仮設プレハブとテントだらけで、一時的な野営地のようだった。
占領した場所を広げすぎて、守兵を分散させすぎなのかもしれない。
「それにしても、どういう戦略で動いてるんだ? 何もないとこに陣取っても物資が無駄になるだけ。敵の司令官の頭がおかしいのか?」
俺は更に調査をするのに、敵兵士の会話を聞いて見ることにした。
『飯もない、水もない、下着もない。どうしろっていうのよ!』
『鐵の奴らと戦う前に飢え死にするわ。上は何考えてんだー!』
『機甲羽衣もお飾りね。武器・燃料が少ないわ』
どうやら状況はかなり厳しくて、補給が滞ってるようだ。
遠く離れた前線ではよくあることで、自分達で食料を調達せねばならなかった。
だからこそサバイバル訓練は必要なのだ。
静香も物資がなくなった、と言ってたから両軍ともに不足してることになる。
「これは偶然なのか? ……いや何かあるな」
疑問が次々とわいてくる。やはり徹底的に調べんとな。
そして、捕虜らしき者の声が聞こえてきた。
『静香の奴、上手く逃げられたかな』
『……無理、だと思う。土地勘はないし、それより機甲羽衣のエナジーパックが保たない。途中で止まって動けなくなる』
『でもよ、アイツは運が良いから生きてるんじゃないのか? 弥生』
『それは同意。その前にちゃんと隊長と呼べ、紅美』
『いいじゃん誰も聞いてねえし、どうせ捕虜の身だ。それにしても腹が減ったなー、飯くらいまともに食わせろ! 毎日水ばっかりじゃねーか!』
捕虜の愚痴が聞こえてきた。どうやら静香の部下らしい。
あとで教えてやるのは良いとして、俺の作戦計画を修正することになるだろう。
しばらく敵の様子を見ようと思ったが止めた。
駐屯地の間取りは大体分かったし、今夜にでも忍び込む。
戻ってきた静香と夕飯を食った後、俺は言った。
「今夜、敵陣に侵入する。静香はここで待機だ」
「……そうか。アラシなら大丈夫だと思うが注意はしてくれ、あと必ず戻ってきてくれよ」
「ああ約束する」
静香はかなり不安そうな顔をしていた。一人になるから心細いのだろう。
気持ちは分かるが我慢してもらうしかない。
そして敵が寝静まったのを見計らい、俺は静香から離れていく。
「気をつけて……」
俺は後ろ向きのまま手を振り歩いていった。
少し進んでから超能力を使う。
「神影走」
体全体に力場を展開させ、目にも止まらぬ速さで俺は疾駆する。
オートバイより速いだろう。これはまずまずの力と言える。
あっと言う間に駐屯地に潜入して建物の影に隠れた。
というか照明灯が少ないので、まず見つかる心配はなく、それより何より見張りが居眠りしてるのはどうなんだ?
本気を出してる俺がバカみたいだ。
それでも油断はせずに指令所の裏手に回って、念力で窓の鍵を内から開けた。
そこから侵入して目的の資料室へとたどり着く。警報装置がないので、侵入に気づかれた様子はなかった。
真っ暗闇でも暗視ゴーグルを被ってるので問題はない。灯りは使えんからな。
「……あった」
散らかってる部屋の中から、まずは念願の地図を手に入れた。
地形と地理を知らずに行軍するのは命取り、行動予定も立てられないからな。
ただ物がなくなると気づかれるので一枚だけ盗って、他の情報は白紙に書き写すか、記憶することにした。
俺は書類を漁っていく……それにしても汚え場所だ。
整理整頓されてないから、盗まれたことに気づかないかもしれない。
情報を集めたところで、次の場所へと移動する。機甲羽衣の格納庫だ。
ここには見張りがおらず、また念力で鍵を開け侵入した。楽勝。
機甲羽衣が並べられてる中、その内の一機に近づきハッチを開けて、俺は小細工を始めた。別に爆弾をしかけたわけではない。
これは予定にはない行動だが、たぶん必要になってくるだろう。
「これでよし」
作業を終えて俺は格納庫から出ていった。
そしてもう一つだけ必要な物があるので、それを盗りに行く。
そこは物置小屋で鍵もかかっておらず、兵士の日常品がため込まれていたのだが、中は酷い有様だった。
「……ここもグチャグチャかよ。見てるとイラつくな、管理ぐらいしとけっつーの! 几帳面なアイツだったら……」
生真面目だった奴の顔が思い出せない。ああ、もどかしい。
物置の中はとっちらかっていて足の踏み場もなく、ここから探し物をするのは大変だったが、どうにか見つけることができた。
「これで良し……だがかなり臭うな、あとで何とかしよう」
これで一先ず目的を達成したので、俺は神影走で戻ることにした。
時間をかけなかったので敵に気づかれた様子はない。俺はヘマをしてないが、とにかく兵士が温すぎる、甘すぎる。
どこぞのお嬢様が戦争をやってるようだった。女だけというのも変だしな。
戻ってみると静香は起きて待っていてくれた。俺の顔を見ると笑顔になる。
かなり心配していたようだ。
「無事で良かったアラシ、怪我はないか?」
「ああ収穫はあった。明日の朝に話すから、今夜はもう寝よう」
「ええ」
こうして俺達は一緒に寝た。
明日には静香に話して、重い決断を迫ることになるだろう。
その選択によって俺も行く道を決めねばならない。面倒だがそれが人生である。
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