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32 千頭


 ――約束通りキアは本当にたった二日で聖獣千頭を受け入れる態勢を整える。今回はネネリーに乗って彼女だけがやって来た。


 大狼から飛び下りたキアはウズウズした様子でこの二日間のことを語り出す。エルフィリス国北方の地にて二頭の聖獣は大人気だったらしい。お行儀がよくて人なつっこく、農作業まで手伝ってくれるとあって民族の総会でもあっさり受け入れが決まったそうだ。


「一応、野良魔獣と戦って人との連携も確認してみたけど、問題ないどころかすごく頼りになったぞ。二頭共ウルゼノスだからな。戦士達もぜひ来てほしいとのことだ」


 一気に喋りきったキアは誇らしげに胸を張った。

 私はネネリーの毛を撫でながら、「頑張ってくれたみたいだね。ありがとう」とその労をねぎらう。


(きちんと役目を果たせてよかったわ。聖獣の代表として失敗できなかったから)


 あ、確かに聖獣軍団創設の第一歩だからここでつまずくのは非常にまずかった……。ネネリーとフォルスはその重要性を分かっていて行ってくれたのか。

 ……私は二頭に助けられたんだね。つくづく惜しい聖獣達を持っていかれたな。


「か、返さないぞ! ネネリーとフォルスはもう私の側近なんだ!」


 キアは守るようにネネリーの巨体に抱きついた。

 一方で、少し離れた場所から様子を窺っていたジェシカとメイリムが私の所へ。


(ルーシャ様には私達がいるじゃないか!)

(必ずルーシャ様を助けられる聖獣になりますから!)


 訴えながら二頭でぐいぐい体をすり寄せてくる。さらに、遠くから六頭の大狼が走ってくるのが見えた。


(((我々もきっとルーシャ様のお役に!)))


 わ、分かった! 私が悪かったから落ち着いて!

 聖獣達をなだめる私を横目に、キアは「そもそもだ」と言った。


「まだネネリー達にはこっちにいてもらわないと困る。本当に助けてほしいのはここからなんだからな。じゃあルーシャ、早速行こうか」

「行くってどこへ?」


 尋ねると彼女は、何を今更、といった不思議そうな顔を作る。


「魔獣が千頭いる所に決まってるだろ」


 今来たばかりなのにせっかちだな……。


 ゆっくり話をする暇もなく、私はキアと二人で魔獣千頭がいるであろう場所へ飛んでいくことになった。

 事前に彼女の方でターゲットとなる群れを見つけておいてくれたのでそこに向かうことに。エルフィリス国内を北東へと飛行した。


「ちょうどいい規模の群れがいたからうちの者達に追ってもらってる。放置すれば小さな村や町くらい飲みこんじゃう数だし、本当にちょうどよかったよ。お、あれが私のとこの戦士達だ」


 キアが指差した地上に目をやると、民族衣装を着た屈強そうな男女の一団が馬上から手を振っていた。彼らが指し示した方角へと針路を変える。

 うーん、今の追跡班の人達、全員が結構な実力者だった気がするね。たぶんそれぞれが一人で魔獣百頭くらいは倒せると思う。


「当然だろ。もし私達が到着する前に群れがどこかを襲うようなら、皆で殲滅してくれって言ってあったんだから」


 そうさらりとキアは言ったけど、私にはまだ気になることあった。

 先日の首脳会議で見た他の五勢力の同行者、つまり各勢力の一番の実力者はあの追跡班の面々と同程度の強さだった。


「……キアの民族勢力、もしや飛び抜けて強い?」

「いいとこに気付いたな、ルーシャ。うちの勢力にはちょっと使命があって、あれくらいのを五十人ほど育てて牙の団という精鋭部隊を作ってる」

「ダントツじゃない! 首座になるはずだよ! で、使命って?」

「えーと、まあ、エルフィリス全体を守るって感じだ。ダントツと言うなら、ルーシャ達が来るまでは私とオーゼスの二人だけがそんな感じで、あとは似たり寄ったりだったぞ」


 キアが一部ぼかしたのがまた気になったものの、これでこの世界の人間の戦闘力が大体把握できた。

 才能のある人が厳しい修練を積んで、魔獣数百頭に匹敵する強さを得るのだろう。きっとそれでも世間からは英雄と呼ばれるほどに違いない。

 そして、この理屈と国の人口からすればキアやオーゼスさんは数百万人に一人の逸材ということになる。転生者のキアはともかく、兄妹でなぜそれほどの戦闘力を保持しているのか尋ねてみた。


「なんか私の一族は代々、周辺民族の中で最強の戦士と婚姻するのが習わしらしい」


 と単純に本物の修羅の一族なだけだった。でも結婚相手の条件が戦闘力のみなら、まだテルミラお母さんにもチャンスはある。帰ったら教えてあげよう。


「しっかし、嫁ぎ先が修羅の一族しかないとはお母さんも相当だな……。いや、ファンが数人いるか」

「言っとくけど、私はテルミラが姉になるのは絶対嫌だからな。と、ターゲットの魔獣達がいたぞ」


 キアの言葉に目線を上げると、山の中腹辺りに魔獣達が集まっているのが確認できた。


 私達は魔力を抑えて上空から様子を窺う。

 群れは大小様々な種族が混在しているみたいだ。一際大きいのが熊や牛、馬の魔獣で、それより一回り小さいのが狼や兎、猪など。どうやらやっぱりある程度は通常の動物のサイズに準拠しているようだね。最小は鼠っぽい魔獣達かな。

 魔法を使えない魔獣の群れ内では、やはりその体の大きさがものを言うらしい。中央付近で大型の魔獣達が何やら幹部会議のような相談をしている。


 ……待って、あの会議を主導しているのは大型達じゃない。牛の背に乗っている一頭の、いや、一匹のリスだ。

 進化前のメイリムと同じくらいのサイズ(大型犬サイズ)なのに、群れを率いているとはすごいリスだな。にしてもあの子、リスにしてはちょっと頭部が大きいような……、それに背中には縞模様……、シマリスの魔獣か! よく見たら頬袋に何か入ってる! 可愛い!


 シマリスの魔獣は周囲の仲間達に言って聞かせるように魔力の思念波を広く放っていた。私も感度を上げてそれをキャッチする。


(くっくっく、これくらい集まればいいでしょう。さあ皆さん、山を下って人間共の集落を襲撃するのです! 誰一人逃すことなく皆殺しにしてください!)


 ……あんなに可愛いのにめちゃ邪悪だった。





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