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神力の少年兵  作者: 夢野楽人


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プロローグ 前編

「今日はいい天気だな、死ぬには良い日だ」


 澄み渡る空に、白い雲がぽっかりと浮かんでいた。

 部屋の窓から外をながめ、俺はすがすがしい気分になる。

 最後に見る景色としては最高だろう。


 俺はさわやかな笑顔で振り向いたが、三人の部下は浮かない顔をしていた。

 美人姉妹が台無しである。


「なんだなんだ、ようやく帝国との停戦が決まったのにもっと喜べよ。これで平和になるんだぞ」


 副隊長で長姉のサラが、「ふざけないで」と言わんばかりに、俺に詰め寄ってくる。

 目からは涙を流している。


「そんなことを言ってる場合ですか、隊長! 私達を裏切った連合の艦隊が攻めて来るんですよ! 隊長だけでなく、この星の住民ごと消そうだなんて正気じゃない‼」


「はん、それだけ強い兄貴が邪魔なんだろうよ。帝国に売り渡すくらいなら、いっそ消して……」


「リジー! だまりなさい!」


 聞いてられなかったのだろう、サラが次女を怒鳴る。

 名前はブリジット、赤髪の長髪長身で男勝りの性格をしている。口は悪いが根はやさしい子だ。

 サラがいつも言動を注意してるがどこ吹く風だ。


 三女のルナは大人しいのでずっと黙ったまま。俺は言う。


「いやリジーの言う通りだ。所詮しょせん、独立連合共和国は寄せ集めの弱小国家群。政治家と将軍達は民主的に選ばれた無能ぞろい。利権だけは求めるが責任を取る奴なんていない。だから国民一丸となってる帝国に負けたのさ」


「それでもあんまりです! 隊長は数えきれない国と人を救ってきたというのに……私たちだって」


 サラのやりきれない思いが伝わってくる。

 十年前に偶然助けた三姉妹が、部下になるとは思ってもみなかった。それからずっと一緒に任務をこなしてきた。

 今となっては身寄りのない俺にとっての大事な家族で、何としてでも姉妹は守らねばならない。


 どんな巨大な敵だろうと倒す!


「今更どうしようもねえだろ? 殺しに来るなら戦うしかない。ただ住民達を巻き込むわけにはいかんから、俺が一人でケリをつけてくる」


「えっ⁈」


「本日をもって、神力傭兵団は解散する。みんなご苦労だった。心から感謝する。最後の頼みになるが、この星の住民を守ってやってくれ」


「嫌です! 私は最後まで隊長と一緒にいます!」


 泣きながらサラは抱きついてきた。やれやれ二十歳になっても甘えん坊の子供だな。


「おいおい、こんなオッサンなんか忘れて良い男を見つけろよ。だから連れてはいけない……」


「あっ…………」


 俺は頭をなでていた手を、そっと首に当てた。

 するとサラは意識を失ってしまい、俺は優しく抱きとめる。


 念力(サイコキネシス)を使って、頸動脈を圧迫して気絶させたのだ。


 やりたくはなかったが、サラは頑固で真面目なので説得しても無駄だったろう。俺に付いてきて死なせるわけにはいかない。

 俺は意識のないサラをブリジットに預ける。


「あたいだって、本当は我慢してるんだからねー!」


「お兄ちゃん…」


 二人とも涙をこぼしていた。どうしようもないのが分かっている。

 慕われて思ってくれるだけで俺は満足だ。もう未練はない。


「ごめんな」


 俺は二人に謝りながら部屋を出て、置いておいた戦闘服(コンバットスーツ)を身に着ける。

 ヘルメットを被りながら外へとでた。


「さて、征くとするか。神飛翔(デウス・ヴォラト)


 言うなり俺の体が急加速して上昇していく。

 大気圏を抜けるのはあっという間、そのまま星の海へと羽ばたく。

 いつも気合いを入れるのに言ってるだけで、魔法の呪文のように唱える必要はないが、格好つけでもあった。


 俺が使える超能力は主に念力だ。


 自分の身体を力場フォースに包み込んで動かしている。これで重力を無視できるのは脅威だろう。

 親の顔も知らぬ孤児みなしごだった俺は、この力を使って生きてきた。

 連合と帝国の戦争の最中、傭兵まがいのことをしてるうちに、いつの間にか軍に雇われるようになった。


 それも今日でお払い箱。帝国との停戦条件で、俺の身柄は引き渡されるはずだった。

 俺達の部隊が帝国に散々煮え湯を飲ませてきたから、公開処刑するつもりだったのだろう……見せしめだ。


「数え切れないほど敵を倒してきたからな、恨まれて当然。ここが年貢の納め時か……」


 帝国に投降する気でいたのだが、俺が洗脳されて敵に回るという噂が出回り、連合の上層部はそれを信じてしまう。


 そして、ビビった奴らが艦隊を差し向けてきたわけだ。停戦協定違反になろうが、我が身と家族が大事。他はどうでもいい。


 たとえ逃げてもどこまでも追ってくるだろう。逃げ込んだ惑星ごと消そうとするのは確実で、外道としか言い様がない。


 だったら迎え撃つだけだ! こうして姿をさらしてやれば、俺だけを相手にするだろう。

 もちろんタダでやられる気はなく、せいぜい悪あがきしてやる。なめんなよ!


 おっ、味……敵艦(・・)が見えた。冥土の土産に俺の恐ろしさを知るがいい。


 さあ、一丁やるとするか!

挿絵(By みてみん)

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